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柳川・立花山編
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「………………にゃあ……」
私の叫び声にびっくりしたのか、黒い毛並みがぶわわ、と立っている。
「ごご、ご、ごめん!!! びっくりさせちゃったね。考え事しててちょっとぼーっとしててびっくりしちゃった」
「……そうか。驚かせて俺もすまない」
夜さんは猫の姿で、私のそばにぴたりと寄り添って丸くなる。霊力充電中の夜さんの頭に手を伸ばすと、耳がぺたんとヒコーキになる。可愛い。
悶々とした気持ちを猫もふ欲にすり替えようとするものの……やはり落ち着かない。
私はゴロゴロと喉を鳴らす夜さんを見下ろした。
「夜さん、週末はどうするの?」
「元の主人の屋敷に帰る。草むしりをして綺麗にしてくる」
「あ。そういえば、元のご主人のお屋敷を買ったんだよね」
なんと、夜さんは元のご主人がずっと住んでいた土地を購入していた。
雌猫又さんたちを助けた中洲の夜、彼は猫又さんの有力者に好意を持たれ、土地を買うための後ろ盾や保証人を得られたらしい。
現代ではかなり交通の便が悪い山の上の土地なので安かったのであっさりと手に入り、夜さんは嬉しそうだ。
「そうだよね、夜さんは夜さんで忙しいよね……」
「掃除が済んだら楓殿も招待させて欲しい。茶を立てよう」
「そういえば元々お武家さんの猫さんなんだよね、夜さん。すごいなあ……」
「茶と武芸なら仕込まれた。首級の清め方もわかる」
「いい、それはいい、いい」
「そうか」
夜さんを撫で撫でしながら私は物思いに耽る。
一人で週末を過ごしたくない。じゃあ誰と会おうか?実家に帰ろうか?
でも実家で結婚だとか将来の話題をされたら凹んじゃうかもしれない。
そんな時、狙い澄ましたようにスマホが音をたてる。
片手を伸ばして手に取れば、メッセージの送信者に旬ちゃんの名前があった。
「旬ちゃん!」
私は浮かれてタップする。
——————————————
土筆旬:今電話していい?
もちろんだよ!:Kaede
——————————————
既読になってすぐに、電話がかかってくる。電話の向こうから旬ちゃんの柔らかな笑い声が聞こえた。
「楓ちゃん、取るの早すぎ」
「えへへ……ところで春ちゃんどうしたの?」
「ねえ、突然だけど週末空いてる? 一緒に柳川観光しない? 御花のチケットをもらったのよ」
「柳川!」
渡りに流し船とはこのことだ。
柳川は私鉄で天神から45分ほど降った場所に位置する、筑後屈指の風光明媚な城下町だ。町に張り巡らされた元お堀の水路水路と、城下町ならではの町の作りが魅力で、最近観光キャンペーンが盛んに行われているので気になっていた場所だ。
職場のある天神地区だとどうしても、篠崎さんと一緒に過ごす日常を思い出してしまう。そんな状態で柳川へのお誘いは嬉しい。
「いつもタイミングいいよね、旬ちゃん」
「そうかしら? だといいのだけど」
電話越しにも心地よい旬ちゃんの声。前の会社に勤めていた間はなかなか会えなかったからお誘いが本当に嬉しい。
「じゃあ、行くってことでいいかしら?」
「うん、いくいく!」
旬ちゃんの言葉に食い気味に返事する。
「じゃあ明日10時、天神駅の大画面前で待ち合わせね」
「了解! お腹空かせていくね」
「もう、楓ちゃんってば」
くすくすと旬ちゃんは笑う。
「楓ちゃんとのデート、楽しみにしてるわ。……美味しいもの、いっぱい食べましょうね」
私の叫び声にびっくりしたのか、黒い毛並みがぶわわ、と立っている。
「ごご、ご、ごめん!!! びっくりさせちゃったね。考え事しててちょっとぼーっとしててびっくりしちゃった」
「……そうか。驚かせて俺もすまない」
夜さんは猫の姿で、私のそばにぴたりと寄り添って丸くなる。霊力充電中の夜さんの頭に手を伸ばすと、耳がぺたんとヒコーキになる。可愛い。
悶々とした気持ちを猫もふ欲にすり替えようとするものの……やはり落ち着かない。
私はゴロゴロと喉を鳴らす夜さんを見下ろした。
「夜さん、週末はどうするの?」
「元の主人の屋敷に帰る。草むしりをして綺麗にしてくる」
「あ。そういえば、元のご主人のお屋敷を買ったんだよね」
なんと、夜さんは元のご主人がずっと住んでいた土地を購入していた。
雌猫又さんたちを助けた中洲の夜、彼は猫又さんの有力者に好意を持たれ、土地を買うための後ろ盾や保証人を得られたらしい。
現代ではかなり交通の便が悪い山の上の土地なので安かったのであっさりと手に入り、夜さんは嬉しそうだ。
「そうだよね、夜さんは夜さんで忙しいよね……」
「掃除が済んだら楓殿も招待させて欲しい。茶を立てよう」
「そういえば元々お武家さんの猫さんなんだよね、夜さん。すごいなあ……」
「茶と武芸なら仕込まれた。首級の清め方もわかる」
「いい、それはいい、いい」
「そうか」
夜さんを撫で撫でしながら私は物思いに耽る。
一人で週末を過ごしたくない。じゃあ誰と会おうか?実家に帰ろうか?
でも実家で結婚だとか将来の話題をされたら凹んじゃうかもしれない。
そんな時、狙い澄ましたようにスマホが音をたてる。
片手を伸ばして手に取れば、メッセージの送信者に旬ちゃんの名前があった。
「旬ちゃん!」
私は浮かれてタップする。
——————————————
土筆旬:今電話していい?
もちろんだよ!:Kaede
——————————————
既読になってすぐに、電話がかかってくる。電話の向こうから旬ちゃんの柔らかな笑い声が聞こえた。
「楓ちゃん、取るの早すぎ」
「えへへ……ところで春ちゃんどうしたの?」
「ねえ、突然だけど週末空いてる? 一緒に柳川観光しない? 御花のチケットをもらったのよ」
「柳川!」
渡りに流し船とはこのことだ。
柳川は私鉄で天神から45分ほど降った場所に位置する、筑後屈指の風光明媚な城下町だ。町に張り巡らされた元お堀の水路水路と、城下町ならではの町の作りが魅力で、最近観光キャンペーンが盛んに行われているので気になっていた場所だ。
職場のある天神地区だとどうしても、篠崎さんと一緒に過ごす日常を思い出してしまう。そんな状態で柳川へのお誘いは嬉しい。
「いつもタイミングいいよね、旬ちゃん」
「そうかしら? だといいのだけど」
電話越しにも心地よい旬ちゃんの声。前の会社に勤めていた間はなかなか会えなかったからお誘いが本当に嬉しい。
「じゃあ、行くってことでいいかしら?」
「うん、いくいく!」
旬ちゃんの言葉に食い気味に返事する。
「じゃあ明日10時、天神駅の大画面前で待ち合わせね」
「了解! お腹空かせていくね」
「もう、楓ちゃんってば」
くすくすと旬ちゃんは笑う。
「楓ちゃんとのデート、楽しみにしてるわ。……美味しいもの、いっぱい食べましょうね」
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