上 下
13 / 26

俺も死ぬから

しおりを挟む
「詩には他の男と話すなって言ってるのに矛盾してた。俺も話さないようにするから泣かないで?」



私はこの言葉を信じていいのだろうか。でも、信じたいと思っている。たとえ、これが嘘の約束だったとしても。



「詩、ここにキスマつけて。」



「えっ? ど、どうやってつけたら……?」



「じゃあ噛んでもいいよ。詩がつけてくれるならなんでもいい」



噛むのは痛いよ……と伝えてもむしろいいんだよ。と言われて聞いてくれない。私は意を決して少しだけ歯を立てた。



「詩、何も付いてないよ。」



蒼くんはクスクスと笑う。本気で付けるなんてできないよ……。



「あっ! ちょっと待ってて!」



床に置いてあった私のスマホを取ると『キスマの付け方』と検索した。蒼くんはまだ心配だったみたいで私のスマホを覗き込んでいたが、内容がわかると少しだけ離れた。



「そ、蒼くん! 私頑張る!」



「うん、頑張って? あとで俺も付けるね。」



え、こんなにもうついてるのに? さっき調べてわかったのだが、胸につけるキスマは『所有』という意味らしいのだ。独占欲が強い人は胸につけたがると書いていたが本当なのだろうか。



「蒼くん、胸につけてもいい? 蒼くんは私のもの……?」



蒼くんは驚いたように目を見開いたが、喜んでくれているのかすごい笑顔でいいよ、と言ってくれた。



「んっ、あっ! ついたよ蒼くん!」



「上手にできたね。じゃあ……」



「ひゃっ! そ、蒼くんそれちく……び。」



「美味しそうに主張してたから。嫌なの?」



「蒼くんだったらいやじゃないよ。」



「あいつらも?」



あいつら? 新くんと蓮くんのこと? 私、嫌だったのかな。でも、むしろ……



「いたっ」



蒼くんはいきなり私の突起に歯を立てた。い、痛い……。




「意地悪してごめんね。詩、俺のことだけ考えて。他の男の子のなんて考えないで。詩が違うところに行ったと思うだけで俺死にそう。」



蒼くんはいつも大げさな気がする。確かに私も蒼くんがいないと生きていけないかもしれない。でも、痛いのはいやだから死ぬ、とかは考えられないなあ。



「そうなったら詩を殺して俺も死ぬから。」



思わずぞくっとしてしまった。蒼くんの目が本気だったから。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「詩ちゃーん! おはよ! 昨日大丈夫だった?」



「お前、その手……」



二人はたまに学校に遅れたり、途中で帰ったりすることがあるが基本は学校に来ているようだった。



「えっ、と……」



喋ったらだめって言われたけど私、無視なんてできないし……。



「如月に何か言われたのか?」



「そうだよ。だから、詩に話しかけないでね。傷つくのは君たちじゃなくて詩だから。」



「蒼くん!? どうしてここに?」



「詩がちゃんと約束守ってるかなー? って思って。」



私、蒼くんに信用されてなかったんだ。確かに蒼くんが来なかったら話してたかもしれない。私ってほんとだめだよね。蒼くんに言われたことも守れないなんて。



「蓮、行くぞ。」



「うん。」



この会話を最後に二人は学校へ来なくなってしまった。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


もう早いことに今日から夏休みである。結局二人は学校に来なかった。単位とか大丈夫なのかな。



「あれ、LINEきてる。誰だろう。」



Aって誰なんだろうか。あ、Rもいる。もしかして新くんと蓮くん? でも、蒼くんがブロックしたって言ってたよね……?



「えっ、電話かかってきた!?」



「も、もしもし」



「詩か? 明日会えるか?」



「あ、らたくん?」



「俺もいるよ~」



「蓮くん? 学校どうして来てなかったの?」



それより、どうして2人から連絡が……? 電話番号は交換してなかったよね?



「色々あってね~。明日会える? 駅集合ね!」



「どうして私の連絡先知ってたの? 蒼くんがブロックしたのに……。」



「神河さくらってやつに聞いた。」



さくらちゃん!? さくらちゃんというのは最近仲が良くなった子だ。蒼くんも女の子の友達なら、と許してくれたのだ。すごく美人でかっこいい子。私の事可愛いって言ってくれるけどさくらちゃんの方がよっぽど可愛いよ。



「とりあえず明日な。」



そう言うと通話が切れた。あっ、ちゃんと履歴消しておかないとだめだよね? 蒼くんにバレたらまた怒られちゃう。蒼くんに隠し事だなんて本当はしたくないけど蒼くんも傷ついちゃうから消しておこう。非表示でいいのかな?



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

「どこ行くの?」



集合だと言われたが何時に集合かわからなかったため10時に家を出ることにした。いなかったら本屋さんにでも行こうかな。
そう思っていたのだが。



「そ、蒼くんこそどうしたの?」



「家から出てきたの見えたから。どこ行くのかなって。駅行くなら俺も行っていい?」



「あっ、いや、えっと……さくらちゃんと遊ぶの! 来週じゃだめかな……?」



「そうなの? なら仕方ないね。じゃあ、来週出かけようか。いってらっしゃい。」



なんとか誤魔化せたようだ。後でさくらちゃんに連絡しておこう。蒼くんも笑顔で手を振ってくれたし大丈夫だよね……?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

処理中です...