109 / 145
柳川・立花山編
3
しおりを挟む
私は首を傾げて旬ちゃんをみた。
「抵抗……?」
「なんでもないわ」
旬ちゃんはいつもの綺麗な笑顔で、私に肩をすくめて見せた。そしてパッとスマホの画面をこちらに見せてきた。
「さ、うなぎはどこでいただくのか考えましょう! うなぎよ!」
「う、うなぎ……!」
私たちはそれから鰻屋さんをチョイスしながら、電車で他愛のない雑談を交わし続けた。
懐かしい思い出話や、柳川のどこに行きたいのか、といった当たり障りのない話。
ーー二人ともあえて、先日打ち明けた恋心の話を避けているような気がした。
私は旬ちゃんの横顔を見ながら思う。親友の旬ちゃんには、先に打ち明けておきたいかもしれない。
好きな人と今度、じっくり話をするということを。ーー私は、篠崎さんに告白したいと思ってることを。
話に盛り上がっていると楽しい電車の旅はすぐに終わり、私たちは柳川駅に降り立った。
晴れた柳川は格好の観光日和といった風情だ。
慣れた様子で旬ちゃんが私を先導してくれた。
「川下りはこっちよ。三柱神社の前から船が出てるの」
「う、ん……」
私たちは駅から少し離れた川下り乗り場へと足を進める。川下り乗り場は大きな神社のすぐ側に位置し、水路に架けられた立派な太鼓橋を渡った場所にあった。
橋を踏み越えようとした瞬間、ビリ、と静電気が体を走る。
「……え?」
「楓ちゃん、どうしたの?」
「あ、なんか…なんか電車で痺れちゃったのかな。変な感じがして」
旬ちゃんは髪を靡かせ、じっと私を見つめて微笑む。
「この橋の欄干、とても古いものを移築しているのよ。……昔、城で使われていたものなんですって」
「へえ……」
「きっと魂が喜んでいるのよ、この土地にもう一度来れたことに」
「ど、どういう……?」
「ほら行きましょう。川下りのおじさまが私たちに手を振ってくれているわ」
旬ちゃんはにこやかに私の手をとり、乗り場まで足早に連れて行く。
私はぼうっと、流されるように彼女に導かれるままついていった。
「抵抗……?」
「なんでもないわ」
旬ちゃんはいつもの綺麗な笑顔で、私に肩をすくめて見せた。そしてパッとスマホの画面をこちらに見せてきた。
「さ、うなぎはどこでいただくのか考えましょう! うなぎよ!」
「う、うなぎ……!」
私たちはそれから鰻屋さんをチョイスしながら、電車で他愛のない雑談を交わし続けた。
懐かしい思い出話や、柳川のどこに行きたいのか、といった当たり障りのない話。
ーー二人ともあえて、先日打ち明けた恋心の話を避けているような気がした。
私は旬ちゃんの横顔を見ながら思う。親友の旬ちゃんには、先に打ち明けておきたいかもしれない。
好きな人と今度、じっくり話をするということを。ーー私は、篠崎さんに告白したいと思ってることを。
話に盛り上がっていると楽しい電車の旅はすぐに終わり、私たちは柳川駅に降り立った。
晴れた柳川は格好の観光日和といった風情だ。
慣れた様子で旬ちゃんが私を先導してくれた。
「川下りはこっちよ。三柱神社の前から船が出てるの」
「う、ん……」
私たちは駅から少し離れた川下り乗り場へと足を進める。川下り乗り場は大きな神社のすぐ側に位置し、水路に架けられた立派な太鼓橋を渡った場所にあった。
橋を踏み越えようとした瞬間、ビリ、と静電気が体を走る。
「……え?」
「楓ちゃん、どうしたの?」
「あ、なんか…なんか電車で痺れちゃったのかな。変な感じがして」
旬ちゃんは髪を靡かせ、じっと私を見つめて微笑む。
「この橋の欄干、とても古いものを移築しているのよ。……昔、城で使われていたものなんですって」
「へえ……」
「きっと魂が喜んでいるのよ、この土地にもう一度来れたことに」
「ど、どういう……?」
「ほら行きましょう。川下りのおじさまが私たちに手を振ってくれているわ」
旬ちゃんはにこやかに私の手をとり、乗り場まで足早に連れて行く。
私はぼうっと、流されるように彼女に導かれるままついていった。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる