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 顔を覆わず、ただ零れる涙をそのままに、私は目をしっかり開いて、眩しい青年となったビリー――レイナード殿下を見上げた。

「泣かないで、アスリア様」

 レイナード殿下は私の涙を拭い、あの日と同じ口調で私に言う。

「僕は大きくなったんです。……アスリア様をあの冷たい家から救って――アスリア様を花嫁に迎えるために」

 私は顔を覆った。
 立派に育ってくれた嬉しさと、驚きで震えて、声が出ない。
 殿下は私を横抱きにした。そして軽々と運び、ソファに座らせてくれた。
 隣に座り、肩を抱き、号泣する私の背を落ち着くまでずっと撫でてくれた。

「ずっと、気掛かりだったの……あなたを、さいごまで、見届けられ、なかった、から」
「大丈夫です。アスリア様のおかげで、僕は母国に帰る事ができました。だからこうしてあなたを守ることができたんです」
 
 ――10年。
 私が氷漬けになって10年という長い時間が経っていたとすれば、全ての辻褄が合った。
 レイナード殿下を見たときから感じていた既視感。
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