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あの日の事を思い出したのだろう。
「ほどなくしてあなたを見つけました。痩せて真っ青な顔色のあなたにまずは驚きました。体調が悪いのだろう、強引に言ってでも医務室に連れて行けるようにしなければと思いました。――事件が起きたのは、その直後でした」
私は申し訳なさのあまり顔を下に向ける。合わせる顔がない。
けれどレイナード殿下は、優しく私の髪を撫でてくれた。
「あなたが強い魔力を持っていることは、ビリーだった頃に気付いていましたから。だからあなたがメイドキャップを脱いだところですぐに察したんです。リンドベルク公爵家の意地の悪い顔をした人々が、あなたが躍り出たところでにやにやしながら逃げていましたしね。……あいつらを仕留めるまえにまず、僕はあなたを止めた」
「そして……髪を切ってくださったのですね」
「今もあの嫌な感触は残っています。本当に申し訳ありませんでした」
レイナード殿下はタイピンを取り出す。
例のタイピンだ。
細長いケースの中に、芸術的な編み込みが成された黒髪が収められている。
まるで、あの日時を止めたかのように。
「ほどなくしてあなたを見つけました。痩せて真っ青な顔色のあなたにまずは驚きました。体調が悪いのだろう、強引に言ってでも医務室に連れて行けるようにしなければと思いました。――事件が起きたのは、その直後でした」
私は申し訳なさのあまり顔を下に向ける。合わせる顔がない。
けれどレイナード殿下は、優しく私の髪を撫でてくれた。
「あなたが強い魔力を持っていることは、ビリーだった頃に気付いていましたから。だからあなたがメイドキャップを脱いだところですぐに察したんです。リンドベルク公爵家の意地の悪い顔をした人々が、あなたが躍り出たところでにやにやしながら逃げていましたしね。……あいつらを仕留めるまえにまず、僕はあなたを止めた」
「そして……髪を切ってくださったのですね」
「今もあの嫌な感触は残っています。本当に申し訳ありませんでした」
レイナード殿下はタイピンを取り出す。
例のタイピンだ。
細長いケースの中に、芸術的な編み込みが成された黒髪が収められている。
まるで、あの日時を止めたかのように。
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