5 / 11
衝突
しおりを挟む
次の課題は旋盤?
優樹が俺に聞いた。翌日の朝、俺は真っ先に颯太と剛と優樹に課題のことを話した。
旋盤、か。しかも技能検定3級のだよな?うーん、俺、機械検査だったら3級あるんだけどなあ。颯太が困った顔をした。
えっ、お前機械検査なんていつ取ったの?
1年の12月。俺、その時バイト先に嫌な奴がいて、そいつと一緒にバイトしたくなくて、資格の勉強を言い訳に、バイトサボったことあるんだ。それで。まあ、給料は下がったけど。でも、履歴書には書けるからいいんだけどな。
遊んでる颯太でさえ、資格を持ってたなんて。
それに、旋盤って誰かついてないと危ないよな。特に黒川だと。剛が言った。こいつはマジで事故るぞ。剛の言い方にムカっときたけど、確かにそうだ。どうする?剛が聞く。
あ、あの、さ。優樹がどもりながら言った。
旋盤、俺が見てもいい?え、優樹が?
俺、昨年の12月に旋盤3級受かったんだ。だから・・・。
それ早く言えよ。剛が突っ込んだ。それに、優樹って機械研究部だよな?颯太が聞く。
うん。颯太、優樹とあまり絡みがないのに、最初から呼び捨てかよ。さすがだ。
それなら色々言い訳できるじゃん。よし、旋盤は優樹に任せた。頑張れよ。颯太が優樹の肩をポン、と叩いた。それに対して優樹は硬直してしまっている。こんなコミュ障と、旋盤なんてできるの?いささかの不安を覚えながら、俺は颯太と優樹の絡みを見ていた。
放課後、早速工場で、優樹のコーチによる旋盤への挑戦が始まった。
優樹の協力で、使っていない4尺旋盤を使わせてもらうことになった。材料も、工場の廃材を使わせてもらうことになった。しかしその材料。1年生の時使った鋳鉄ではない。炭素鋼だ。鋳鉄の倍太くて、しかも重い。表面には、黒革まで付いてる。
旋盤の三つ爪に、材料をチャッキングした。しかしこの時点で俺はくたばった。何せ炭素鋼が重い。それによってチャックハンドルにかける力も大きい。普段運動してないし、体格もヒョロい俺には厳しい作業だった。ぜえぜえ言う俺を見て、優樹は、雑魚だな。と言った。
挙動不審なお前に言われたくねえよ。
センタ穴あけの後、最初の工程、端面切削に入った。刃物台を傾け、いっぱいまで横送りして旋盤のスイッチを入れ、正転の方にハンドルを切ろうとしたその時。
逆転の方だぞ。優樹が言った。逆転?うん。と言うと、優樹は逆転の方にハンドルを切って、端面削りのやり方を見せてくれた。
ほら、やってみろ。
初めてのことに戸惑いながら、俺は恐る恐る旋盤のスイッチを入れ、逆転の方にハンドルを切った。それから、バイトを自分の方に戻すテイストで横に送る。
普段の授業ではやらない、未知の領域だった。
端面切削が終わると、次は外径切削だ。しかし、これがエグかった。
熱ッ!!俺は悲鳴を上げた。切削が進むと、キリコが容赦なく飛んでくる。しかも金属だから、手に当たると刃物が手に当たったかのように痛い。熱い。黒革が、鉄のキリコが、容赦なく俺に飛んでくる。優樹、こんなことやってたの?
痛ッ!太くて大きなキリコが、唇に飛んできた。帽子にも、長袖作業着の袖にも、ズボンにも。唇は切れたかもしれない。
自動送りのハンドルを持つ手が震える。そして、離してしまった。
離すんじゃねえよ!優樹がブチギレた。すぐに止められなかったら危ねえだろ!!
慌ててハンドルを持って、自動送りを止めた。そして旋盤のブレーキをかけようとした時、止めるな!そのまま手で送れ。あと少しだし、大丈夫だから。
こんなスパルタのコーチっている?と思った時、わっ!!熱を持った材料から火花が飛んだ。もう、めちゃくちゃだった。
優樹って、旋盤になるとこんなに豹変するの?
