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最終話 桜花
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翌日、政宗様はやってきた柴田様に対し、丁重に縁談のお断りをした。
まさか柴田様もこの縁談を破談にされるとは思っていなかったらしく、中々引き下がろうとはしなかった。
それでも政宗様の決心は鉄のように固く、最後は柴田様が折れる他無かった。
佐久間様との縁談話が破談になり、ホッとしたのも束の間。政宗様は異性に好かれる習性をお持ちでした。
どこから話を嗅ぎつけるのか、次から次へと政宗様に対して縁談話が舞い込んでくる。
確かに、政宗様は魅力的だ。
実家は格式高い武家で、政宗様自身も他の男性には無い魅力が備わっている。毎回の縁談話に私は気が気ではなかったが、それら全てを政宗様は何故か頑なに拒まれた。
――そして、一年が過ぎ、私が政宗様の家で働きだして二回目の春が訪れた時。
事件が起きます。
慌てて私は政宗様の部屋へ駆けつけます。そこに、茶を飲みながらくつろいでいた政宗様がいました。
「ま、まま、政宗様! 大変です」
「加奈? そんなに慌ててどうした?」
「い、良いから来てください! 早くです!」
政宗様の腕を強引に引っ張り、部屋を出て中庭へと連れ出す。
そして、あの桜の木の下へと向かう。
「……これは!」
政宗様は桜の木を見て驚かれていた。
それは当然の反応だった。何しろ、咲かないと言われていた桜の木に花が咲いていたのだから。
たった一花ではあるが、確かに咲いていた。他にも幾らか蕾をつけている部分があるため、もう少し時期が経てば桜の木らしく見えてくるだろう。
「凄いですよね、政宗様! この木に桜が咲いたんです!」
「そうか……花が咲いたか」
桜の木を見上げて、しばし眺める政宗様。
ずっとこの桜を見続けてきた政宗様には、感慨深い思いがあられるのだろう。
そのご様子は悦に入っているように見えた。
そんな政宗様の側に、私は寄り添う。
何時までもこの幸せな時間を感じていたい。
この桜の木に春が訪れたように、私にも春が来ていた。
桜の花と書いて桜花。私も政宗様と一緒にその生涯を謳歌する。
まさか柴田様もこの縁談を破談にされるとは思っていなかったらしく、中々引き下がろうとはしなかった。
それでも政宗様の決心は鉄のように固く、最後は柴田様が折れる他無かった。
佐久間様との縁談話が破談になり、ホッとしたのも束の間。政宗様は異性に好かれる習性をお持ちでした。
どこから話を嗅ぎつけるのか、次から次へと政宗様に対して縁談話が舞い込んでくる。
確かに、政宗様は魅力的だ。
実家は格式高い武家で、政宗様自身も他の男性には無い魅力が備わっている。毎回の縁談話に私は気が気ではなかったが、それら全てを政宗様は何故か頑なに拒まれた。
――そして、一年が過ぎ、私が政宗様の家で働きだして二回目の春が訪れた時。
事件が起きます。
慌てて私は政宗様の部屋へ駆けつけます。そこに、茶を飲みながらくつろいでいた政宗様がいました。
「ま、まま、政宗様! 大変です」
「加奈? そんなに慌ててどうした?」
「い、良いから来てください! 早くです!」
政宗様の腕を強引に引っ張り、部屋を出て中庭へと連れ出す。
そして、あの桜の木の下へと向かう。
「……これは!」
政宗様は桜の木を見て驚かれていた。
それは当然の反応だった。何しろ、咲かないと言われていた桜の木に花が咲いていたのだから。
たった一花ではあるが、確かに咲いていた。他にも幾らか蕾をつけている部分があるため、もう少し時期が経てば桜の木らしく見えてくるだろう。
「凄いですよね、政宗様! この木に桜が咲いたんです!」
「そうか……花が咲いたか」
桜の木を見上げて、しばし眺める政宗様。
ずっとこの桜を見続けてきた政宗様には、感慨深い思いがあられるのだろう。
そのご様子は悦に入っているように見えた。
そんな政宗様の側に、私は寄り添う。
何時までもこの幸せな時間を感じていたい。
この桜の木に春が訪れたように、私にも春が来ていた。
桜の花と書いて桜花。私も政宗様と一緒にその生涯を謳歌する。
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