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心
質感。
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目を開くと――遠い青空と、白い雲。
全身を覆う浮遊感は、水の上に浮かんでいるせいだ。
チャプン。
体を起こして辺りを見渡す。
水の高さは腰下ぐらい。
そのわりに、周りの景色が高く感じる。
自分の手を見る。
とても小さい。今まで経験したことない小ささだ。
(生まれ――変わってる…!!)
意識に焼き付くのは、目を見開いたタチの顔――それと血飛沫……。
体から力が抜け、膝が崩れる。
(タチ…!――タチ!!)
思考は回らず、気力も沸かない……。
四つん這いになった私の目には、水面が鏡となり、幼く小さな顔を映し出す。
見慣れない少女……左右で違う色の瞳に、金色の髪。
(地上で体を作る力が、衰えてる……?)
神から人に受肉する際、人の信仰の力を使って形作った。
人が私を引き寄せたのだ。
その力はイトラが言ってたように、失われつつある。
神を信じる者は減り続け、残る者も私ではなく、イトラを願っている。
(まずは現状確認。)
できることを……タチが私を褒めてくれた部分の一つ。
軽く、体を動かしてみる。
絶大な力も、特殊な能力も感じ取れない。
たぶん今回も、なんにもない「ただの人」だろう。
どうしよう?ここはどこだろう?
転生するたびしていた、初期行動が冷静に行えない。
どうしても彼女のことを考えてしまい、そのたび最後の場面が頭をよぎる。
顔を振り、自らの両頬をペチリと叩く。
(だめだ!タチが……負けるわけないんてないもん!)
タチに会いたい――だから、今でできることをまずやろう。
タチの強さを信じて。
握りしめた拳の周りに、水の球が小さく浮かぶ。
「あっ……」
今の体なんかより、はるかに馴染んでいたために気付かなかった…。
源の力。
青い友人から返してもらった、力は幸い引き継げていたようだ。
小さな体ひとつで池にたたずむ私に、少し勇気をくれる。
(まずは場所を確認しよう――あと、お洋服だね)
見渡してみても、周りにあるのは緑の木々と生い茂る草花。
水場なのに踏みしめられた後もない、近くに人里はなさそうだ。
(どうしよう……へたしたら人に会う前に死んじゃうかも。)
野生動物や魔物に襲われるとか、迷子になってとか……。
前者なら別に構わない。痛みはあるが、すぐ新たな地点から始められるというだけだ。
だが後者の場合、ただただ時間を無駄にすることになる。
「ふぇ!?」
とりあえず水からでようと足を進めた途端。
何者かが私の体を抱きしめた。
まさか……!と思ったのは一瞬。
「神様からの贈り物ユニ!」
振り返ると色白のお姉さんがいた。頭に生えた角がとっても特徴的なお姉さんが。
全身を覆う浮遊感は、水の上に浮かんでいるせいだ。
チャプン。
体を起こして辺りを見渡す。
水の高さは腰下ぐらい。
そのわりに、周りの景色が高く感じる。
自分の手を見る。
とても小さい。今まで経験したことない小ささだ。
(生まれ――変わってる…!!)
意識に焼き付くのは、目を見開いたタチの顔――それと血飛沫……。
体から力が抜け、膝が崩れる。
(タチ…!――タチ!!)
思考は回らず、気力も沸かない……。
四つん這いになった私の目には、水面が鏡となり、幼く小さな顔を映し出す。
見慣れない少女……左右で違う色の瞳に、金色の髪。
(地上で体を作る力が、衰えてる……?)
神から人に受肉する際、人の信仰の力を使って形作った。
人が私を引き寄せたのだ。
その力はイトラが言ってたように、失われつつある。
神を信じる者は減り続け、残る者も私ではなく、イトラを願っている。
(まずは現状確認。)
できることを……タチが私を褒めてくれた部分の一つ。
軽く、体を動かしてみる。
絶大な力も、特殊な能力も感じ取れない。
たぶん今回も、なんにもない「ただの人」だろう。
どうしよう?ここはどこだろう?
転生するたびしていた、初期行動が冷静に行えない。
どうしても彼女のことを考えてしまい、そのたび最後の場面が頭をよぎる。
顔を振り、自らの両頬をペチリと叩く。
(だめだ!タチが……負けるわけないんてないもん!)
タチに会いたい――だから、今でできることをまずやろう。
タチの強さを信じて。
握りしめた拳の周りに、水の球が小さく浮かぶ。
「あっ……」
今の体なんかより、はるかに馴染んでいたために気付かなかった…。
源の力。
青い友人から返してもらった、力は幸い引き継げていたようだ。
小さな体ひとつで池にたたずむ私に、少し勇気をくれる。
(まずは場所を確認しよう――あと、お洋服だね)
見渡してみても、周りにあるのは緑の木々と生い茂る草花。
水場なのに踏みしめられた後もない、近くに人里はなさそうだ。
(どうしよう……へたしたら人に会う前に死んじゃうかも。)
野生動物や魔物に襲われるとか、迷子になってとか……。
前者なら別に構わない。痛みはあるが、すぐ新たな地点から始められるというだけだ。
だが後者の場合、ただただ時間を無駄にすることになる。
「ふぇ!?」
とりあえず水からでようと足を進めた途端。
何者かが私の体を抱きしめた。
まさか……!と思ったのは一瞬。
「神様からの贈り物ユニ!」
振り返ると色白のお姉さんがいた。頭に生えた角がとっても特徴的なお姉さんが。
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