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「薬湯です。体を温めて、全てを穏やかに整える作用があります。……ゆっくり、少しずつ飲んでください」
「はい……」

 お茶を全部飲み終わったところで、彼は私に「まずは黙って聞いてください」と言った。

「ご心配だと思うので、まず先にお伝えしましょう。結婚式は一滴の血も流されることなく、無事に終わりました。あなたの事は誰も覚えていません。あなたがしようとした事も、僕の身内以外は誰も知りません。この王宮で誰に挨拶をしても、あなたがあの日の侍女とは誰も思いません。髪も僕の魔術で瑠璃色に染めさせていただきました。……黒髪も綺麗だったのに、申し訳ありません」
「……誰も犠牲者は出なかったのですね……」

 私は泣きたい気持ちになった。
 幸せいっぱいだった王太子夫妻も、可愛らしいあの子どもも、優しい人たちも傷つかなかった。そしてはっとする。すぐに実家と母国の思惑を伝えなければ危険だ。
 私が口を開こうとすると、彼は唇に指を立てて黙らせた。

「ハイゼン王国の策謀の事でしょう? 存じています。こちらも、あなたが眠っているうちに解決いたしました」
「解決……ですか?」
「ええ。解決しました」
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