すまん。
旋盤の作業に一区切りつけると、優樹が謝った。俺、旋盤とか機械加工になると、周りが見えなくなってそうなっちゃうんだ。
それはダメだろ。ごめん、今度はそんなことしない。優樹は何度も謝ってきた。しかし、俺の中で、旋盤は、めっちゃ怖いやつって印象がついてしまった。しかも、颯太や剛は今回、優樹にすべてを委ねている。しかも今回は、俺1人でやりたくても、危険度が高すぎてできない。せつなは・・・。あ、そういやせつな、今日も休んでた。何でかは知らないけど。八方塞がりだ。こんなうぜえ奴と一緒に課題やるの?てか、何で俺は1人だと何もできないんだ。自分にも腹が立つし、優樹にもみんなにも腹が立つ。
黒川。
何だよ。もっと、ちゃんとアドバイスできるように、俺も頑張るからさ。本当にごめん。
アドバイスできるように頑張る?何だその上から目線。いつもは挙動不審で、クラスメイトから話しかけられただけでどもって、何考えてるかよく分からない奴が、アドバイス?うぜえよ、お前。俺は吐き捨てるように言った。普段ガイジみたいなのに、偉そうにするな。マジでムカつく。俺は、振り返りもせず工場の入り口まで歩いていって、近くのテーブルの下に置いてあったリュックを持って、工場を出た。
安全靴を上履きに履き替えて、着替えるために機械科の棟へ歩いた。本当は、作業が終わったら旋盤周りの掃除をしなければならないけど、そんなの知ったことか。優樹がやるだろ。俺のコーチだし。イライラムカムカする気持ちを引き摺りながら、俺は家に帰った。
まったく、このイライラする気持ちをどこにぶつけようか。Twitter?それとも颯太や剛にLINE?どうしよう。100%俺が悪いのは分かってる。でも・・・。優樹のあの言い方もムカつく。でも、1人だと何もできない俺自体にも腹が立つ。何か俺、1人でできないかなあ?と俺が思った時だった。
あ、この間、エディオンで買ったタミヤの工作キット。あれは危険な機械を使わないから、1人でもできる。あれをやろう。あれをやって、自信をつけよう。ちょっと盛り過ぎかもしれないけど。よし、と思って、俺は自分の部屋のドアを開けた。すると。
えっ?
工作キットのおもちゃが、ジーッとモーター音を立てながら、俺の前に向かって走ってきて、俺の足元で止まった。
何で、できてるの?
やあ、黒川。ベッドにあぐらをかきながら、伊丹がにこやかに挨拶した。い、伊丹?
部屋の中に、こんなものを持っていたなんて。タミヤの楽しい工作キットは私の心の故郷です。
は?
伊丹は手に持ったリモコンを使って、おもちゃを器用に操った。おもちゃは伊丹に従順に従い、部屋の中をグルグル回っていた。
部屋であなたの帰りを待っていたら、漫画等に飽きてしまって、このキットを作ってしまいました。いたずらっぽく微笑む。
それより、旋盤は如何かな。
旋盤はって、いや、今そんな呑気なこと言ってられるか。せっかく俺が買ったのに。せっかく俺がやる気になったのに。無気力だった頃より、だいぶ色々手を出そうとしたのに!
でも、買ってもすぐには手を付けなかったではありませんか。本当にやる気だったら、すぐに作っていると思われますが?
ムカつく。煽ってるのかよお前。煽ってなどおりません。事実を述べているだけです。毅然とした態度で伊丹は言った。
それにしても、黒川がタミヤの工作キットに手を出すなんて。嬉しくて仕方がなくて。伊丹は嬉しそうに言った。何か、これ、またうんちく垂れるフラグが立った、よな?
コホン、と伊丹が咳払いした。案の定、次の瞬間、伊丹によるタミヤの工作キットへの長い長いうんちくが始まった。あのさあ、何でヲタク、しかもおっさんって話長いの?
ぶっちゃけ、俺はものづくりにそんな情熱はない。与えられた課題をこなしてるだけだ。こんなにうんちくを垂れるなら、伊丹のうんちくを聴くって課題を出してほしいくらいだ。楽だし。適当に相槌打ってりゃ終わるし。
よろしいか?散々うんちくを語り終わると、伊丹は言った。うん。てか、疲れた。疲れたって、あなた。と言って伊丹はまた口を開こうとしたが、もういいよ。もういい、聴きたくない。お前の長え話なんか、興味ねえよ。黒川がものづくりに興味を持ち出したから、話をしたかったんですが・・・。ものづくりなんか興味ねえよ。それに、旋盤だってマジで危ないじゃん。マジで俺ボロボロだよ。唇は怪我するし。火傷するし。
やけどは勲章だ、と先輩教員から聞いたことがありますが。そんな勲章なんか、いらねえよ。もう旋盤なんかやりたくないよ。あのガイジにキレられるし。
ガイジ?優樹だよ、東山。あいつ、普段は挙動不審なのに、何だよあの上から目線な態度。旋盤という危険な機械を前にすれば、温厚な人間でも神経を張り巡らせてピリピリすると思いますが。でも、あれはないって。それだけ、東山があなたに真剣になってくれている、ということではないでしょうか?
はあ?真面目すぎるし硬すぎるんだよ、あいつ。黒川、東山は真面目な性格なのです。ここまで本気でぶつかってきてくれる友人ができて、あなたは幸せではないのですか?
