6 / 52
エクレールの休暇(後編)
しおりを挟む
「きゃっ……!」
エクレールは秘部に触れた瞬間、思わず腰を引いていた。謎の手に触れられた時と同じ刺激を自分の手が起こしたことに驚いてしまった。
「私の身体がやっぱり、変になってしまったのかしら」
ズボンとショーツを膝まで下ろして、まじまじと自分の女性器を見詰めた。これまで真剣に観察したことはないが、今までどこかが大きく変わったようには見えない。
ぷっくりと膨らんだ大陰唇に陰毛はない。ほとんど刺激を与えないで丁寧にケアしてきたため、黒ずんでおらず綺麗な赤みがかった肌色をしていた。
下腹部を這わせて恐る恐る右手を再び秘部に伸ばしていく。恥丘に生えた薄い陰毛が手首をくすぐる。
エクレールは自らの細い指で秘部の周りを捏ねくり回した。
「ん、んん、んっ……」
謎の手が通った軌跡を辿るように、陰裂の近くは避けて大陰唇と足の付根をゆっくりと手の平で押すように刺激していく。
じんわりと内側に快感が広がった。これなら怖くないし痛くもない。
レクレールはほとんど自慰の経験がなかった。元々性欲が薄いのも大きいが、何よりも性的欲求を満たす行為自体に虚しさを覚えるからだ。快楽よりも悲しみが強く湧き上がるせいでもあった。
「……あの時は、どうして虚しくなかったんだろう?」
自分の心変わりの理由を知りたくて、エクレールは昨日の謎の手に触れられた順番や愛撫の仕方をなぞっていた。
エクレールは中指を立てた右手を陰裂にあてがった。
「んくぅ……」
大陰唇に隠れていた小陰唇を分け入り膣口を探り当てた。
大きく深呼吸。それから謎の手は一気に奥まで指を突き入れた。それをこれから再現する。
モノを求めて小陰唇が花開くように左右に広がった。
「――ッッ!!!!」
意を決して中指を挿入した。
姿勢と指の長さの問題で、あの指と同じように奥まで届かなかったが、快感が背筋を駆け上っていき頭が真っ白になる。
腟内は狭くエクレールの指でも余り余裕はなかった。指の太さを再現しようと人差し指も入れようとしたが、恐怖が勝ってしまい入れることはできなかった。
「入ってるっ、私の腟内にっ……」
妹と暮らす部屋で何をやっているのだろうか。冷静な思考が半裸になって自慰に耽る自分を客観視してしまった。
エクレールは19歳。シフォンも16歳になる。二人共に立派な大人だ。どちらかが結婚すれば別々に暮らすことになるだろう。ただ人当たりの良い妹は分からないが、エクレール自身はそんな日は訪れないと思っている。
彼女の淡い初恋は気付いた時には叶わないものになっていた。
自覚した時には、相手は死んでいたからだ。
「ん、ん、んっ……ああ、あっ」
エクレールは悲しみを振り切るために快楽に身を委ねる。中指をうねるように動かした。
最近またあの人――この都市を守るために命を懸けた幼馴染のことをよく思い出すようになった原因は分かっていた。
アルベルトだ。不真面目で軽薄な男。あの人とはまるで似ていない、エクレールが最も嫌うタイプの異性だ。
しかし、あの日、上級パーティが捕獲した魔物が暴れ出した時、エクレールを庇ったアルベルトの背中は、かつて見た初恋の人と同じ背中だった。誰かのために命を懸ける“正義”だけがあった。
ふと下腹部が熱を帯びていた。中指による快楽とは別のもっと心の温まる不思議な熱だ。
「ああっ……」
エクレールは頬を真っ赤に染める。
気付いてしまった。ぼやけつつあるあの人ではなく、アルベルトの顔を思い浮かべて指を入れていた。
「どうして? どうしてアルベルトさんを?」
確かに命を救われた。誰にもあの人と同じ末路を辿ってもらいたくなくって、何かと気に掛けていた。でもそれは恋愛感情ではなくて、自分の後悔を押し付ける行為でしかなかった筈だ。
『エクレールさん、依頼達成の報告に来ました』
アルベルトの笑顔が浮かび上がる。報告内容を事細かく注意されるのを予想して引きつっていた。
ふと、他の受付窓口を確認すれば空いているところがあった。
どうして彼はエクレールのところに来たのだろう?
