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それぞれの想い。
雲の上。
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私は空を飛んでいる――文字通り。
ナビが用意してくれた移動手段、それは「雲」
彼女が空に手を伸ばし。雲をつまんで千切ると、はい。出来上がり。
なんと便利で素敵な乗り物だろう。
私、タチ、ズーミちゃん、ユニちゃん、ナビの五人で高い高い空の旅。
「ポチ君達……大丈夫かな?」
二か所同時襲撃されたのだから、しかたがないとはいえ、合流してさっそくの別行動。
雲の下に小さく見える地上をみていると、馬で駆ける二人を想像して、少し寂しく感じてしまう。
「心配するなポチは強い。ダッド程度なら一人でどうにでもできる。おまけもつけたしな」
「確かに、戦闘力が高いのは知ってるんだけどさ……」
言い切るタチに、口ごもる私。
少しだけ知った「彼の過去」を考えると、心配にもなるでしょうよ。
主に精神面で。
「何をそんなに不安がる?」
「だって、完全に犬になってたし……」
彼にとってはそれが救いだったのだろうけど……私合流してから「わん」って鳴き声しか聞いてないんだよ?
しかも付添人が、泣き顔全一のストレちゃんだ。不安にもなる。
「そんなに心配してもしかたないじゃろう。どうにかできるもんでもないしの」
五人乗りでも十分余白のある雲の上、ユニちゃんを抱えたズーミちゃんが私の隣に座る。
私より遥かにしっかり者の水の化身。私の親友で私のママ(仮)。
ふわふわの雲の上、輝く太陽が彼女の透き通る体を、美しく煌めかせた。
「そうだよね――まずは自分たちの心配をしないと」
「そういうことじゃ。わらわは軽くひと眠りする。水分をとっとかんといかんからの」
確かに。眺めはいいけど風当たりが強いし、乾燥してる。
太陽との距離だって近いしね。なにせ、雲の上だから。
「ズーミこちらへどうぞ」
「ありがたいですじゃ。ナビ様」
雲の主。風の化身ナビが、乗っている雲を少しつまみ、風よけ用の小さな仕切りを作ってくれた。
なるほど、そんな簡単便利に加工までできるのか。使い勝手のよさそうな能力だ。
「ユニをまかせるぞ?お主らでちゃんと相手せいよ」
私がタチと合流してから、ずっとユニちゃんの世話(静止)役をしてくれている青い親友。
ユニちゃんの怒りの矛先が向かう当の本人、タチはと言うと、無自覚に煽るか、挑発してしまう性分なので相手をさせると場が荒れるだけ。
なので「処女狂い」と「変態」はできるだけ、距離を置かせたい所――混ぜるな危険だ。
結局、暴れ、噛みつき、歯ぎしりするユニちゃんを、一番上手に窘めてくれていたのが、ズーミちゃんだった。
「うん。いっつもありがとうね」
もちろん私も当事者の1人。私がタチと仲良くしているだけでも、ユニちゃんは気に食わない。
そもそもタチと合流することが目的で、ここまで来た私としては、どうしてもタチの側にいてしまう。
その間いつもズーミちゃんが、ユニちゃんを構ってくれていた。
とっても感謝している。
怒り狂うちびっ子の事だけではない、ここまでくる道中も、いち早く味方してくれたことも、私に源の力を貸してくれてることも……。
これほどお世話になっている友は、他にいない。
「いちゃつくのも良いが、ほどほどにの」
「うん……!」
「雲の上で愛し合う機会などそうないからな」
自らの後頭部を撫で、照れる私と。胸を張るタチ。
雲に乗って数分たたずで、すでにタチに押し倒されてる――二度ほど。
理由はタチが今言った通り。私も一応口では抵抗したのだ……。
最初だけ。
「そのせつは、大変ご迷惑を……」
「お主が元気になったのは良いことじゃが……ちっとはわきまえんとな?」
目線を反らして、言いにくそうに忠告してくれるズーミちゃん。
申し訳なさで、ぺこぺこ頭を下げるしかない私。
ナビが、いつの間にか仕切りで隠してくれたとはいえ、見境も節操もなく……
わかっているのだけれど、タチに迫られると断れない。
ずっと――できればずっと一緒にいたいのだ。何年といわず、何億年でも。
スブッ!!