幸せ?そんな訳ねーだろ、何でこんな訳わかんない奴らに絡まれなきゃいけねえんだよ!しかも、難しい訳わからない課題ばっかぶっこまれて、気が狂うよ。
黒川。威厳を込めて、低い声で伊丹が言った。
確かに、何もかも自分の思い通りにことや人が動くとは限りません。しかし、その中で、あなたは何をされましたか?ほとんど、牧口先生や桜山に頼りきりだったではないですか。そのことについて、何も思わないのですか?別に。俺は吐き捨てるように言った。
今のあなたは傲慢です。それに、子どもです。思い通りにならないから、友達に悪く言われたから、あなたはブチ切れるのですか?むしろ、このときだからこそ、いよいよの心で前に進もうと思わないのですか?社会では、自分の思い通りにならないからと言ってブチ切れる者は、どんな会社へ行っても切り捨てられますよ?
うるせえ、会社なんてこの世にごまんとあるじゃないか。合わなければ転職すればいいんじゃないの?
転職したって、自分が変わらなければ、自分の周りはいつまででもあなたが言う、変なやつばかりですよ?それでは惨めです。
俺が惨めに見えようが、お前には関係ないだろ。俺のことは、俺のものさしで決めるんだから。
就職したら、そういうわけにはいきませんよ?自分が嫌でも、人から査定されるんですよ?それで給料だって決まる。社会をなめすぎだ!!伊丹が怒鳴った。
高いバリトンの声が、わーんと部屋に響いた。
非常に心配ですが、頼みますよ。リタイアすれば、どんなことになるか。そのことはご存知ですね?消えた。
知るか。俺は伊丹が消えたあとに吐き捨てた。バーカ。
どいつもこいつも、変なやつばっか。もう、絡みたくねえ。俺はベッドに制服のまま寝そべって、しばらくボーッとしていた。
設計も、原動機も、製図も、普段の俺だったら絶対にやらないことだ。それに挑戦しただけすごいと思わないのか?ちょっとできるとすぐハードルを上げる。大人ってウザい。
前みたいに、ただ学校行って帰るって生活の方が、俺には合ってる。就職だって別に大企業に入ろうとしてるわけじゃないし、単位だって落としてるわけじゃないし。
普通が一番だよ~、俺は何もない天井に向かって呟いた。
それに、俺はあんな変なやつらと絡みたくない。リタイアしてあいつらと縁が切れるなら、そんな楽なことはない。むしろ、一石二鳥じゃないか?
決めた。やーめた。もう知るか、あんな変なメンヘラヲタクとガイジ。颯太も剛もどうでもいい。独りに、してくれ。
おはよう。
翌朝、俺が教室に入ると、優樹が待ってましたとばかりに駆け寄ってきた。
黒川。ノートを持っていた。黒川、いいものが、と言いかけたその時、優樹は目の前の机にぶつかって、転びかけた。
あっぶね、と周りの奴らが言った。
大丈夫か?
あ、う、うん。机を直しながら優樹は答えていた。鈍臭い。
黒川、体勢を整えると、優樹は俺に近づいてきた。これ、俺が技能検定やってたときの、手順書。東崎先生や、伊丹先生監修だから、間違いなくできるようになるぞ。嬉しそうにノートを見せる。昨日あれから、申し訳ないと思って、色々考えたんだ。俺もいけないところあったし、一緒に頑張ろう。
いや、優樹。俺もういいから。
は?課題、もういい。やめる。はあ?!何言ってんだお前!せっかく課題半分終わったのに、何言ってんだよ!
よくよく考えたら、お前みたいなガイジと俺、付き合いそんな無いじゃん。それに、こんなやつに教えてほしいってお願いしたこともない。お前がしゃしゃり出てきただけだろ。
は?ふざけんなよ、それだったら、桜山は?せつなは?あいつらはちゃんと頼んだ。お前には頼んでないし、お前のやり方合わないしムカつくんだよ。もう近寄らないでくれ。
おい、黒川!優樹が怒鳴った。あまりの声の大きさに、クラス中がしん、と静まり返った。
ふざけんな。お前は俺たちが近寄らなくなっていいかもしれないけど、消される身にもなれ!!お前と仲良くしたくて近づいてるやつもいるんだぞ。それが、忘れたくない記憶を忘れさせられるって、お前どういうことか分かってるのか?
