かみてんせい

あゆみのり

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わっちゃわちゃ!

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 昨夜と同じ階段そばのテーブルは、二つ分が横合わせになり賑わいが増している。

 ブス!ブス!と頭突きをかまし、憎き女に角を刺すユニちゃんと。
 意にも介さず私にお触りする笑顔のタチ――この二名が主な原因で。

「なんだ?お前も私に撫でまわされたいのか?」
 タチは、まるで可愛い子犬とじゃれ合うように振舞うが、対するユニちゃんの怒りは本物。
 結構なバトルでぶつかり合っているが、ユニちゃんの見た目の愛らしさが、どうしても殺伐さを打ち消してしまう。
 
「うぅ~……!わん!」
 向かいの席では、本当に犬の様に鳴く、どうみても成人男性のポチ君が酒を浴びるように飲んでいる。

 ――非常に触れづらい。

 タチから事情を聴かされた私の素直な気持ちだ。
 
「しかし、なぜ私の居ない時にデカい版などに変身するんだ?ずるいぞ!」
 タチは私の腰を撫でながら、もう一方の手でユニちゃんを犬撫でしようとするも躱されてしまい悔しそう。

「月に一度変わるらしいから、一緒にいれば見れると思うよ?それまでに関係が少しは良くなってくれると嬉しいけど」
 じゃないと、子犬のじゃれ合いじゃすまないケンカが始まる。
 大人ユニちゃんは、今よりだいぶ力があった。

「おぉ!やはりナナと居ると楽しみが増えるな!良くやったぞ!」
 誰に対する褒め言葉なのか不明だけど、終始ご機嫌のタチ。

 この席についてから、私はずっと体を撫でまわされてるが、気にすることなく食事を進める。
 なんならちょっと安心してる。
 タチが私を確かめると、私もタチが確かめられるから。

「なぁ……ナナ。こんなのんびりしとっていいのじゃろうか?ダットが暴れておるんじゃろう?」
 私の横。タチじゃない方に座っていたズーミちゃんが、口元を隠しヒソヒソと私に問いかけた。




「なんで私に聞くの?――しかもこっそり」
「ナビ様の地の出来事じゃから、ナビ様に尋ねるべきとわかっておるのじゃが……この中で一番わらわの突っ込みにくいお相手じゃし……」
「昨日情報共有で、お話したんでしょ?普通に聞いてみればいいじゃない」
 化身の先輩にかしこまって、神様に耳打ちするのも変な話だが、今となってはそれが当然。
 なぜなら私達は友達だから。

「普通にじゃとっ!……見てみろ!三番テーブルにメグ肉の包み焼きを運んでおるんだぞ!突っ込んでしまうじゃろうが!」 
「あれ?事情聞いてないの?」
「聞くわけにいかんじゃろう!必要な当たり障りのない、互いの現状確認程度じゃ!度々ベッドメイクに行かれとったし……!」
 昨夜私がタチとイチャついてる間、てっきりみんなで話し合いを進めているとばかり思っていたけど……。
 人間関係、力関係っていうのは複雑だね。


「でっかくなったら抱いてやるからな?そう怒るな」
バキバキバキ!!!(激しい歯ぎしりの音)
「うぅ――わん!わん!」
「新しいお酒、ご用意いたしますね。」

 うん。まぁ。

「なんだポチも混ざりたいのか?ナナに聞いてみないとな……」
バキャバキャバキャ!!!!!
「くぅ~ん…くぅ~ん……」

 …うん。

「ズーミちゃん一人にしちゃってごめんね」
「じゃろう!!」
 私が浸っていた一夜に、彼女がどれだけの気苦労を味わったか思い知り反省する。
 ごめん。こんな変なのしか居ない場所に置いて行って。

「ダッドは人里離れた所に現れたようなので、急を要さないのでしょう――しかし今回は二か所同時、ならば二手に分かれるのでしょうが……戦力わけはどうするのだろうか?」
 もう一人の常識人。隅っこで小さくなって食事をたしなんでいた人が私達の会話に混ざる。

「……ストレ!」
「今気付かれましたね!チビ様!!」
 ごめんなさい。だって体を撫でまわされつつ、隣で喧嘩をされながら、美味しいご飯を食べてもので……。
 あと、友人からのお悩み相談もあったし。

「こやつも、今一わからんのじゃ。昨日もずっと会話に参加せず隅で一人ミルクを――」
「わーわー!やめてくれ!チビ様の前で情けない姿の話は!もう主を失えないのだ!」
 涙目でズーミちゃんの口を両手で抑えるストレ。
 この二人は仲良くなれると思うんだよね。この集いで唯一常識があるし。
 
 ナビは……どうだろう?
 大人な顔して一線をブチに来そうな凄みがある。

「今更気にしないでいいのに。私の中で泣き顔の一番似合う人として刻んであるけど、割と頼りになるのも知ってるし」
「嫌です!嫌です!そんな騎士として名誉の無い印象も!そんなこと言って忘れられがちな今の立場も!」
 あっちでわちゃわちゃ、こっちもわちゃわちゃ。
 
 一仕事終えたナビがテーブルに戻ってくるまで、私達はみんなで仲良く混沌茶飯事を楽しんでいた。
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