大きな音に振り向くと、ユニちゃんがタチのわき腹に頭突きをかましていた。
「いいぞユニ!何度だってこい!ナナといる私は無敵だからな!!」
「!!!!!」(ユニちゃん怒りに震える)
ほら、また無自覚に煽るような事を……。
刺さった角で、ぐりぐり抉ってくるユニちゃんの頭をグリグリ撫でるタチ。
ユニちゃんはタチに触られるのが死ぬほどいやそうだけど、それでも攻撃せずにはいられないようだ。
次に地上に降りる時は、ダッドとの――そして光の化身イトラとの対決がまっているというのに、仲間内で小競り合いを繰り返してる。
統率性も、緊張感も欠片もない。
どうしようもないただの内輪もめ。
「ナナ!もう一度確かめ合おう!!高ぶりが収まらん!ナビ!お前もまざれ!」
「いや…さすがにもう――」
「いいのですか?私も神に手をだして?」
今しがた忠告をうけたばかりだし、ユニちゃんにもうしわけないし……。
意外に乗り気なナビの存在もきになるが。
さすがにちょっとね?
神として――とじゃなくて人として?わきまえた行動をしないと。
そう口にしたらタチに笑われそうだから言わないけど。
ブス!!!
私が苦笑いしながら、迫るタチを押し返していると、再び音がする。
ユニちゃんが溢れる殺意でもって、助走をつけてタチに「刺さり直した音」だ。
「はっはっは!!ユニ!お前も混ざれ!!!全部!全部可愛がってやる!ナナの可愛い顔をお前にも見せびらかしてやろう!」
「!!!!!!!」(怒りで体を回転させるユニちゃん。)
飛び散る血飛沫、響く大笑い。微笑む風の化身。迫られるのが嫌じゃない元神。
いったいこれはなんなのだろう?
「おぬしらうるさいわ!!!!!寝れんじゃろう!!!」
仕切りの向こうから叫ばれる親友の怒号。
いや、あれは育児に疲れた母親の声かも?
本当にどうしようもない、集まりである。きっと馬で地をかける二人もしょうもない事になっているのだろう。
でも、もしかしたら、これこそが、仲間なのかもしれない。
たぶん。
正直違う気もするけど。
ナビが用意してくれた移動手段、それは「雲」
彼女が空に手を伸ばし。雲をつまんで千切ると、はい。出来上がり。
なんと便利で素敵な乗り物だろう。
私、タチ、ズーミちゃん、ユニちゃん、ナビの五人で高い高い空の旅。
「ポチ君達……大丈夫かな?」
二か所同時襲撃されたのだから、しかたがないとはいえ、合流してさっそくの別行動。
雲の下に小さく見える地上をみていると、馬で駆ける二人を想像して、少し寂しく感じてしまう。
「心配するなポチは強い。ダッド程度なら一人でどうにでもできる。おまけもつけたしな」
「確かに、戦闘力が高いのは知ってるんだけどさ……」
言い切るタチに、口ごもる私。
少しだけ知った「彼の過去」を考えると、心配にもなるでしょうよ。
主に精神面で。
「何をそんなに不安がる?」
「だって、完全に犬になってたし……」
彼にとってはそれが救いだったのだろうけど……私合流してから「わん」って鳴き声しか聞いてないんだよ?
しかも付添人が、泣き顔全一のストレちゃんだ。不安にもなる。
「そんなに心配してもしかたないじゃろう。どうにかできるもんでもないしの」
五人乗りでも十分余白のある雲の上、ユニちゃんを抱えたズーミちゃんが私の隣に座る。
私より遥かにしっかり者の水の化身。私の親友で私のママ(仮)。
ふわふわの雲の上、輝く太陽が彼女の透き通る体を、美しく煌めかせた。
「そうだよね――まずは自分たちの心配をしないと」
「そういうことじゃ。わらわは軽くひと眠りする。水分をとっとかんといかんからの」
確かに。眺めはいいけど風当たりが強いし、乾燥してる。
太陽との距離だって近いしね。なにせ、雲の上だから。
「ズーミこちらへどうぞ」
「ありがたいですじゃ。ナビ様」
雲の主。風の化身ナビが、乗っている雲を少しつまみ、風よけ用の小さな仕切りを作ってくれた。
なるほど、そんな簡単便利に加工までできるのか。使い勝手のよさそうな能力だ。
「ユニをまかせるぞ?お主らでちゃんと相手せいよ」
私がタチと合流してから、ずっとユニちゃんの世話(静止)役をしてくれている青い親友。
ユニちゃんの怒りの矛先が向かう当の本人、タチはと言うと、無自覚に煽るか、挑発してしまう性分なので相手をさせると場が荒れるだけ。
なので「処女狂い」と「変態」はできるだけ、距離を置かせたい所――混ぜるな危険だ。
結局、暴れ、噛みつき、歯ぎしりするユニちゃんを、一番上手に窘めてくれていたのが、ズーミちゃんだった。
「うん。いっつもありがとうね」
もちろん私も当事者の1人。私がタチと仲良くしているだけでも、ユニちゃんは気に食わない。
そもそもタチと合流することが目的で、ここまで来た私としては、どうしてもタチの側にいてしまう。
その間いつもズーミちゃんが、ユニちゃんを構ってくれていた。
とっても感謝している。
怒り狂うちびっ子の事だけではない、ここまでくる道中も、いち早く味方してくれたことも、私に源の力を貸してくれてることも……。
これほどお世話になっている友は、他にいない。
「いちゃつくのも良いが、ほどほどにの」
「うん……!」
「雲の上で愛し合う機会などそうないからな」
自らの後頭部を撫で、照れる私と。胸を張るタチ。
雲に乗って数分たたずで、すでにタチに押し倒されてる――二度ほど。
理由はタチが今言った通り。私も一応口では抵抗したのだ……。
最初だけ。
「そのせつは、大変ご迷惑を……」
「お主が元気になったのは良いことじゃが……ちっとはわきまえんとな?」
目線を反らして、言いにくそうに忠告してくれるズーミちゃん。
申し訳なさで、ぺこぺこ頭を下げるしかない私。
ナビが、いつの間にか仕切りで隠してくれたとはいえ、見境も節操もなく……
わかっているのだけれど、タチに迫られると断れない。
ずっと――できればずっと一緒にいたいのだ。何年といわず、何億年でも。
スブッ!!
大きな音に振り向くと、ユニちゃんがタチのわき腹に頭突きをかましていた。
「いいぞユニ!何度だってこい!ナナといる私は無敵だからな!!」
「!!!!!」(ユニちゃん怒りに震える)
ほら、また無自覚に煽るような事を……。
刺さった角で、ぐりぐり抉ってくるユニちゃんの頭をグリグリ撫でるタチ。
ユニちゃんはタチに触られるのが死ぬほどいやそうだけど、それでも攻撃せずにはいられないようだ。
次に地上に降りる時は、ダッドとの――そして光の化身イトラとの対決がまっているというのに、仲間内で小競り合いを繰り返してる。
統率性も、緊張感も欠片もない。
どうしようもないただの内輪もめ。
「ナナ!もう一度確かめ合おう!!高ぶりが収まらん!ナビ!お前もまざれ!」
「いや…さすがにもう――」
「いいのですか?私も神に手をだして?」
今しがた忠告をうけたばかりだし、ユニちゃんにもうしわけないし……。
意外に乗り気なナビの存在もきになるが。
さすがにちょっとね?
神として――とじゃなくて人として?わきまえた行動をしないと。
そう口にしたらタチに笑われそうだから言わないけど。
ブス!!!
私が苦笑いしながら、迫るタチを押し返していると、再び音がする。
ユニちゃんが溢れる殺意でもって、助走をつけてタチに「刺さり直した音」だ。
「はっはっは!!ユニ!お前も混ざれ!!!全部!全部可愛がってやる!ナナの可愛い顔をお前にも見せびらかしてやろう!」
「!!!!!!!」(怒りで体を回転させるユニちゃん。)
飛び散る血飛沫、響く大笑い。微笑む風の化身。迫られるのが嫌じゃない元神。
いったいこれはなんなのだろう?
「おぬしらうるさいわ!!!!!寝れんじゃろう!!!」
仕切りの向こうから叫ばれる親友の怒号。
いや、あれは育児に疲れた母親の声かも?
本当にどうしようもない、集まりである。きっと馬で地をかける二人もしょうもない事になっているのだろう。
でも、もしかしたら、これこそが、仲間なのかもしれない。
たぶん。
正直違う気もするけど。
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