知らねえよ。俺は独りで居たいんだ。
ふうん、そうか。分かったよ。確かに、痛い目見ないと人は成長しないって言うし、勝手にしろ。優樹は踵を返して自分の席に戻った。
クラスに賑わいが戻った。
その日は、俺はずっと独りで過ごした。颯太も剛も俺の機嫌が悪いのを察したのか、俺に話しかけてくることはなかった。
たまにチラッと俺の様子をうかがうことはあっても、声をかけることはなく、颯太は剛と、優樹は1人で1日を過ごした。幸い、実習やペアでやる教科もなかったので、1人で気ままに過ごせた。
帰りのショートが終わると、俺は一目散に昇降口に降りた。教室を誰よりも早く出たくてウズウズしていたから。
早く帰ろう、いや、帰る前に岐阜駅のスタバに寄ってまたキャラメルフラペチーノ飲もうかな。それか、抹茶のフラペチーノも悪くない。そうしよう。
この間の単独行動、楽しかったし、スタバのフラペチーノも美味しかったし。行こう。そう思って、下駄箱で靴を履き替えて、外に出た。その時だった。
えっ・・・。
伊丹が立っていた。外は晩秋で肌寒いのに、半袖の濃紺の作業着を着ていた。
黒川。約束を破るのですか?約束?
旋盤の加工部品を作る、という約束。東山と協力して課題を終わらせる、という約束です!
バリトンの声が外に響き渡った。
あなたは、東山の提案を無視し、この課題をリタイアしようとしている。それがどれだけ酷いことか、分からないのですか?
約束を破る代償は非常に大きい。毒薬が体を回るより速く、人からの信用を失い、酷評が常について回りますよ?そしてその酷評は、例え事実無根であったとしても、あなたに永遠に消えないレッテルを貼る。悪い噂は火事より速く回りますからねえ、あなたはどんなに良いことをしても、そのレッテルを剥がすことはできなくなりますよ?
建設は死闘、破壊は一瞬です。そして、破壊を復興へと持っていくには、大変な労力を必要とすることを、あなたは分からないのか?!愚か者!
その瞬間、それまでうっすら晴れていた空が急に暗くなり、季節外れの雷が鳴り出した。
レッテル貼られたって、別に俺が気にしなきゃ良いだけのことじゃん。人から変な噂立てられたって、気にせず成功してる人もいるじゃん。それに、人との約束を破って不正したって、儲けてる大人はたくさんいるじゃん!大人のほうが汚いだろ。お前だって倉庫から色々物パクってさ!あれ、俺が全部返したんだぞ。もし返してるところ見つかったら、俺が濡れ衣だったんだぞ。ふざけんな!
俺の怒りを表すように、冷たい雨が、強く降り出した。
あなたには、失望しました。人に頼ることしかできず、自分の思い通りにならないと人に当たり、人に感謝もできず傲慢で・・・。そこまで言うと伊丹は大きく息を吸った。
その瞬間だった。ドサッ!!という大きな音を立てて、伊丹が倒れた。突然のことに、俺は頭が真っ白になった。
えっ、何?どういうこと?!た、倒れたって、い、一体どうすればいいの?しかし、伊丹はうつ伏せに倒れたまま、ピクリともしない。
頭の方から、血が流れ出した。多分、倒れたときの衝撃で、頭を打ったんだ。
・・・い、伊丹?俺は恐る恐る近寄った。大丈夫?でも、動かない。そっと体に手を当てた。冷たい。体が、恐ろしいくらい冷たかった。
先生!先生、しっかりして。しっかりしてよ!俺は伊丹の体を揺すった。しかし、反応はないし、血は流れっぱなしだ。
先生!学ランがめっちゃ濡れてるけど、そんなの気にしない。だって、目の前で人が倒れてるんだもん。先生、起きてよ!俺は叫び続けた。でも、死体のように先生は動かなかった。そして、俺は、やばいものを見てしまった。半袖の濃紺の作業着の袖から出る腕に、たくさんの刺したような痕がついていた。見ているだけで痛々しい。
先生?一体どうしたの?何があったんだ?そう俺が疑問を持った時。
ガン!と何か鉄のような、重いハンマーが俺の頭を叩くような頭痛が俺を襲った。痛い。とても耐えられない。
激痛で、俺はその場に意識を失って倒れた。
優樹が俺に聞いた。翌日の朝、俺は真っ先に颯太と剛と優樹に課題のことを話した。
旋盤、か。しかも技能検定3級のだよな?うーん、俺、機械検査だったら3級あるんだけどなあ。颯太が困った顔をした。
えっ、お前機械検査なんていつ取ったの?
1年の12月。俺、その時バイト先に嫌な奴がいて、そいつと一緒にバイトしたくなくて、資格の勉強を言い訳に、バイトサボったことあるんだ。それで。まあ、給料は下がったけど。でも、履歴書には書けるからいいんだけどな。
遊んでる颯太でさえ、資格を持ってたなんて。
それに、旋盤って誰かついてないと危ないよな。特に黒川だと。剛が言った。こいつはマジで事故るぞ。剛の言い方にムカっときたけど、確かにそうだ。どうする?剛が聞く。
あ、あの、さ。優樹がどもりながら言った。
旋盤、俺が見てもいい?え、優樹が?
