ガチャと僕のプライベートプラネット

太陽くん

文字の大きさ
上 下
26 / 82

肉っぽい野菜

しおりを挟む
家具屋がかなり広いおかげで人数が増えたが窮屈だとは思わなかった。

家具屋に設置してある家具を移動させ、男女でスペースを分けた。カーテンや棚を動かして簡単にだが個室もできた。

プライベート空間が確保できたというのは非常にいい。のんびりと誰の目も気にせずゆっくりくつろげる。




しかし。ガチャから出た厄ネタ6人衆の中で飲食が必要そうなのはアナスタシアと少年A。

銭湯の自販機から強奪した食品ももうすぐ尽きそうだ。残っているのはログインボーナスでもらった缶詰とカワウソが持ってきた缶詰。バーテンダーがお持ち帰りのお土産をサービスしてくれてるおかげで食糧の節約ができているがここ数日で3人も飲食が必要な人員が増えた。


正直まずい。食糧問題が解決していないにも関わらず人ばかりが増える。




期待を込めて、ログインボーナスを確認する。

本日の無料コインは『C確定コイン』だった。

…いや、ええ?C確定コインって。もう少しマシなログインボーナスを寄越せよ。


ため息をつきながらガチャへ向かう。


そこで俺は衝撃的な光景を目にした。



首無しがオレンジジュースでガチャを中心に魔法陣を描いていた。
よく見るとガチャにも幾何学的な模様が描かれている。



お、おまえ!俺が風呂入っている間何してんだよ!



「このみかんジュースは質が良い。高純度の神秘が込められていますね。」


「何をしているんだ?こんなみかんジュースをこぼして。掃除はお前がしろよ。」


「後の話は後程。私がしているのは、なに、簡単なことです。少々ガチャに指向性を持たせているのですよ。」


「指向性だって?」


「はい、欲しいものが少々出やすくなる、そんなおまじないです。」



「おおおお、流石はSSRユニット!ただの怪しくてやばい奴だと思ってたぞ!使えるじゃないか!」



「…あなたは気づいていないのですね。自分の力に。」


首無しがヌッと俺によって来る、何だ今のぬるぬるした、無駄のない動きは。



「あなたには力がある。さあ、その力を意識して、具体的に、強く望むのです。ガチャを回すのです。」



力だって?俺に?
よくわからんが首無しの言うとおりにする。俺が欲しいのは食糧、一人分じゃない、ここにいるみんなが腹いっぱい食べても余るような、そんな量の食べ物。

欲しい、お腹がすいた。もっと食べたい、食べさせてやりたい。

力?わからない。でも、俺に力があるってんなら、さっさと働け!




ガタンッ



 
C『瀬戸内の塩5キロ』


どさっと落ちてきたのは瀬戸内海の塩と書かれた透明な袋だった。中には白い粉が詰まっている。


「…おい。」


「…プラスに考えましょう。人間が生きるのに塩は必要不可欠です。さあ、もう一回。」



今度は無料ガチャ、頼む、出てくれ。




ガタンッ




R『民間用宇宙船搭載野菜工場』


衝撃と共に、一枚の扉が壁に現れる。機械でできた扉だ。


野菜工場!



「ふふふ、望んだものがでましたね。」



俺はボタンを押して中に入る。中は通路になっていて、機械でできた通路だった。さらに俺は何枚も扉をくぐり、奥に到達する。


そこには、縦長のプランターに敷き詰められた、黒い土。天井から降り注ぐ明るい光。冷房の効いた白い部屋や通路とは違う、暖かい空気。


野菜工場といっていたが、あるのは畑だった。

しかし、その畑には何もない。いや、正確には芽は出ている。それだけ。


どうすることもできない。この空間は宇宙船にある野菜工場らしい。この技術を駆使すれば野菜の早期収穫も可能かもしれない。だが、俺は今食べたかったのだ。みんなで、新人歓迎会でも開こうと思ってたのだ。

どうすることも、俺はいつもそうだ。中途半端な運、肝心な時に発揮しない運、どうでもいい時に限って運が良くなる。









あっ、植物成長剤!
そうだよ、確かちょっと前に植物成長剤がガチャから出てきたはずだ!

俺は工場から出て、ガラクタの山から成長剤を探しあてる。

緑色の液体の詰まった注射器。これをもって工場に戻ろうとすると機械馬が警告してくる、この栄養剤は非常に強力です、使うなら一滴だけにしてください。


一滴だけ。そんなに強力なのか?

注射器から液体を土に垂らす。一滴だけを出すように、慎重に



ポタンッ

土と液体が触れた瞬間。



土が心臓の鼓動のように揺れた。



うあああああああ、何だこれ!




土が脈打ち、急速に成長したのはどう見ても植物ではなく、動物の肉だった。

なんともおぞましい、肉が地面から生えるという光景が工場の中に広がっていた。


やっべぇ、成長剤使うべきじゃなかったかな。

とりあえず鑑定だ、頼む、食べられるものであってくれ。


鑑定!



ベーコンキャベツ

●とある食品会社が開発したベーコンのようなキャベツ。キャベツの葉の代わりにベーコンのような葉を伸ばす。
見た目もベーコン、触感もベーコン、味もベーコン。しかしDNAはキャベツであることを示している。食用。

ええ、これがキャベツ?確かにキャベツのように丸いけど、ええ?


俺はベーコンキャベツの葉を一枚ちぎる。
触れた手が油で濡れ、肉の感触が伝わってくる。

食べてみる。噛むと油が口の中にあふれ、がっつりとした噛み応えを感じる。
夢中になって食べた。ひたすら食べた。久しぶりにこんな肉を食べた。体に不足していた栄養を求め無言で食べる。




…今日はみんなでベーコン又はキャベツパーティを開催した。今更だが、歓迎会だ。

ホムンクルスは生まれてはじめてお腹いっぱい食べ、剣闘士は森で狩りをしながら暮らしていたことを思い出しながら食べた。

アナスタシアとカワウソは丁寧に、少年Aは高校生らしく無我夢中で食べていた。
バーテンダーが家具と肉の対価として、一日限定だが卵料理を提供してくれた。
ベーコンエッグは旨かった。

驚いたことにバルムンクと軍人幽霊、首無しにカメラ人間も食べたのだ。お前たち、飯食えたのか。


皆で食糧のことを気にせず腹いっぱい食べた。


本当に美味く、楽しかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤い流星 ―――ガチャを回したら最強の服が出た。でも永久にコスプレ生活って、地獄か!!

ほむらさん
ファンタジー
ヘルメット、マスク、そして赤い軍服。 幸か不幸か、偶然この服を手に入れたことにより、波乱な人生が幕を開けた。 これは、異世界で赤い流星の衣装を一生涯着続けることになった男の物語。 ※服は話の流れで比較的序盤に手に入れますが、しばらくは作業着生活です。 ※主人公は凄腕付与魔法使いです。 ※多種多様なヒロインが数多く登場します。 ※戦って内政してガチャしてラッキースケベしてと、バラエティー豊かな作品です。 ☆祝・100万文字達成!皆様に心よりの感謝を! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。  

処理中です...