夏の青さに

詩葉

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第6話 「ひなた」

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 どうやら瀬奈は、本当に何も覚えていないようでどれだけ詳細に夢の中での出来事、青と過ごした小学校での日々を話しても、ピンと来ていないようだ。
「でも、それってただの夢でしょ? 本当にその子がいたってのは記録に残ってるのかも分からないじゃない」
「そう……なんだけどさ。なんかただの夢って感じがしないんだよな」
 恐らく日向も同じ感覚なのだろう。
「ふぅん、じゃあ丁度学校にいるし、その子のこと調べるわ」
 瀬奈は片手間にスマホを素早くタップすると、踵を返して歩き出した。渉も慌ててそれに倣い、足早に歩く。
 先程お礼を言って帰ることを伝えた手前、まだ学校内でやりたいことがある事を教職員に言うのは気が引けたが、意外にも彼はあっさりと承諾してくれた。
 それは恐らく、宮野の財力とも少なからず関係していそうだが、渉はそれには一切触れず粛々と事の成り行きを見届けた。
「資料室の鍵がかかってるロッカーに、今までの卒業生が載っている本があるって言ってたな」
「そうね、ここの卒業生とは言えそんな大切なもの見せていいのかしら」
 渡された資料室の鍵をガチャガチャと鍵穴に差し込み、ギィと音を立てて開いた扉。見た目の割に立て付けが悪く、あまり開ける事がないのか、室内からは埃臭いにおいが漂っている。
「げほっ……さぁ、探すわよ」
「こんなとこ一回も入ったことないかも……」
 どこもかしこも埃だらけで長年掃除をされていない印象を受けるその部屋の奥、一際目立つ錠が掛けられた鼠色のロッカーが鎮座している。
 それが例の資料が入っているロッカーだろう。
 瀬奈は渡されたもう一つの小さな鍵で、戸にかかっている金色のこれまた小さな錠を開けるとカチャリと小気味よい音を立てて、すんなりと開いた。
 中には分厚い本がいくつも並んでおり、埃臭いにおいとカビ臭いにおいが混じって鼻先までツンとした臭いを届かせる。
「えー……と、第五十一期生……あった!」
「よく覚えてるな……何期生かなんて」
「同窓会の幹事なんだから当たり前よ」
 両手でやっと持てるぐらいの重さの本をぱらぱらとめくりながら、瀬奈は答えた。
 ページが段々、生徒の項目になっていき見覚えのある人達の懐かしい顔が一枚毎に印刷されていた。
「なんだっけ……その青って子の苗字」
「確か三条……」
 あいうえお順で尚且つ色別で記されているため、苗字から探せばすぐに見つかるはずだ。瀬奈はページを飛ばして、右上にさ行が書かれた所まで進めた。薄桃色をしたページだ。
 異様な緊張感が場を包む中いよいよ、さ行の終わりを示すかのように薄桃色のページは残り一枚となった。
 瀬奈が次のページをめくろうとした瞬間、後ろの方で聞き覚えのある声がした。
「なんで……ここにいるの……?」
 そこには目を見開いて肩を震わせながら、青ざめている日向の姿が。
 そして同じ表情で彼女を見つめる渉。しかし、渉はその瞬間気づいた。
 日向がここにいるということは紛れもなく誰かからの指示によって、この学校に来たということだ。そして、それを成し得ることが出来るのは、瀬奈しかいない。
 もしやまた嵌められてしまったのか。そんな考えが脳裏を掠めて、渉は瀬奈を凄い形相で見た。
「あー、まぁ私が呼んだのは間違いないんだけど。それはあくまで情報共有ってことで、今回は何も企んでないよ」
 渉の反応を見て察したのか、あっけらかんとした態度で瀬奈は説明する。
「情報共有……?」
 今にも消え入りそうな声で日向は疑問を浮かべた。
「そ。私には分からないけど、あんた達二人は共通の夢を見たらしいから、二人で情報を共有した方が早いじゃん?」
 共通の夢。日向はその言葉を言われた瞬間、ハッとした表情で渉を見た。渉はそれに対し、頷く。
「色々言いたいこと沢山あると思うけれど、まずは話してからでも遅くないじゃん?」
 元はと言えば瀬奈があんな事をしなければ、こんな事にはならなかったのにと思いつつも、自分が逃げなければそもそもバラされることも無かったと認識している渉は、瀬奈の提案に承諾した。
 日向は黙りこくってしまって、反論することも肯定することも無かった。昔から明るい性格で周囲をいつも照らしていた彼女からは、想像出来ないほど暗い表情を見せている。
「……」
 六年生の教室で話し合おうと提案した瀬奈は、資料室の鍵を返す為に先へ行ってしまった。
 長い廊下には軽率に話してはいけないような雰囲気が流れて、二人は無言のまま教室へ向かう。
「その……」
 六年生の教室がある三階へ続く階段を上る途中の踊り場で、渉は意を決して口を開いた。
「その、この前のこと……本当に悪かったと思ってる」
 後ろを歩く日向に背を向けながらそこまで話して、渉は日向の方を向き直った。
「ごめんなさい」
 深々と頭を下げて、渉は返答を待った。階段を上ってきたせいか、暑くなった身体からは汗が出て、額からも自然とそれはこぼれ落ちていく。
「…………」
「………………」
 それはとても長い時間だった。
 しかしそれでも渉は日向から一言も何も聞けないのであれば、もう頭を下げ続けたまま生きるぐらいの決意を秘めていた。
「……頭を上げてよ……」
 日向の震えた声が反響して聞こえた。
 素直に頭を上げた渉は、目の前の日向が今にも泣きそうな顔で立っていることに戸惑いを覚えた。
「あ、日向……」
「……とっても悲しかった」
 渉に見られたくないのか顔を伏せて、日向はそう呟く。それを皮切りに、日向の口からは息付く間もなく次々と言葉が飛び出してきた。
「沢山仕事をして、そのお金で専門学校に入って、少しでも追いつけるように、お互いの夢を叶えられるようにって頑張って来たのに、勝手に諦めて、それを誰にも言わないで、隠して」
「…………」
「本当に酷い……酷いよ……」
 伏せた顔からはとめどなく涙が溢れて落ちてゆく。
「……でも、でもね、私、気づいちゃったんだ」
「……え?」
「なんか、それって渉くんの夢を強制してたんじゃないかって……気づかないうちに、渉くんに辛い思いをさせてたんじゃないかって……気づいたんだ」
 涙を手のひらで拭い、渉の方を見る日向の表情は、渉と同じような後悔の感情が浮かんで見えた。
「謝りたいのは……こっちの方だよ……ごめんなさい」
 先程の渉と同じく深々頭を下げる日向。その姿からは渉と同等の覚悟があるように窺えた。
「いや、顔上げてくれ日向…… 何はともあれ勝手に逃げた俺が悪いんだ!」
「渉くんが私が悪いことを認めるまで上げない」
「えぇ!?」
 日向はずっとほぼ九十度の礼をした状態で、一向に頭を上げようとしない。
「……えぇっと……じゃあ、俺も日向も悪いってことじゃ……ダメかな……」
 頭を掻きながらそう言う渉に、日向は納得したのかやっと顔を上げた。
「渉くんは変わらないよね……」
「え?」
「ううん、なんでもない」
 はにかみながら日向はそう言った。
 何だか急に懐かしさが込み上げてきて、渉は笑い返す。
「あんたら仲直りしたんなら早く行ってくれないかな」
 いつの間にか階段下にいた瀬奈は、両手を腰にあてて退屈そうに見ている。
「いつの間に!?」
「いたんなら言ってよ! 瀬奈ちゃん!」
 瀬奈は何だか二人の反応が、小学生の頃のままのような気がして、一瞬、小学生の時の彼らが見えたような気がして微笑んだ。
 