俺、昨年の12月に旋盤3級受かったんだ。だから・・・。
それ早く言えよ。剛が突っ込んだ。それに、優樹って機械研究部だよな?颯太が聞く。
うん。颯太、優樹とあまり絡みがないのに、最初から呼び捨てかよ。さすがだ。
それなら色々言い訳できるじゃん。よし、旋盤は優樹に任せた。頑張れよ。颯太が優樹の肩をポン、と叩いた。それに対して優樹は硬直してしまっている。こんなコミュ障と、旋盤なんてできるの?いささかの不安を覚えながら、俺は颯太と優樹の絡みを見ていた。
放課後、早速工場で、優樹のコーチによる旋盤への挑戦が始まった。
優樹の協力で、使っていない4尺旋盤を使わせてもらうことになった。材料も、工場の廃材を使わせてもらうことになった。しかしその材料。1年生の時使った鋳鉄ではない。炭素鋼だ。鋳鉄の倍太くて、しかも重い。表面には、黒革まで付いてる。
旋盤の三つ爪に、材料をチャッキングした。しかしこの時点で俺はくたばった。何せ炭素鋼が重い。それによってチャックハンドルにかける力も大きい。普段運動してないし、体格もヒョロい俺には厳しい作業だった。ぜえぜえ言う俺を見て、優樹は、雑魚だな。と言った。
挙動不審なお前に言われたくねえよ。
センタ穴あけの後、最初の工程、端面切削に入った。刃物台を傾け、いっぱいまで横送りして旋盤のスイッチを入れ、正転の方にハンドルを切ろうとしたその時。
逆転の方だぞ。優樹が言った。逆転?うん。と言うと、優樹は逆転の方にハンドルを切って、端面削りのやり方を見せてくれた。
ほら、やってみろ。
初めてのことに戸惑いながら、俺は恐る恐る旋盤のスイッチを入れ、逆転の方にハンドルを切った。それから、バイトを自分の方に戻すテイストで横に送る。
普段の授業ではやらない、未知の領域だった。
端面切削が終わると、次は外径切削だ。しかし、これがエグかった。
熱ッ!!俺は悲鳴を上げた。切削が進むと、キリコが容赦なく飛んでくる。しかも金属だから、手に当たると刃物が手に当たったかのように痛い。熱い。黒革が、鉄のキリコが、容赦なく俺に飛んでくる。優樹、こんなことやってたの?
痛ッ!太くて大きなキリコが、唇に飛んできた。帽子にも、長袖作業着の袖にも、ズボンにも。唇は切れたかもしれない。
自動送りのハンドルを持つ手が震える。そして、離してしまった。
離すんじゃねえよ!優樹がブチギレた。すぐに止められなかったら危ねえだろ!!
慌ててハンドルを持って、自動送りを止めた。そして旋盤のブレーキをかけようとした時、止めるな!そのまま手で送れ。あと少しだし、大丈夫だから。
こんなスパルタのコーチっている?と思った時、わっ!!熱を持った材料から火花が飛んだ。もう、めちゃくちゃだった。
優樹って、旋盤になるとこんなに豹変するの?
すまん。
旋盤の作業に一区切りつけると、優樹が謝った。俺、旋盤とか機械加工になると、周りが見えなくなってそうなっちゃうんだ。
それはダメだろ。ごめん、今度はそんなことしない。優樹は何度も謝ってきた。しかし、俺の中で、旋盤は、めっちゃ怖いやつって印象がついてしまった。しかも、颯太や剛は今回、優樹にすべてを委ねている。しかも今回は、俺1人でやりたくても、危険度が高すぎてできない。せつなは・・・。あ、そういやせつな、今日も休んでた。何でかは知らないけど。八方塞がりだ。こんなうぜえ奴と一緒に課題やるの?てか、何で俺は1人だと何もできないんだ。自分にも腹が立つし、優樹にもみんなにも腹が立つ。
黒川。
何だよ。もっと、ちゃんとアドバイスできるように、俺も頑張るからさ。本当にごめん。
アドバイスできるように頑張る?何だその上から目線。いつもは挙動不審で、クラスメイトから話しかけられただけでどもって、何考えてるかよく分からない奴が、アドバイス?うぜえよ、お前。俺は吐き捨てるように言った。普段ガイジみたいなのに、偉そうにするな。マジでムカつく。俺は、振り返りもせず工場の入り口まで歩いていって、近くのテーブルの下に置いてあったリュックを持って、工場を出た。
安全靴を上履きに履き替えて、着替えるために機械科の棟へ歩いた。本当は、作業が終わったら旋盤周りの掃除をしなければならないけど、そんなの知ったことか。優樹がやるだろ。俺のコーチだし。イライラムカムカする気持ちを引き摺りながら、俺は家に帰った。
まったく、このイライラする気持ちをどこにぶつけようか。Twitter?それとも颯太や剛にLINE?どうしよう。100%俺が悪いのは分かってる。でも・・・。優樹のあの言い方もムカつく。でも、1人だと何もできない俺自体にも腹が立つ。何か俺、1人でできないかなあ?と俺が思った時だった。
あ、この間、エディオンで買ったタミヤの工作キット。あれは危険な機械を使わないから、1人でもできる。あれをやろう。あれをやって、自信をつけよう。ちょっと盛り過ぎかもしれないけど。よし、と思って、俺は自分の部屋のドアを開けた。すると。
えっ?
