死ぬ結末しかない推しの悪役令嬢に憑依した私

海瀬

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ヒロインに出会うまで

9 妹(リカルドside)

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「ディア!!」


俺は目の前で意識を失った妹のクローディアを抱きとめた。いつも俺が嫌味を言うと嫌味で返してくる妹だったが今日は何も反論しなかった。


「クローディア様! …リカルド様、俺が部屋まで運びますのでクローディア様を」


「いい。俺が運ぶ。」


俺の大切な妹をよくわからん男に触らせる訳にはいかない。


そうだ、大切な妹だ。俺はいつも素直になれず、ディアに嫌味を言ってしまう。ディアが孤児たちに暴力を振るうはずがない。むしろ昔からよく平民街に遊びに行っては平民の友達と追いかけっこなどで遊んでいた。…ところを見ていた。


昔、1度喧嘩してから意地を張った俺はディアを避けるようになった。決して嫌いになったと言う訳では無い。むしろ可愛くて目に入れても痛くないほどだ。どちらかと言うと俺は拗ねてしまったのだ。今更後悔してももう遅いが。


喧嘩というのは些細なものだ。ディアの好きなマカロンを俺が食べてしまったのだ。謝ったが、ディアは許してくれなかった。俺も俺で、後から買いに行き、それを持って謝ろうとしたが、会うことすら拒否されたのだ。今までで1番のショックな事件だった。


こんな些細なことから俺たちの仲は悪化していった。俺はずっとディアのことを思っているが。


「行かないで。1人はもう嫌…。」


ディアの寝言のようだ。俺が運んだ後帰ったばかりの先生を呼び戻し、ディアの状態を聞いた。呪い、か。俺はそんなものに惑わされてはいないが、ディアの目にはどう映ったのだろうか。噂を信じていると、そう思ったかもしれない。


それに、この噂のせいでディアは相当傷ついていたようだ。部屋を出ていこうとする俺の袖を引っ張り、こう発したのだから。


「可愛すぎて死ぬ。」


確か、シオンといったか? そいつは俺に呆れた視線を向けた。こいつ、俺以上にディアと一緒にいられるからと調子に乗りやがって…。


「おい、ディアの状態はお前も聞いたのか。」


「はい。クローディア様は俺が必ずお守りします。」


「当たり前だ。命をかけてでもディアを守れ。」


「…御意。」


それより、殿下との婚約を早く解消しなければならない。あんなやつにディアはもったいないとずっと思っていたのだ。なのに、あいつはディアを蔑ろに…。


俺はディアの頬にキスをしてから部屋を退出した。本当は離れたくなかったが、シオンに任せるとしよう。
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