どうして彼は嫌がりながらも、面倒臭がりながらも、ずっとエクレールを受付嬢に選んでくれたのだろう?
腟内が精液を受け入れるために膨らんでいく。
女の部分がアルベルトを求めていた。
だめだ。そんなこと考えちゃだめだ。だめなのに、指を動かてしまう。
「あ、あんっ、だめっ、私……おかしくなっちゃうっ……こんな、こと、だめなのにぃっ」
中指を前後に動かして出し入れする。
ジュポジュポと淫らな水音が響く。
「ああ、ああぅ……」
自分で触れるのではなくて、他の誰かにされているような感覚が欲しくて、ダイニングのテーブルの角に立った。
最後の理性が下ろしていた下着とズボンを着直した。妹や来客も使う家具を自分の愛液で汚すなんて気持ち悪いだろう。
爪先立ちになって下腹部をテーブルの角に押し付ける。
「ごめんエクレお姉ちゃん、忘れ物しちゃった!」
勢い良く玄関の扉が開かれた。
シフォンが額の汗を拭いながら部屋に入ってくる。
「なにしてるのお姉ちゃん……?」
エクレールはテーブルに掛けていた手を下ろして額の汗を拭った。
「……部屋の模様替えでもしようかなって」
「もう大人しく寝るの!」
シフォンに引っ張られて、エクレールはベッドに押し込まれる。歩く時に少し内股になっていたが、どうやらそちらの異変には気付かれなかったようだ。
「はい、お昼になったら料理作りに来るなら、それまで大人しく寝ていること」
「うん、分かった。大人しくしてる」
「よろしい!」
エクレールはシフォンが出ていって、ようやく安堵の息をついた。
暴走していた心も落ち着いた。
謎の現象に襲われたせいで少し変になっただけだ。
そう、自分に言い聞かせて、エクレールは妹の忠告に従い瞼を閉じた。
エクレールは秘部に触れた瞬間、思わず腰を引いていた。謎の手に触れられた時と同じ刺激を自分の手が起こしたことに驚いてしまった。
「私の身体がやっぱり、変になってしまったのかしら」
ズボンとショーツを膝まで下ろして、まじまじと自分の女性器を見詰めた。これまで真剣に観察したことはないが、今までどこかが大きく変わったようには見えない。
ぷっくりと膨らんだ大陰唇に陰毛はない。ほとんど刺激を与えないで丁寧にケアしてきたため、黒ずんでおらず綺麗な赤みがかった肌色をしていた。
下腹部を這わせて恐る恐る右手を再び秘部に伸ばしていく。恥丘に生えた薄い陰毛が手首をくすぐる。
エクレールは自らの細い指で秘部の周りを捏ねくり回した。
「ん、んん、んっ……」
謎の手が通った軌跡を辿るように、陰裂の近くは避けて大陰唇と足の付根をゆっくりと手の平で押すように刺激していく。
じんわりと内側に快感が広がった。これなら怖くないし痛くもない。
レクレールはほとんど自慰の経験がなかった。元々性欲が薄いのも大きいが、何よりも性的欲求を満たす行為自体に虚しさを覚えるからだ。快楽よりも悲しみが強く湧き上がるせいでもあった。
「……あの時は、どうして虚しくなかったんだろう?」
自分の心変わりの理由を知りたくて、エクレールは昨日の謎の手に触れられた順番や愛撫の仕方をなぞっていた。
エクレールは中指を立てた右手を陰裂にあてがった。
「んくぅ……」
大陰唇に隠れていた小陰唇を分け入り膣口を探り当てた。
大きく深呼吸。それから謎の手は一気に奥まで指を突き入れた。それをこれから再現する。
モノを求めて小陰唇が花開くように左右に広がった。
「――ッッ!!!!」
意を決して中指を挿入した。
姿勢と指の長さの問題で、あの指と同じように奥まで届かなかったが、快感が背筋を駆け上っていき頭が真っ白になる。
腟内は狭くエクレールの指でも余り余裕はなかった。指の太さを再現しようと人差し指も入れようとしたが、恐怖が勝ってしまい入れることはできなかった。
「入ってるっ、私の腟内にっ……」
妹と暮らす部屋で何をやっているのだろうか。冷静な思考が半裸になって自慰に耽る自分を客観視してしまった。