工作キットのおもちゃが、ジーッとモーター音を立てながら、俺の前に向かって走ってきて、俺の足元で止まった。
何で、できてるの?
やあ、黒川。ベッドにあぐらをかきながら、伊丹がにこやかに挨拶した。い、伊丹?
部屋の中に、こんなものを持っていたなんて。タミヤの楽しい工作キットは私の心の故郷です。
は?
伊丹は手に持ったリモコンを使って、おもちゃを器用に操った。おもちゃは伊丹に従順に従い、部屋の中をグルグル回っていた。
部屋であなたの帰りを待っていたら、漫画等に飽きてしまって、このキットを作ってしまいました。いたずらっぽく微笑む。
それより、旋盤は如何かな。
旋盤はって、いや、今そんな呑気なこと言ってられるか。せっかく俺が買ったのに。せっかく俺がやる気になったのに。無気力だった頃より、だいぶ色々手を出そうとしたのに!
でも、買ってもすぐには手を付けなかったではありませんか。本当にやる気だったら、すぐに作っていると思われますが?
ムカつく。煽ってるのかよお前。煽ってなどおりません。事実を述べているだけです。毅然とした態度で伊丹は言った。
それにしても、黒川がタミヤの工作キットに手を出すなんて。嬉しくて仕方がなくて。伊丹は嬉しそうに言った。何か、これ、またうんちく垂れるフラグが立った、よな?
コホン、と伊丹が咳払いした。案の定、次の瞬間、伊丹によるタミヤの工作キットへの長い長いうんちくが始まった。あのさあ、何でヲタク、しかもおっさんって話長いの?
ぶっちゃけ、俺はものづくりにそんな情熱はない。与えられた課題をこなしてるだけだ。こんなにうんちくを垂れるなら、伊丹のうんちくを聴くって課題を出してほしいくらいだ。楽だし。適当に相槌打ってりゃ終わるし。
よろしいか?散々うんちくを語り終わると、伊丹は言った。うん。てか、疲れた。疲れたって、あなた。と言って伊丹はまた口を開こうとしたが、もういいよ。もういい、聴きたくない。お前の長え話なんか、興味ねえよ。黒川がものづくりに興味を持ち出したから、話をしたかったんですが・・・。ものづくりなんか興味ねえよ。それに、旋盤だってマジで危ないじゃん。マジで俺ボロボロだよ。唇は怪我するし。火傷するし。
やけどは勲章だ、と先輩教員から聞いたことがありますが。そんな勲章なんか、いらねえよ。もう旋盤なんかやりたくないよ。あのガイジにキレられるし。
ガイジ?優樹だよ、東山。あいつ、普段は挙動不審なのに、何だよあの上から目線な態度。旋盤という危険な機械を前にすれば、温厚な人間でも神経を張り巡らせてピリピリすると思いますが。でも、あれはないって。それだけ、東山があなたに真剣になってくれている、ということではないでしょうか?
はあ?真面目すぎるし硬すぎるんだよ、あいつ。黒川、東山は真面目な性格なのです。ここまで本気でぶつかってきてくれる友人ができて、あなたは幸せではないのですか?
幸せ?そんな訳ねーだろ、何でこんな訳わかんない奴らに絡まれなきゃいけねえんだよ!しかも、難しい訳わからない課題ばっかぶっこまれて、気が狂うよ。
黒川。威厳を込めて、低い声で伊丹が言った。
確かに、何もかも自分の思い通りにことや人が動くとは限りません。しかし、その中で、あなたは何をされましたか?ほとんど、牧口先生や桜山に頼りきりだったではないですか。そのことについて、何も思わないのですか?別に。俺は吐き捨てるように言った。
今のあなたは傲慢です。それに、子どもです。思い通りにならないから、友達に悪く言われたから、あなたはブチ切れるのですか?むしろ、このときだからこそ、いよいよの心で前に進もうと思わないのですか?社会では、自分の思い通りにならないからと言ってブチ切れる者は、どんな会社へ行っても切り捨てられますよ?
