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 ――自分が粗末にされるのは慣れている……でも、罪のない人たちを、だまし討ちでなんて。

 私は何をやっているのか。私は、あの時はビリーを守るために逆らえたのに。
 ビリーは別れ際私に言った。私を助けてくれると。
 あの時の私は確かに、感謝されるだけのことをできる存在だったのだ。

 それが今はどうだ。人を殺そうとしているなんて。
 今の私は――あのとき助けたビリーに、とても顔向けができない。

 王太子夫妻の前に立ち尽くしたまま、私は動けなくなった。
 爆死しなければ、魔力を暴走させなければ。だってそれが私の最後の役割だから。
 私はもう何も考えられなかった。髪をまとめたメイドキャップを脱ぐ。
 ふわっと長いお下げ髪が飛び出すのを感じた。目を閉じる。

 周りに迷惑をかけずに死ぬ方法が、たった一つだけあった。
 それは魔力を体の中で巡らせて、己の体の中だけで暴走を起こすこと。
 見た目には心臓を悪くして死んだようにしか見えないはずだ。
 私は子どもを死なせたくない。幸せな場を、悲しい惨劇に変えたくない。
 これは人生で二度目の、父と兄への反発だった。

 ――これで、終わりね。
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