エクレールは19歳。シフォンも16歳になる。二人共に立派な大人だ。どちらかが結婚すれば別々に暮らすことになるだろう。ただ人当たりの良い妹は分からないが、エクレール自身はそんな日は訪れないと思っている。
彼女の淡い初恋は気付いた時には叶わないものになっていた。
自覚した時には、相手は死んでいたからだ。
「ん、ん、んっ……ああ、あっ」
エクレールは悲しみを振り切るために快楽に身を委ねる。中指をうねるように動かした。
最近またあの人――この都市を守るために命を懸けた幼馴染のことをよく思い出すようになった原因は分かっていた。
アルベルトだ。不真面目で軽薄な男。あの人とはまるで似ていない、エクレールが最も嫌うタイプの異性だ。
しかし、あの日、上級パーティが捕獲した魔物が暴れ出した時、エクレールを庇ったアルベルトの背中は、かつて見た初恋の人と同じ背中だった。誰かのために命を懸ける“正義”だけがあった。
ふと下腹部が熱を帯びていた。中指による快楽とは別のもっと心の温まる不思議な熱だ。
「ああっ……」
エクレールは頬を真っ赤に染める。
気付いてしまった。ぼやけつつあるあの人ではなく、アルベルトの顔を思い浮かべて指を入れていた。
「どうして? どうしてアルベルトさんを?」
確かに命を救われた。誰にもあの人と同じ末路を辿ってもらいたくなくって、何かと気に掛けていた。でもそれは恋愛感情ではなくて、自分の後悔を押し付ける行為でしかなかった筈だ。
『エクレールさん、依頼達成の報告に来ました』
アルベルトの笑顔が浮かび上がる。報告内容を事細かく注意されるのを予想して引きつっていた。
ふと、他の受付窓口を確認すれば空いているところがあった。
どうして彼はエクレールのところに来たのだろう?
どうして彼は嫌がりながらも、面倒臭がりながらも、ずっとエクレールを受付嬢に選んでくれたのだろう?
腟内が精液を受け入れるために膨らんでいく。
女の部分がアルベルトを求めていた。
だめだ。そんなこと考えちゃだめだ。だめなのに、指を動かてしまう。
「あ、あんっ、だめっ、私……おかしくなっちゃうっ……こんな、こと、だめなのにぃっ」
中指を前後に動かして出し入れする。
ジュポジュポと淫らな水音が響く。
「ああ、ああぅ……」
自分で触れるのではなくて、他の誰かにされているような感覚が欲しくて、ダイニングのテーブルの角に立った。
最後の理性が下ろしていた下着とズボンを着直した。妹や来客も使う家具を自分の愛液で汚すなんて気持ち悪いだろう。
爪先立ちになって下腹部をテーブルの角に押し付ける。
「ごめんエクレお姉ちゃん、忘れ物しちゃった!」
勢い良く玄関の扉が開かれた。
シフォンが額の汗を拭いながら部屋に入ってくる。
「なにしてるのお姉ちゃん……?」
エクレールはテーブルに掛けていた手を下ろして額の汗を拭った。
「……部屋の模様替えでもしようかなって」
「もう大人しく寝るの!」
シフォンに引っ張られて、エクレールはベッドに押し込まれる。歩く時に少し内股になっていたが、どうやらそちらの異変には気付かれなかったようだ。
「はい、お昼になったら料理作りに来るなら、それまで大人しく寝ていること」
「うん、分かった。大人しくしてる」
「よろしい!」
エクレールはシフォンが出ていって、ようやく安堵の息をついた。
暴走していた心も落ち着いた。
謎の現象に襲われたせいで少し変になっただけだ。
そう、自分に言い聞かせて、エクレールは妹の忠告に従い瞼を閉じた。
1
■ X(旧Twitter)アカウント
・更新予定や作品のことを呟いたりしてますので、良ければフォローをお願い致します
・更新予定や作品のことを呟いたりしてますので、良ければフォローをお願い致します
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!


ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる