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 半月しか時間がないからと、私は急ピッチで暗殺のために必要な最低限の知識をたたき込まれた。
 礼儀作法だけは問題なかった。
 父と兄に失礼があってはならないから、幼児の頃から足が腫れるまで叩かれて、カーテシーから微笑み方まで仕込まれていたから。

 世間知らずだった私は、その時初めて母国が隣国と休戦状態なのだと知った。
 父は出世のため、私という生きた爆弾を、隣国の晴れがましい場に投入したいのだ。
 まるで自分の事ではないように支度をさせられ、気付けば私は隣国行きの馬車に乗っていた。
 


 隣国の空は広かった。
 義姉の侍女として向かった私は、馬車から降りて空の広さに驚いた。

 ――きれい。なんて平和なのだろう。
 ――こんな国で、私は……

 私は数日後、爆死する。
 この美しい国を、王太子殿下の結婚に湧く人々の笑顔を、血で染めるのだ。
 清潔な白い石畳に散る血を想像し、足が震えた。

 それから物思いにふける間もなく、結婚式に向けた準備に奔走し、あっという間に数日が経過。ついに結婚式当日になった。

 よく晴れた青空の元、白い教会を外で見守る。
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