うるせえ、会社なんてこの世にごまんとあるじゃないか。合わなければ転職すればいいんじゃないの?
転職したって、自分が変わらなければ、自分の周りはいつまででもあなたが言う、変なやつばかりですよ?それでは惨めです。
俺が惨めに見えようが、お前には関係ないだろ。俺のことは、俺のものさしで決めるんだから。
就職したら、そういうわけにはいきませんよ?自分が嫌でも、人から査定されるんですよ?それで給料だって決まる。社会をなめすぎだ!!伊丹が怒鳴った。
高いバリトンの声が、わーんと部屋に響いた。
非常に心配ですが、頼みますよ。リタイアすれば、どんなことになるか。そのことはご存知ですね?消えた。
知るか。俺は伊丹が消えたあとに吐き捨てた。バーカ。
どいつもこいつも、変なやつばっか。もう、絡みたくねえ。俺はベッドに制服のまま寝そべって、しばらくボーッとしていた。
設計も、原動機も、製図も、普段の俺だったら絶対にやらないことだ。それに挑戦しただけすごいと思わないのか?ちょっとできるとすぐハードルを上げる。大人ってウザい。
前みたいに、ただ学校行って帰るって生活の方が、俺には合ってる。就職だって別に大企業に入ろうとしてるわけじゃないし、単位だって落としてるわけじゃないし。
普通が一番だよ~、俺は何もない天井に向かって呟いた。
それに、俺はあんな変なやつらと絡みたくない。リタイアしてあいつらと縁が切れるなら、そんな楽なことはない。むしろ、一石二鳥じゃないか?
決めた。やーめた。もう知るか、あんな変なメンヘラヲタクとガイジ。颯太も剛もどうでもいい。独りに、してくれ。
おはよう。
翌朝、俺が教室に入ると、優樹が待ってましたとばかりに駆け寄ってきた。
黒川。ノートを持っていた。黒川、いいものが、と言いかけたその時、優樹は目の前の机にぶつかって、転びかけた。
あっぶね、と周りの奴らが言った。
大丈夫か?
あ、う、うん。机を直しながら優樹は答えていた。鈍臭い。
黒川、体勢を整えると、優樹は俺に近づいてきた。これ、俺が技能検定やってたときの、手順書。東崎先生や、伊丹先生監修だから、間違いなくできるようになるぞ。嬉しそうにノートを見せる。昨日あれから、申し訳ないと思って、色々考えたんだ。俺もいけないところあったし、一緒に頑張ろう。
いや、優樹。俺もういいから。
は?課題、もういい。やめる。はあ?!何言ってんだお前!せっかく課題半分終わったのに、何言ってんだよ!
よくよく考えたら、お前みたいなガイジと俺、付き合いそんな無いじゃん。それに、こんなやつに教えてほしいってお願いしたこともない。お前がしゃしゃり出てきただけだろ。
は?ふざけんなよ、それだったら、桜山は?せつなは?あいつらはちゃんと頼んだ。お前には頼んでないし、お前のやり方合わないしムカつくんだよ。もう近寄らないでくれ。
おい、黒川!優樹が怒鳴った。あまりの声の大きさに、クラス中がしん、と静まり返った。
ふざけんな。お前は俺たちが近寄らなくなっていいかもしれないけど、消される身にもなれ!!お前と仲良くしたくて近づいてるやつもいるんだぞ。それが、忘れたくない記憶を忘れさせられるって、お前どういうことか分かってるのか?
知らねえよ。俺は独りで居たいんだ。
ふうん、そうか。分かったよ。確かに、痛い目見ないと人は成長しないって言うし、勝手にしろ。優樹は踵を返して自分の席に戻った。
クラスに賑わいが戻った。
その日は、俺はずっと独りで過ごした。颯太も剛も俺の機嫌が悪いのを察したのか、俺に話しかけてくることはなかった。
たまにチラッと俺の様子をうかがうことはあっても、声をかけることはなく、颯太は剛と、優樹は1人で1日を過ごした。幸い、実習やペアでやる教科もなかったので、1人で気ままに過ごせた。
帰りのショートが終わると、俺は一目散に昇降口に降りた。教室を誰よりも早く出たくてウズウズしていたから。
早く帰ろう、いや、帰る前に岐阜駅のスタバに寄ってまたキャラメルフラペチーノ飲もうかな。それか、抹茶のフラペチーノも悪くない。そうしよう。
この間の単独行動、楽しかったし、スタバのフラペチーノも美味しかったし。行こう。そう思って、下駄箱で靴を履き替えて、外に出た。その時だった。
えっ・・・。
伊丹が立っていた。外は晩秋で肌寒いのに、半袖の濃紺の作業着を着ていた。
黒川。約束を破るのですか?約束?
