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 夜。
 レイナード殿下がやってきたのは、夕食を終えた後だった。
 月の綺麗な夜だった。
 彼はいつもの軍服ではなく、すっきりとした私服のシャツを纏っていた。
 二人で応接間のソファに向かい合って座る。
 魔術灯明が柔らかく部屋全体を照らす。
 テーブルにお茶が用意されたところで、レイナード殿下が口を開いた。

「昼間は驚かせてしまいましたね」
「いえ。襲撃者の件はどうなりましたか……?」
「逆恨みの者の犯行です。今回はハイゼン王国とは無関係の、僕が以前断罪した悪徳商人の手のもので……僕の婚約者が城にいると聞きつけて、業者に紛れて入ってきたようです」

 そして、私の心配を見越したように付け加える。

「あなたが悪いのではありませんし、あなたの出自はバレていません。しっかりと尋問しましたが、あなたの出自を知っている者はいませんでした」
「……そうです、か……」

 尋問、と言う恐ろしい言葉を、彼は当たり前のように言う。
 彼は本当に『悪魔』と呼ばれているほどに、苛烈な魔術騎士なのだ。

「契約結婚でよかった、と思うでしょう?」
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