死ぬために向かった隣国で一途な王弟に溺愛されています

まえばる蒔乃

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 中では王太子夫妻が誓いの言葉を交わしているらしい。
 これから誓いを済ませた二人が教会から現れ、来賓が待つ庭で披露宴が行われる流れだ。
 庭の花に負けないくらい着飾った来賓の王侯貴族たちが、今か今かと二人の登場を待ち望んでいる。
 私はリンドベルク公爵家代表として列席する兄夫婦と離れた場所で、侍女の姿で侍っている。
 服はこの国の侍女服を用意された。
 私の顔を知る貴族なんて一人もいない。
 披露宴会場に入る時に厳しい身体検査を受けたけれど、私は危険物を一切身につけていない。

 肉体には目で見えない秘術の刻印が刻まれている。
 魔力を発動させれば瞬く間に爆発する仕組みだ。
 粉塵爆発のようなものだと、父と兄は裸の私に印を刻みながら冷酷に告げた。
 リンドベルク公爵家門外不出の秘術なので、事前には誰も気づけないし、私が死んでしまえば証拠も消える。
 傍にいる侍女たちが小さな声で囁き合う。

「本当に嬉しいわね。やっと、お二人が幸せになれるのね」
「休戦協定が結ばれて良かったわ。お妃様ももう二十歳を超えていらっしゃるもの。ずっと一途に待ち続けて……憧れる夫婦だわ」
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