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 私が眠っていたあいだに、母国ハイゼン王国との多少の小競り合いはあったらしい。
 詳しく聞こうと思っても、周りは「今はあまり難しい事は考えない方がいいですよ」とあいまいにぼかす。
 私を匿ったことがばれて、レイナード殿下にご迷惑をおかけしないか。
 それが心配だったけれど、みなは特に気にしていないようだった。

 突然降って湧いたような『公爵令嬢』の存在が許されるのも、そういう社会情勢あってのことだった。敵国出身の私に、『王弟殿下の妃付き』として与えられた侍女やメイドといった人々はとても優しかった。

 朝目を覚ますと、バルコニーからは美しく広がる空と、どこまでも続く平野が見渡せる。

「綺麗……」

 庭を見下ろせる城の一望に、私は毎朝新鮮な感動を覚えていた。
 母国ハイゼン王国は谷間にある小さな領地で、その上私は森と山に囲まれた別邸に閉じ込められていた。あるものと言えばゼーディス王国から国境を超えて続く細い街道だけで、私という魔力しか取り柄のない末娘が外に見つからないようにするにはぴったりの場所だった。
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