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殿下の本性
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私はひとつ大切なことを忘れていた。
「私、町娘風の服なんて持っていないわ。」
平民街に出たことがないのだ。持っていなくてもおかしくは無いだろう。
幸い1度も着ていないサランの服を貸してもらった。今月のサランの給料少し上げようかしら……。もう着る気のないもので良かったのだけど、サランがこれじゃないとダメと言うから……。
「に、似合うかしら……?」
「はい! とっても! 帰ってきたらお話聞かせてくださいね。」
「もちろんよ。」
今日は殿下とでかけるため護衛は殿下側に任せている。
私はサランに貸してもらった白いワンピースにつばの広い、リボンのついた麦わら帽子を被って殿下の元へ行った。
「……かわいい。馬車を停めてるからそれに乗って行こうか。」
お世辞でも可愛いと言われ少し嬉しくなった。初めての服はいつも着ているものよりは肌触りが悪いが不思議と悪い気はしなかった。なぜか自由になれた気がしたから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「これ食べてみる? タコス。あ、食べ歩きは嫌かな?」
「い、いえ! 私食べ歩きをしてみたかったんです。」
「楽に話して? 私たちは夫婦になるんだから。」
「わ、わかりましたわ。」
殿下がタコスの屋台へ行くと2つ買ってき戻ってきた。これがタコス……美味しそうだわ。
「んっ、美味しいですわ!」
「シャル、ここについてるよ」
殿下にクスクス笑われるが何処についているのか分からなくて余計に殿下に笑われてしまう。
「ここ。」
そう言って殿下は私の唇の端を舐めた。
「あはっ、顔真っ赤。次行こっか~」
殿下はなぜあんなに平気そうに……。もしかして、私をからかっているのかしら? 1人百面相していた私は耳が真っ赤になっている殿下に気づけなかった。
(タコス美味しいわ……シェフに作らせようかしら。)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
最近人気だというカフェに連れてきてもらった。いつかはノアが買ってきてくれたケーキ屋さんにも行きたいものだ。
「シャル。私、浮気は許さないから。やっと、手に入れられそうなのに。」
頼んでいたコーヒーが届いてから数分後、和やかに話していたが急に殿下が発したことばで温度が下がった気がする。
浮気……? あ、まさかやはり私とノアがキスしていたところを見ていたのだろうか。
黙っている私を見てもう一言発した。
「次は許さないから。次は怪我をさせてでも部屋に閉じ込めるからね。」
想像もしてなかった言葉を言われ思わず背筋がゾクッとした。もしかして、これがサランの言っていたやんでれ? というものなのだろうか。最近巷で流行っている小説にやんでれと言う設定があるらしい。やんでれなんて命がいくつあっても足りないわとサランに言ったが本当にその通りだったと思う。
(私、殿下に殺されるの……?)
「う、浮気なんて……」
「そうだよね。まぁ、私はシャルを信じているから。あ、シャルってみんなが呼ぶ愛称だからシャーリーって呼んでもいいかな?」
「もちろんですわ殿下。」
「ゼイン」
「え?」
「ゼインって呼んでって言ったでしょ? ノアの事は名前で呼ぶのに私はダメなのかい?」
「ぜ、ゼイン……」
「うん!」
私が名前で呼ぶと弾けるような笑顔を見せてくれた。やんでれと言うのは愛が重いからそうなると聞いた。ということはゼインは私の事を愛してくれているということだけど。
「ゼイン、あのどうして私に結婚の申し込みを?」
ゼインは懐かしむように空中を見つめた。
「私、町娘風の服なんて持っていないわ。」
平民街に出たことがないのだ。持っていなくてもおかしくは無いだろう。
幸い1度も着ていないサランの服を貸してもらった。今月のサランの給料少し上げようかしら……。もう着る気のないもので良かったのだけど、サランがこれじゃないとダメと言うから……。
「に、似合うかしら……?」
「はい! とっても! 帰ってきたらお話聞かせてくださいね。」
「もちろんよ。」
今日は殿下とでかけるため護衛は殿下側に任せている。
私はサランに貸してもらった白いワンピースにつばの広い、リボンのついた麦わら帽子を被って殿下の元へ行った。
「……かわいい。馬車を停めてるからそれに乗って行こうか。」
お世辞でも可愛いと言われ少し嬉しくなった。初めての服はいつも着ているものよりは肌触りが悪いが不思議と悪い気はしなかった。なぜか自由になれた気がしたから。
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「これ食べてみる? タコス。あ、食べ歩きは嫌かな?」
「い、いえ! 私食べ歩きをしてみたかったんです。」
「楽に話して? 私たちは夫婦になるんだから。」
「わ、わかりましたわ。」
殿下がタコスの屋台へ行くと2つ買ってき戻ってきた。これがタコス……美味しそうだわ。
「んっ、美味しいですわ!」
「シャル、ここについてるよ」
殿下にクスクス笑われるが何処についているのか分からなくて余計に殿下に笑われてしまう。
「ここ。」
そう言って殿下は私の唇の端を舐めた。
「あはっ、顔真っ赤。次行こっか~」
殿下はなぜあんなに平気そうに……。もしかして、私をからかっているのかしら? 1人百面相していた私は耳が真っ赤になっている殿下に気づけなかった。
(タコス美味しいわ……シェフに作らせようかしら。)
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最近人気だというカフェに連れてきてもらった。いつかはノアが買ってきてくれたケーキ屋さんにも行きたいものだ。
「シャル。私、浮気は許さないから。やっと、手に入れられそうなのに。」
頼んでいたコーヒーが届いてから数分後、和やかに話していたが急に殿下が発したことばで温度が下がった気がする。
浮気……? あ、まさかやはり私とノアがキスしていたところを見ていたのだろうか。
黙っている私を見てもう一言発した。
「次は許さないから。次は怪我をさせてでも部屋に閉じ込めるからね。」
想像もしてなかった言葉を言われ思わず背筋がゾクッとした。もしかして、これがサランの言っていたやんでれ? というものなのだろうか。最近巷で流行っている小説にやんでれと言う設定があるらしい。やんでれなんて命がいくつあっても足りないわとサランに言ったが本当にその通りだったと思う。
(私、殿下に殺されるの……?)
「う、浮気なんて……」
「そうだよね。まぁ、私はシャルを信じているから。あ、シャルってみんなが呼ぶ愛称だからシャーリーって呼んでもいいかな?」
「もちろんですわ殿下。」
「ゼイン」
「え?」
「ゼインって呼んでって言ったでしょ? ノアの事は名前で呼ぶのに私はダメなのかい?」
「ぜ、ゼイン……」
「うん!」
私が名前で呼ぶと弾けるような笑顔を見せてくれた。やんでれと言うのは愛が重いからそうなると聞いた。ということはゼインは私の事を愛してくれているということだけど。
「ゼイン、あのどうして私に結婚の申し込みを?」
ゼインは懐かしむように空中を見つめた。
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