死ぬ結末しかない推しの悪役令嬢に憑依した私

ヒロインに出会うまで

10 魔術師団長

部屋から出るな、と言われました。新学期2日目から休むとか聞いてないです。


「サラ、暇です。本とか…」


「ダメです！  安静にしてないとお嬢様はいつ倒れられるか分からないですから！」


クローディア様は病弱設定じゃなかったはずなんですけど…。私が憑依したことでバグが起こったのでしょうか。でも私、もう元気いっぱいなんですよね。元気なのにずっとベッドは辛いです。


「クローディア様、お客さまです。」


長年、公爵家に使えてくれている執事のセバスチャンです。執事と言えばセバスチャンですよね。


「お客さまですか？ あ、着替えないと…」


「そのままでいいですよ。」


あの人は…攻略対象の魔術師団長！？
史上最年少で魔術師団長になったネイル・サタスウェイト卿…。この方は孤児院出身でご両親はいません。どこかで生きている可能性はありますが。
ちなみにネイル様はヤンデレ担当です。


「このような格好で申し訳ございません。あの、私にどんな御用が…」


サラは静かに部屋から退出し、お茶の準備に向かいました。


「あれ、聞いてないですか？  呪いを解くように言われたんですが…。」


「へ…？  ま、まさかあなたが！？」


そうです、とニコッと笑うネイル様。確かに呪いを解ける人が1人しかいないなら魔術師のトップであるネイル様しかいないのかもしれませんが…。

おじいちゃん先生は何者なんですか！？


「そうですよ。あのとても言いずらいのですが…」


なんでしょうか？  コテンと首を傾げると…


「胸が見えてます。わざとですか？」



「ひゃっ！？」


私は急いで胸を隠します。クローディア様はとてもセクシーなネグリジェを着ていらっしゃるんです。それに胸が大きいのでよくこのようなことが起こります。

新しい物を買わなくては…。
サラがこの場に居たら発狂していました。シオン様は…顔を真っ赤にされていますね。ごめんなさい、見せるつもりはありませんでした。


「顔を真っ赤にして可愛らしい…。ウブな反応とは反対に大きなものをつけてるな？」


言葉遣いが変わってます、ネイル様。この方実を言うと魔王様です。本当は俺様キャラなんですけどそれを隠すために敬語キャラを演じているそうです。素が出てますよ、魔王様。


「んっ、な、何して…！」


ネイル様は急に私の胸を揉み始めました。誰ですかこんな変態キャラを作ったのは！ …私でした。


「離れろ。」


シオン様がネイル様に剣をつきつけました。ネイル様は両手を上にあげて、


「呪いは解けましたよ。そんな恐ろしい顔をしないでください、マルティネス殿？」


シオン様はチッと小さく舌打ちします。そんなことをして大丈夫なのですか…。