かみてんせい

あゆみのり

文字の大きさ
上 下
44 / 89

質感。

しおりを挟む
 目を開くと――遠い青空と、白い雲。
 全身を覆う浮遊感は、水の上に浮かんでいるせいだ。

チャプン。

 体を起こして辺りを見渡す。
 水の高さは腰下ぐらい。
 そのわりに、周りの景色が高く感じる。

 自分の手を見る。
 とても小さい。今まで経験したことない小ささだ。

(生まれ――変わってる…!!)
 意識に焼き付くのは、目を見開いたタチの顔――それと血飛沫……。

 体から力が抜け、膝が崩れる。
(タチ…!――タチ!!)

 思考は回らず、気力も沸かない……。
 四つん這いになった私の目には、水面が鏡となり、幼く小さな顔を映し出す。
 見慣れない少女……左右で違う色の瞳に、金色の髪。

(地上で体を作る力が、衰えてる……?)
 神から人に受肉する際、人の信仰の力を使って形作った。
 人が私を引き寄せたのだ。
 
 その力はイトラが言ってたように、失われつつある。
 神を信じる者は減り続け、残る者も私ではなく、イトラを願っている。

(まずは現状確認。)
 できることを……タチが私を褒めてくれた部分の一つ。

 軽く、体を動かしてみる。
 絶大な力も、特殊な能力も感じ取れない。
 たぶん今回も、なんにもない「ただの人」だろう。

 どうしよう?ここはどこだろう?
 
 転生するたびしていた、初期行動が冷静に行えない。
 どうしても彼女のことを考えてしまい、そのたび最後の場面が頭をよぎる。

 顔を振り、自らの両頬をペチリと叩く。
(だめだ!タチが……負けるわけないんてないもん!)
 
 タチに会いたい――だから、今でできることをまずやろう。
 タチの強さを信じて。

 握りしめた拳の周りに、水の球が小さく浮かぶ。
「あっ……」
 今の体なんかより、はるかに馴染んでいたために気付かなかった…。

 源の力。
 青い友人から返してもらった、力は幸い引き継げていたようだ。

 小さな体ひとつで池にたたずむ私に、少し勇気をくれる。
 
(まずは場所を確認しよう――あと、お洋服だね)
 見渡してみても、周りにあるのは緑の木々と生い茂る草花。
 水場なのに踏みしめられた後もない、近くに人里はなさそうだ。

(どうしよう……へたしたら人に会う前に死んじゃうかも。)
 野生動物や魔物に襲われるとか、迷子になってとか……。
 前者なら別に構わない。痛みはあるが、すぐ新たな地点から始められるというだけだ。
 だが後者の場合、ただただ時間を無駄にすることになる。

「ふぇ!?」
 とりあえず水からでようと足を進めた途端。
 何者かが私の体を抱きしめた。

 まさか……!と思ったのは一瞬。

「神様からの贈り物ユニ!」
 振り返ると色白のお姉さんがいた。頭に生えた角がとっても特徴的なお姉さんが。
 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

戦力より戦略。

haruhi8128
ファンタジー
【毎日更新!】 引きこもりニートが異世界に飛ばされてしまった!? とりあえず周りを見学していると自分に不都合なことばかり判明! 知識をもってどうにかしなきゃ!! ゲームの世界にとばされてしまった主人公は、周りを見学しているうちにある子と出会う。なしくずし的にパーティーを組むのだが、その正体は…!? 感想頂けると嬉しいです!   横書きのほうが見やすいかもです!(結構数字使ってるので…) 「ツギクル」のバナーになります。良ければ是非。 <a href="https://www.tugikuru.jp/colink/link?cid=40118" target="_blank"><img src="https://www.tugikuru.jp/colink?cid=40118&size=l" alt="ツギクルバナー"></a>

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

処理中です...