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それぞれの想い。
ポチ助。
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光の化身イトラがヤウの手により消え去る少し前。
「黒衣の駄犬ポチ」と「泣き顔のストレ」の別働隊は、たった二人でダットを追い詰めていた。
「つ……強い」
ナナ達と別れ、もう一箇所の「土の化身ダッド」と接敵してから、ストレは何度も同じ言葉をつぶやいていた。
こちらに出現したダッドのサイズは、ナナ達が戦ったものよりだいぶ小さいサイズだとはいえ、攻撃の苛烈さも、先の見えぬ体力(体積)も驚異なことは変わらない。
元・王室近衛兵とはいえ、少し「風の力」が使えるただの人間。
世界の始まりの神様とか、四大陸を司る化身とか、ストレにとっては余りにも大きな話だった。
だが、共に戦う彼は少し違うようだ。
「わん!」
目の前で黒い剣を振り回し、ほとんど一人で「土の化身」と渡り合う「元・黒衣の男」「現・タチの犬」を見て、ストレはもう一度同じ言葉をつぶやいた。
「ポチ助、強すぎないか!?」
かつて敵側だったときより、強さが増している気がする。
鳴き声しか発さない異様さが、妙な迫力を付け加えているせいかもしれない。
主人に習ったかのような、ポチの攻め攻めな襲撃により、ダッドの体積は少し大きな建物サイズまで減っていた。
A:タチ[神殺し]・私[神]・ズーミ[水の化身]・ナビ[風の化身]・ユニ[意地でもBに行かなかった]
B:ストレ[泣き虫一般人]・ポチ[心が折れたタチの犬]
はじめはこの戦力分けに抗議し、道中も不安を拭えなかったストレだが、ポチの戦闘力の高さに安堵のため息を一つ吐く。
(それに、向こうは「光の化身」も現れるのだろうからな――ご無事でしょうかチビ様)
なんとなくナナ達がいる方角の空を見上げたストレの目に、赤く燃える炎が見えた。
太陽ではない、はるかに小さいが、凶悪にメラメラと燃える塊がひとつ宙に浮いている。
「雑魚どもが調子こいてんなぁ!」
人型の炎が、上から偉そうに言葉を吐き捨てた。
イトラの側についた「火の化身アチャ」だ。
「ポチ助!!!」
ストレの叫び声でポチも火の化身の存在に気付き、ダットを削り取る作業をやめる。
「情けねぇーなダッド!たかだが人間二匹に負けてんじゃねーぞ」
ポチの攻撃は止まったのに、動かないままのダッドに優しい励ましの声をかけるアチャ。
ゆっくりとダッドの方へと進みゆく彼から、ストレとポチは距離を取る。
ボン!
アチャがダットの横に降り立った時、爆発音が一つ。
「な……なぜ?」
ダッドの体を吹き飛ばしたアチャの行動が、ストレには理解できずにいた。
「ダセェーからだよ。こっからは俺様が遊んでやる。――そっちの男は少しデキるみたいだしな」
アチャが、嫌らしく口元を歪め手招きをした。
かかってこい、と。
「わん!!」
ダットとの戦いで高ぶり続けていたポチは、アチャの安い挑発に乗り、剣を構えて突っかかる。
「まてポチ助!!」
突然変わった戦況に、頭を冷やせと言葉を続けようとしたストレだが、ポチが彼女の言葉を聞くわけがなかった。
なぜなら、ストレはポチの主人ではないのだから……。
「黒衣の駄犬ポチ」と「泣き顔のストレ」の別働隊は、たった二人でダットを追い詰めていた。
「つ……強い」
ナナ達と別れ、もう一箇所の「土の化身ダッド」と接敵してから、ストレは何度も同じ言葉をつぶやいていた。
こちらに出現したダッドのサイズは、ナナ達が戦ったものよりだいぶ小さいサイズだとはいえ、攻撃の苛烈さも、先の見えぬ体力(体積)も驚異なことは変わらない。
元・王室近衛兵とはいえ、少し「風の力」が使えるただの人間。
世界の始まりの神様とか、四大陸を司る化身とか、ストレにとっては余りにも大きな話だった。
だが、共に戦う彼は少し違うようだ。
「わん!」
目の前で黒い剣を振り回し、ほとんど一人で「土の化身」と渡り合う「元・黒衣の男」「現・タチの犬」を見て、ストレはもう一度同じ言葉をつぶやいた。
「ポチ助、強すぎないか!?」
かつて敵側だったときより、強さが増している気がする。
鳴き声しか発さない異様さが、妙な迫力を付け加えているせいかもしれない。
主人に習ったかのような、ポチの攻め攻めな襲撃により、ダッドの体積は少し大きな建物サイズまで減っていた。
A:タチ[神殺し]・私[神]・ズーミ[水の化身]・ナビ[風の化身]・ユニ[意地でもBに行かなかった]
B:ストレ[泣き虫一般人]・ポチ[心が折れたタチの犬]
はじめはこの戦力分けに抗議し、道中も不安を拭えなかったストレだが、ポチの戦闘力の高さに安堵のため息を一つ吐く。
(それに、向こうは「光の化身」も現れるのだろうからな――ご無事でしょうかチビ様)
なんとなくナナ達がいる方角の空を見上げたストレの目に、赤く燃える炎が見えた。
太陽ではない、はるかに小さいが、凶悪にメラメラと燃える塊がひとつ宙に浮いている。
「雑魚どもが調子こいてんなぁ!」
人型の炎が、上から偉そうに言葉を吐き捨てた。
イトラの側についた「火の化身アチャ」だ。
「ポチ助!!!」
ストレの叫び声でポチも火の化身の存在に気付き、ダットを削り取る作業をやめる。
「情けねぇーなダッド!たかだが人間二匹に負けてんじゃねーぞ」
ポチの攻撃は止まったのに、動かないままのダッドに優しい励ましの声をかけるアチャ。
ゆっくりとダッドの方へと進みゆく彼から、ストレとポチは距離を取る。
ボン!
アチャがダットの横に降り立った時、爆発音が一つ。
「な……なぜ?」
ダッドの体を吹き飛ばしたアチャの行動が、ストレには理解できずにいた。
「ダセェーからだよ。こっからは俺様が遊んでやる。――そっちの男は少しデキるみたいだしな」
アチャが、嫌らしく口元を歪め手招きをした。
かかってこい、と。
「わん!!」
ダットとの戦いで高ぶり続けていたポチは、アチャの安い挑発に乗り、剣を構えて突っかかる。
「まてポチ助!!」
突然変わった戦況に、頭を冷やせと言葉を続けようとしたストレだが、ポチが彼女の言葉を聞くわけがなかった。
なぜなら、ストレはポチの主人ではないのだから……。
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