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柳川・立花山編
矜持に殉じた人生と幸福
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無害なビームなので単純に不意を突くことだけが目的だ。
「よし! 当たった!!」
私のはや○けんビームに、後ろで高橋様がガッツポーズをする(お武家様もガッツポーズするんだ~)。
不意を突かれて吹っ飛ばされた篠崎さんが、ゴロゴロと紅葉の上を転がり、木の根っこにぶつかって止まる。
「おいこら!! 待て!!!!」
起き上がった篠崎さんは尻尾と耳を逆立てて、土と枯葉まみれで叫んだ。
「出会い頭、一体なんなんだ!!!!!」
「私が一体なんなんだですよ! 勝手に記憶消してどっか行っちゃって!」
「だからって出会い頭に霊力飛ばしてこなくてもいいだろ!!! あっ!! 殿が教えましたね!?」
篠崎さんの視線が向けられ、高橋様は腕を組んで胸を張る。
「なに。円滑な交渉術を伝授しただけさ。『話をする前に逃げそうならば、軽く吹っ飛ばしてこちらの調子に巻き込んでいけ』とな」
「天正年間ネゴシエートを令和の小娘に教えないでください」
「では、私はこれで」
高橋様はチャッと二本指を立てて別れのポーズを決める。そして少し真面目な優しい眼差しで、紳士は私たちを交互に見つめた。
「楓殿、紫野、しっかり話をしなさい。すれ違ったまま終わる仲ほど悲しいものはないからね」
「高橋師匠……」
「師匠というほど教えてはいないさ。強いていうなら名人と呼んでくれ。また習いたければいつでも私は待っているよ」
「はい、名人!」
「待て。俺の知らないところでいつの間に妙な関係になってないか?」
篠崎さんのツッコミを無視した高橋様は颯爽と踵を返し、徐福さんと一緒にワゴンの方へと歩き去っていく。
「もー、我累了~」
「まあまあ、せっかくこっちまで出てきたから天ぷらでも食べて帰ろうではないか」
「ひら○? うーん、都市高でちゃっちゃと帰りたいんだけどな~」
私と篠崎さん二人が、山中に取り残された。エンジン音が遠くに去っていく。
ーー去っていく?
「待って、今ワゴン車去っていきませんでした? 置いていかれた? え?」
「……話し合いを済ませて、俺にちゃんと送らせようと思ったんだろう」
篠崎さんは諦めたように溜息をつき、白装束についた紅葉と土をパンパンと払う。そして、私を真正面から見据えた。
「楓。今のうちに去れ」
「よし! 当たった!!」
私のはや○けんビームに、後ろで高橋様がガッツポーズをする(お武家様もガッツポーズするんだ~)。
不意を突かれて吹っ飛ばされた篠崎さんが、ゴロゴロと紅葉の上を転がり、木の根っこにぶつかって止まる。
「おいこら!! 待て!!!!」
起き上がった篠崎さんは尻尾と耳を逆立てて、土と枯葉まみれで叫んだ。
「出会い頭、一体なんなんだ!!!!!」
「私が一体なんなんだですよ! 勝手に記憶消してどっか行っちゃって!」
「だからって出会い頭に霊力飛ばしてこなくてもいいだろ!!! あっ!! 殿が教えましたね!?」
篠崎さんの視線が向けられ、高橋様は腕を組んで胸を張る。
「なに。円滑な交渉術を伝授しただけさ。『話をする前に逃げそうならば、軽く吹っ飛ばしてこちらの調子に巻き込んでいけ』とな」
「天正年間ネゴシエートを令和の小娘に教えないでください」
「では、私はこれで」
高橋様はチャッと二本指を立てて別れのポーズを決める。そして少し真面目な優しい眼差しで、紳士は私たちを交互に見つめた。
「楓殿、紫野、しっかり話をしなさい。すれ違ったまま終わる仲ほど悲しいものはないからね」
「高橋師匠……」
「師匠というほど教えてはいないさ。強いていうなら名人と呼んでくれ。また習いたければいつでも私は待っているよ」
「はい、名人!」
「待て。俺の知らないところでいつの間に妙な関係になってないか?」
篠崎さんのツッコミを無視した高橋様は颯爽と踵を返し、徐福さんと一緒にワゴンの方へと歩き去っていく。
「もー、我累了~」
「まあまあ、せっかくこっちまで出てきたから天ぷらでも食べて帰ろうではないか」
「ひら○? うーん、都市高でちゃっちゃと帰りたいんだけどな~」
私と篠崎さん二人が、山中に取り残された。エンジン音が遠くに去っていく。
ーー去っていく?
「待って、今ワゴン車去っていきませんでした? 置いていかれた? え?」
「……話し合いを済ませて、俺にちゃんと送らせようと思ったんだろう」
篠崎さんは諦めたように溜息をつき、白装束についた紅葉と土をパンパンと払う。そして、私を真正面から見据えた。
「楓。今のうちに去れ」
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