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本編
はちわ
しおりを挟む「お、父様、お母様…?」
お母様に疑問形がつくのはお許しください。記憶にないんですよ。初対面ですし。いや、生まれ以来、ですかね。
急に会いに来ると知った時は狼狽えましたが、案外普通に話せそうです。
「リリア、会いたかったわ。今まで…本当にごめんなさい。」
今まで会いに来なかったのに今更そう言われましても…。それよりも気になることがあります。
どうしてここに、ライがいるんですか。
「母親が話しかけているんだ。何か言ったらどうだ。」
「お久しぶりです、お元気でしたか?」
私には2人にこれ以上かける言葉が見つかりません。お母様に関しては思い出1つありませんし、お父様とも関わりがあまりありませんでした。
「はぁ、そんなことしか言えんのか。ソフィアはもっと愛らしいと言うのに、笑いもせんとは。」
笑うなと言ったのはあなたですよ。それに、元々私にはソフィアのような可愛さはありません。昔から可愛いと言われた記憶はありませんし、大人びているとしか言われたことがありません。自覚はしているのに態々教えて頂かなくても大丈夫ですのに。
「いいの、私が悪いんだから。病気のせいであなたに会いに行くことが出来なくて本当にごめんなさい。エリーに言われてあなたに会う覚悟が出来たのよ。」
エリー…エリザベス様、王妃様のことですね。2人は学生からの親友だそうです。でも、王妃様がして下さったことはむしろありがた迷惑ですね。両親に愛情を求める必要性を感じなくなってしまいましたから。もう少し早ければ…いや、これがだめなんですよね。やっぱり私にはソフィアのような存在になるのは不可能です。
「わざわざお越しいただきありがとうございます。」
「どうしてそんなによそよそしいの…!」
「言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだ。」
いいんですか? よそよそしいのは許してください。ほぼ初対面ですよ? そこは理解してほしいです。急にお母様! と言って抱きつかれても困りますでしょう? 私なら全力で逃げますよ。
「ねぇ、逆に聞くけどどうしてリリアがもっと喜ぶ反応を期待してたの?」
「ラ、ライゼン殿下。…実の母親に会えて喜ばない子供はいないと思いますが…」
ここにいますよ。私にはあなた達に可愛がられた記憶がありません。これからもずっと私のことは忘れてソフィアのことを可愛がってくれればいいんです。私もソフィアのことは大好きですから。
「聞いた感じ、夫人は病気のせいでリリアに会えなかったみたいだけど」
「そうです、私は病気のせいで…」
ライは意味あり気な笑顔を見せ、へぇ~と母を睨みます。
「では何故ソフィア嬢が? 鳥が赤ちゃんを運んできた、だなんて言わないよね?」
私、実は最近までそうだと思っていました。でも、セシルに教えてもらいましたよ。ふ、深いキス? をすればいいんですよね?
「ライゼン殿下! お戯れが過ぎますぞ!」
なぜか、母は顔を真っ赤にしています。ついていけていないのは私だけですか? 産む時に体力を使うということですよね?
「会いに行けたのに会いに行かなかったということだよね? それは病気のせいではないよ。夫人の気持ち次第でどうにでもなっていたから。」
ライ、少し言い過ぎでは…。
「ライ、私は大丈夫です。両親から疎まれていたことは当時から理解していましたし、使用人も理解してました。ご飯がないこともありましたし。ですが、妹のことは大好きなので。」
私がそう言い切ると両親は目を大きく見開きました。知らなかったんですか…?
「リリア、もう私たちに笑いかけてくれないのか」
「笑うなと言ったのは貴方です。」
父は言い返そうとしますが思い当たったのか口を閉ざしました。
「リリア! 会いたかったぞ!」
急にドアを開け、私に抱きついて来たのは神の代理人である、ユラン様です。見た目は12歳ですが中身は年齢不詳です。神の代理人とは神の声を聞き、それを伝える者ですが、その時に凄く体力を使うそうです。消費を減らすために子どもの姿でいるとか、いないとか…。基本神の代理人は歳をとりません。公式の場でも25歳の姿だそうです。
「リリアに抱きつかないでよ!」
「なんだ、お前もいたのか。リリア何があった? 兄様に話してみろ。」
貴方は私の兄様じゃないですよ。それに兄はいませんし。ユラン様はなぜか、私に兄様と呼ばせたがるんです。歳を考えてください。
「どうしてここに? 帰ってくるのはもう少し先」
「リリアのためだ。我がいなくて寂しかっただろう? これからは我がそばにいるぞ。ん? お主らはリリアの家族か。何しに来た?」
「り、リリアに会いに来ました。実は」
父が説明しようとすると両親は私たちの目の前から消え去りました。あ、殺したわけではありません。ユラン様が多分家にテレポートしたんだと思います。ユラン様、魔力はほぼ無限ですから使いたい放題です。神の声が聞こえるため権力は陛下以上です。
私はユラン様に抱きつかれたまま部屋を出ました。
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