旋盤の加工部品を作る、という約束。東山と協力して課題を終わらせる、という約束です!
バリトンの声が外に響き渡った。
あなたは、東山の提案を無視し、この課題をリタイアしようとしている。それがどれだけ酷いことか、分からないのですか?
約束を破る代償は非常に大きい。毒薬が体を回るより速く、人からの信用を失い、酷評が常について回りますよ?そしてその酷評は、例え事実無根であったとしても、あなたに永遠に消えないレッテルを貼る。悪い噂は火事より速く回りますからねえ、あなたはどんなに良いことをしても、そのレッテルを剥がすことはできなくなりますよ?
建設は死闘、破壊は一瞬です。そして、破壊を復興へと持っていくには、大変な労力を必要とすることを、あなたは分からないのか?!愚か者!
その瞬間、それまでうっすら晴れていた空が急に暗くなり、季節外れの雷が鳴り出した。
レッテル貼られたって、別に俺が気にしなきゃ良いだけのことじゃん。人から変な噂立てられたって、気にせず成功してる人もいるじゃん。それに、人との約束を破って不正したって、儲けてる大人はたくさんいるじゃん!大人のほうが汚いだろ。お前だって倉庫から色々物パクってさ!あれ、俺が全部返したんだぞ。もし返してるところ見つかったら、俺が濡れ衣だったんだぞ。ふざけんな!
俺の怒りを表すように、冷たい雨が、強く降り出した。
あなたには、失望しました。人に頼ることしかできず、自分の思い通りにならないと人に当たり、人に感謝もできず傲慢で・・・。そこまで言うと伊丹は大きく息を吸った。
その瞬間だった。ドサッ!!という大きな音を立てて、伊丹が倒れた。突然のことに、俺は頭が真っ白になった。
えっ、何?どういうこと?!た、倒れたって、い、一体どうすればいいの?しかし、伊丹はうつ伏せに倒れたまま、ピクリともしない。
頭の方から、血が流れ出した。多分、倒れたときの衝撃で、頭を打ったんだ。
・・・い、伊丹?俺は恐る恐る近寄った。大丈夫?でも、動かない。そっと体に手を当てた。冷たい。体が、恐ろしいくらい冷たかった。
先生!先生、しっかりして。しっかりしてよ!俺は伊丹の体を揺すった。しかし、反応はないし、血は流れっぱなしだ。
先生!学ランがめっちゃ濡れてるけど、そんなの気にしない。だって、目の前で人が倒れてるんだもん。先生、起きてよ!俺は叫び続けた。でも、死体のように先生は動かなかった。そして、俺は、やばいものを見てしまった。半袖の濃紺の作業着の袖から出る腕に、たくさんの刺したような痕がついていた。見ているだけで痛々しい。
先生?一体どうしたの?何があったんだ?そう俺が疑問を持った時。
ガン!と何か鉄のような、重いハンマーが俺の頭を叩くような頭痛が俺を襲った。痛い。とても耐えられない。
激痛で、俺はその場に意識を失って倒れた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
流星の徒花
柴野日向
ライト文芸
若葉町に住む中学生の雨宮翔太は、通い詰めている食堂で転校生の榎本凛と出会った。
明るい少女に対し初めは興味を持たない翔太だったが、互いに重い運命を背負っていることを知り、次第に惹かれ合っていく。
残酷な境遇に抗いつつ懸命に咲き続ける徒花が、いつしか流星となるまでの物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ショートショート集
藤崎 柚葉
ライト文芸
「ここに集まるは、愚か者たちの日常の一部。奴らの人間性を覗いてみるかい?」
Twitterでアップしていたショートショート集です。(超短編小説)
ジャンルはバラバラ。
痺れて苦い恋愛物語や、学生のギャグ、まさかの展開のシリアス系があります。
※こちらで公開するにあたり、作品を修正しました。
※恋愛・コメディ各1作品ずつ、まとめずに1つの作品として公開中。
●恋愛短編「秘密の恋に誘われて花が散る」
●キャラ文芸短編「お前が全ての元凶だ」
神楽囃子の夜
紫音
ライト文芸
※第6回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
地元の夏祭りを訪れていた少年・狭野笙悟(さのしょうご)は、そこで見かけた幽霊の少女に一目惚れしてしまう。彼女が現れるのは年に一度、祭りの夜だけであり、その姿を見ることができるのは狭野ただ一人だけだった。
年を重ねるごとに想いを募らせていく狭野は、やがて彼女に秘められた意外な真実にたどり着く……。
四人の男女の半生を描く、時を越えた現代ファンタジー。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる