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柳川・立花山編
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私たちが乗り込んだ電車はちょうど柳川観光列車「水都」だった。一両ごとに艶やかな装飾が描かれている電車に乗りながら、私は慣れた様子の旬ちゃんに尋ねる。
「旬ちゃん。これ、特急料金とか予約とか、観光列車料金っていらないの?」
「大丈夫よ、この電車に乗れるなんてラッキーね。まるで柳川に歓迎されてるみたい」
旬ちゃんはにこりと笑う。
東区育ちで大学も就職も福岡市内だった私には、私鉄天神大牟田線に乗るのはそれだけでとても新鮮だ。
市街地をぐんぐん進んでいく電車からの風景に目を奪われる。太宰府に乗り換える二日市駅より南は、私にとっては未知の場所だ。
柳川は私鉄天神大牟田線を特急で南下して、45分の場所に位置した城下町。
かつて立花家というお殿様が治めた場所で、今でもお殿様ゆかりの建物が数多く残る綺麗な場所だそうだ。
「そういえば、私が住んでる香椎から見える山、あれって立花山って言うよね。あれと何か関係あるの?」
「…………」
私の質問に、旬ちゃんは一瞬虚を突かれたような顔をする。面食らったような、狐につままれたような。
「旬ちゃん?」
「相変わらず鋭いわね楓ちゃん」
「い、いやあ……」
「立花山にいた立花って家のお殿様が、色々あって柳川に移動したのよ」
「へー、詳しいんだね……」
私は駅でもらった観光パンフレットに目を落とす。
あやかしの移住就職のお仕事をしているのに福岡のことは知りません!なんてちょっと恥ずかしい。
「私も観光案内を見て興味はあったけれど、なんとなく実際に行ったことなかったんだよね。だから誘ってくれて嬉しいよ」
「そう。なんとなくってあるわよね」
電車に揺られながら、旬ちゃんは柳川について説明してくれた。
「柳川は今観光に力を入れているの。数年前に駅も改修されて、公共交通機関での観光がしやすくなってるのよ。外国人観光客の人も多いし、駅のカフェも可愛いし、お土産物屋さんも増えたし」
「詳しいんだね、旬ちゃん」
「昔住んでたから、今もたまに行くのよ」
「へえ。私は全然知らなかった……天神大牟田線を下ること、あんまりなかったから」
窓の外を眺めると、ちょうど先日行った二日市の駅を通り過ぎる。
ここから15分ほどで久留米。さらに15分で、柳川だ。
「そういえば、どうして私行ったことなかったんだろう。福岡に住んでるのだから、行ったことがあってもおかしくないのに」
「……きっと、魂が抵抗してたのかもしれないわ」
窓外を流れる田園風景を眺めながら呟くと、旬ちゃんがぽつりと口にした。
「旬ちゃん。これ、特急料金とか予約とか、観光列車料金っていらないの?」
「大丈夫よ、この電車に乗れるなんてラッキーね。まるで柳川に歓迎されてるみたい」
旬ちゃんはにこりと笑う。
東区育ちで大学も就職も福岡市内だった私には、私鉄天神大牟田線に乗るのはそれだけでとても新鮮だ。
市街地をぐんぐん進んでいく電車からの風景に目を奪われる。太宰府に乗り換える二日市駅より南は、私にとっては未知の場所だ。
柳川は私鉄天神大牟田線を特急で南下して、45分の場所に位置した城下町。
かつて立花家というお殿様が治めた場所で、今でもお殿様ゆかりの建物が数多く残る綺麗な場所だそうだ。
「そういえば、私が住んでる香椎から見える山、あれって立花山って言うよね。あれと何か関係あるの?」
「…………」
私の質問に、旬ちゃんは一瞬虚を突かれたような顔をする。面食らったような、狐につままれたような。
「旬ちゃん?」
「相変わらず鋭いわね楓ちゃん」
「い、いやあ……」
「立花山にいた立花って家のお殿様が、色々あって柳川に移動したのよ」
「へー、詳しいんだね……」
私は駅でもらった観光パンフレットに目を落とす。
あやかしの移住就職のお仕事をしているのに福岡のことは知りません!なんてちょっと恥ずかしい。
「私も観光案内を見て興味はあったけれど、なんとなく実際に行ったことなかったんだよね。だから誘ってくれて嬉しいよ」
「そう。なんとなくってあるわよね」
電車に揺られながら、旬ちゃんは柳川について説明してくれた。
「柳川は今観光に力を入れているの。数年前に駅も改修されて、公共交通機関での観光がしやすくなってるのよ。外国人観光客の人も多いし、駅のカフェも可愛いし、お土産物屋さんも増えたし」
「詳しいんだね、旬ちゃん」
「昔住んでたから、今もたまに行くのよ」
「へえ。私は全然知らなかった……天神大牟田線を下ること、あんまりなかったから」
窓の外を眺めると、ちょうど先日行った二日市の駅を通り過ぎる。
ここから15分ほどで久留米。さらに15分で、柳川だ。
「そういえば、どうして私行ったことなかったんだろう。福岡に住んでるのだから、行ったことがあってもおかしくないのに」
「……きっと、魂が抵抗してたのかもしれないわ」
窓外を流れる田園風景を眺めながら呟くと、旬ちゃんがぽつりと口にした。
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