死ぬ結末しかない推しの悪役令嬢に憑依した私

ヒロインに出会うまで

5 誤解を解きます

「…気をつけて帰ってね。」


「はい、ありがとうございます。殿下もお気を付けて。」


私は、誰よりも早く教室を出ました。そのため、馬車に行くまで誰にも会うことはありませんでした。


「クローディア様、申し訳ございませんでした。」


「え？」


何故か急に頭を下げられました。私、何もされていませんが…。


「護衛についてからまだ1ヶ月も経っていません。それなのにまともに話したのは今日が初めてです。それなのに、噂だけでクローディア様を決めつけて関わろうとしていませんでした。」


まだ、護衛についたばかりだったんですね。


「噂…とは？」


正直、その噂がどんなものかわからないですよね。幼い頃のワガママだなんて可愛いものですし、どこのご令嬢も同じようなものだと思いますよ。まして、親から愛情を貰えなかったクローディア様は笑うことさえしなくなったのです。そんなクローディア様がわがままなんてしょうもないことをするでしょうか。


「…平民を軽視していると。孤児を蹴り飛ばしたり、平民から貰った花を踏み潰したと。」


「孤児を…？  あ、それは逆です。」


「逆？」


クローディア様はよく孤児院に訪れていました。孤児たちと仲良くなって冗談を言えるくらいに。


「私が悪役をしたんです。その時に孤児に蹴られたんですけどそれがなぜかそう噂になったみたいですね。私も驚きましたけど。」


少しずつクローディア様の記憶を思い出してきました。クローディア様、本当にどうして殺されなければならなかったのですか…。こんなにいい人むしろ他の貴族にはいませんよ。


「あと、平民に貰った花でしたか？  それは…」


「それは？」


「記憶にないですね、すみません。孤児院の子たちに花を貰ったことはあるのですが、それは今も部屋に飾っていますし…。」


「そう、ですか。」


誤解は解けましたかね？  クローディア様は本当にいい人なんです。殺されていい人ではありません。


私たちは馬車に乗り込み、家を目指しました。