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太宰府・二日市編
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「いいか。この仕事を続ける限り、その方の名前は易々と口にするもんじゃない」
「も、もご」
「少なくとも現代の福岡において最も勢力があり、強力な方の一人だ」
口を塞がれた手を外され、私はぷは、と息をする。
「そ、そんな凄い方なんですね……」
「霊力がある身で迂闊に名前一つ呟こうものなら、既にそれが呪になるような人だからな。弊社では万全を期すためにプロフェッサーMと呼ぶことにしている」
「完全に元の名前が全くわからないじゃないですか、それ」
篠崎さんの説明によると、プロフェッサーM……彼の霊力の影響で、太宰府では篠崎さんが私に張っている『普段あやかしが見えにくくなる』フィルターが剥がれてしまうらしい。
「あそこは『天神さまのお膝元』の原液みたいなところだからな」
「原液って、また」
「天神じゃあ、天神福岡駅が天神地区の中心だろ?」
「はい」
天神地区。福岡随一の繁華街である此処は、元々は福岡城から連なる城下町の一角だった。
明治維新後に「水鏡天満宮」あたりを中心に、官庁や炭鉱経営者の邸宅や学校、百貨店が次々と建てられて発展。更に私鉄の「福岡駅」が開業し、一気に「天神地区」という一つの繁華街が形成されていったのだという。
「実はな。『天神さまのお膝元』ーー太宰府から水鏡天満宮まで、霊力的には繋がっているんだ」
「本当ですか!?」
「一つの街を形成する上で、意図的に霊力の流れを作るのはよくある話だな。江戸の作り方も風水に則ってるだろ」
「へー」
「……だからまあ……路線がたまーに異界の駅に繋がることもあるんだけどな」
篠崎さんが遠い目をする。同じことそういえば、初対面の時も言ってたな。
ーーー
ともあれ、そんなこんなで私は単身太宰府に訪れていた。
私は篠崎さんに言われた通り、太宰府天満宮参道沿いの古風な喫茶店に入る。大正レトロな制服に身を包んだ店員さんに案内され、2階のテーブル席で暫く待っていると、スッキリとしたスーツ姿の男性が2名やってきた。
「も、もご」
「少なくとも現代の福岡において最も勢力があり、強力な方の一人だ」
口を塞がれた手を外され、私はぷは、と息をする。
「そ、そんな凄い方なんですね……」
「霊力がある身で迂闊に名前一つ呟こうものなら、既にそれが呪になるような人だからな。弊社では万全を期すためにプロフェッサーMと呼ぶことにしている」
「完全に元の名前が全くわからないじゃないですか、それ」
篠崎さんの説明によると、プロフェッサーM……彼の霊力の影響で、太宰府では篠崎さんが私に張っている『普段あやかしが見えにくくなる』フィルターが剥がれてしまうらしい。
「あそこは『天神さまのお膝元』の原液みたいなところだからな」
「原液って、また」
「天神じゃあ、天神福岡駅が天神地区の中心だろ?」
「はい」
天神地区。福岡随一の繁華街である此処は、元々は福岡城から連なる城下町の一角だった。
明治維新後に「水鏡天満宮」あたりを中心に、官庁や炭鉱経営者の邸宅や学校、百貨店が次々と建てられて発展。更に私鉄の「福岡駅」が開業し、一気に「天神地区」という一つの繁華街が形成されていったのだという。
「実はな。『天神さまのお膝元』ーー太宰府から水鏡天満宮まで、霊力的には繋がっているんだ」
「本当ですか!?」
「一つの街を形成する上で、意図的に霊力の流れを作るのはよくある話だな。江戸の作り方も風水に則ってるだろ」
「へー」
「……だからまあ……路線がたまーに異界の駅に繋がることもあるんだけどな」
篠崎さんが遠い目をする。同じことそういえば、初対面の時も言ってたな。
ーーー
ともあれ、そんなこんなで私は単身太宰府に訪れていた。
私は篠崎さんに言われた通り、太宰府天満宮参道沿いの古風な喫茶店に入る。大正レトロな制服に身を包んだ店員さんに案内され、2階のテーブル席で暫く待っていると、スッキリとしたスーツ姿の男性が2名やってきた。
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