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「落ち着いてください。慌てて動くと危ないです」
「申し訳ございません、私は……私は……!」

 体が震える。腕がガクンと揺れて、私は王弟殿下にしがみ付くかたちになった。
 彼はしっかりと私を支え、床に座り込む。

「お離しください殿下、私はとてつもない罪を犯そうとしてしまいました」
「大丈夫です。もうあなたは誰の命令を聞く必要もないのです。落ち着いてください」
「あの、私は……っ!」
「落ち着いて」

 彼は低く囁く。ぎゅっときつく私を腕の中に閉じ込めると、とんとん、と一定のリズムで背中を叩く。

「大丈夫。落ち着いて。……何も怖いことはありません。全ては終わりました。あなたの敵は、もうこの世界にはいません」
「……あ、あの……」
「深呼吸しましょう。いいですか? 僕の深呼吸に合わせて。はい。息を吸って……吐いて……」

 彼の呼吸に合わせて息を吸ったり吐いたりしていると、混乱した気持ちが収まってきた。腕の中で子どものように、身を委ね、息を整える。
 彼は私の頭を撫でる。いつの間に用意したのか、侍女の女性がお茶を入れてくれていた。
 花の甘い匂いが漂う。
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