 六年生の教室で、早速先程開きかけた資料のページを確認した三人だったが、三条青という人物の情報は一切載ってはいなかった。
 次いで、日向が家から持ってきた小学校の時の卒業アルバムの内容を確認したが、そこにも当然のごとく青の顔写真もプロフィールも記されてはいなかった。
「青なんて子、いなかったんじゃないの?」
「でも、本当にいたと思うんだよ。とってもリアルな夢だったもん」
「……そういや日向は、どんな内容の夢を見たんだ?」
 もう日がかなり傾いて西陽が差す教室内。まるで放課後に、クラスメイトと別れるのが寂しくてギリギリまで談笑していたあの頃のように、三人は一つの机を囲って話していた。
「うんとね、あんまり長くはなかったんだけど」
 日向は、自身が見た夢のことを話した。それは言わずもがな、渉が見たような過去の記憶の夢だ。
 彼女の夢は、もう既に青が四人と随分仲良くなっていた時の頃だったらしい。
 夏休みに行きたいところをテーマとして話し合っていた渉達の班は、青が提案した場所について研究することになった。
「その青って子は何処に行きたいって言ってたの?」
「青くんのおばあちゃんが暮らしてる町だって言ってた」
「何だってそんなとこに……?」
 青は授業内で話し合ったあの日、自身の祖母が住んでいる地域に夏休みに行きたいと言っていた。初めは、颯人や瀬奈もなんでそんな場所にと首を傾げたが、理由を聞いてみて満場一致で行くことになったらしい。
「理由って?」
「青くんのおばあちゃんが暮らしてる町には毎年、夏になるとお祭りが開かれるらしいんだけど、その年は少し特別で、十年に一度願いが叶うお祭りなんだって」
 昔からのしきたりが多くある田舎特有の不思議なお祭りで、十年周期でその特別なお祭りは開かれる。
 なんでもその日だけに配られる紙に願い事を書いて、それを神社の裏にある大きな神木の根元に埋めると誰かの願いが叶うらしいのだ。
 それは小学生にとっては、素晴らしいお祭りに見えただろう。毎年、願いが叶うと言われているお祭りならまだしも十年という長いスパンがある。
 丁度良い現実味のある話で、満場一致するのも頷けないことも無かった。
「なるほど……願い事ね……」
「その後はどうなったんだ?」
「そこで目が覚めちゃって……結局行けたのか行けなかったのか分からない」
 日向は申し訳なさそうに首を振った。
「神社の神木に埋めた記憶ねぇ……ダメだ全然覚えてないわ」
 瀬奈は椅子の背もたれ部分に肩を預けて、残念そうに呟く。
「俺も実は出会った最初の頃しか覚えてなくて、あの後卒業したのかすらも覚えてないんだ…………あ」
 渉は何か思いついたような顔をして、瀬奈と日向を交互に見た。
「? 何?」
「同窓会にそれっぽい奴とかはいなかったのか?」
「名簿を全部丸暗記してるけど、そんな名前の人いなかったわ」
「そうか……じゃあ」
 渉はもう一人、夢を見てそうな人物の名前を上げた。
「あとは颯人が何か知っていれば良いんだけどな……」
「颯人くんかぁ、頭が良いし忘れたりなんかしなさそうだよね」
「……颯人か……」
 日向の肯定的な反応に反して、瀬奈はその表情を少し陰らせた。
「颯人となんかあったのか?」
 渉はその反応に気づき、咄嗟に聞く。
「んー、なんかっていうかさ……あんたと同じで同窓会に来てないのよ。しかも何の連絡もなし」
「あの颯人が?」
 颯人は渉達の中で特に成績優秀で先生にも一目置かれる優等生的な存在だ。そんな彼が何の連絡もせずに何か行事ごとを欠席するとは考えられなかった。
「うん……。私からも何回か送ったんだけど、既読すらつかなくて……」
「仕事が忙しいのは分かるけど、連絡ぐらいしてほしいわよね……」
「仕事? てっきり名門大学とかに行ったかと思ってた」
 渉と颯人が最後に話をしたのは小学校卒業後、中学校に入りたての頃、地元の祭りで四人で会った時だ。
 別々の中学校と高校に進学したため、颯人の進路先は分かっていなかった。唯一、それを知っているのは中学も高校も一緒の進路を選んだ瀬奈だけだ。
「高校の先生達も進学を推薦していたけど、就職を選んだみたい。理由は知らないけど」
「意外だなぁ……あの颯人が」
 颯人ぐらいの学力なら国内の有名な大学に行っていてもなんら不思議では無かった。それをしないで就職を選んだのは、余程のっぴきならない事情があったのだろうか。
「でも東京の有名な会社なんだよね? 流石だなぁ……」
「東京!?」
「そ。あんたと同じで上京してんのよ」
 日向は瀬奈から聞いたのか颯人が上京して働いていることを知っているらしかった。
「じゃあもしかしたら街ですれ違ってたりとかもしてたかもしれないなぁ」
 とは言っても、約七年の歳月が経ち、その間一度も会っていなかった渉と颯人が、すれ違った程度でお互いを認識出来るとも限らない。
「……実はね、二人が同窓会に来ないってことを知って、少しでも四人で話せたらと思って東京に行ったんだけど……」
「颯人からは一切、連絡が来なくて、渉とはあの一件でしょ? もうただショッピングしに東京来ただけになっちゃったんだよね」
 二人はかつて、仲の良かった四人で顔を合わせて、小規模な同窓会を開こうと考え、東京に来ていたらしい。
 ただそれは渉との一件で無くなり、終いにはいつまで経っても来ない颯人の返信が重なって、その計画は失敗に終わった。
「それは……なんか、本当にごめん……」
 現況とかは抜きにして、楽しいことを計画してくれて、自分の元へはるばる東北から来てくれた二人に、渉は頭が上がらなくなった。
 それに加えて、日向に対して下心ありありな考えをしていた自分自身に、怒りと情けなさを感じる。
「ううん……結局、颯人くんが忙しそうだし、四人が集まるのは無理だったと思うから……」
「日向はあんな事言われたのに優し過ぎるのよ……こいつはすぐ調子乗るから甘やかさない方がいいわよ」
 瀬奈はきつい言葉で日向の言葉を否定したが、多少はいじりのつもりで言ったんだろう。ただ渉は、それが酷く懐かしく感じて、思えば直近でもそんな言葉を投げかけられた気がして、呆けた表情をした。
「瀬奈……確かそれ」
「なに?」
「昔も似たようなこと言ってたよな?」
「いや全く覚えてないし」
 瀬奈と渉の言い合いを日向は眺めていた。少しだけ、ほんの少しだけ、羨ましいなと思いながら。
 
 もう既に日は暮れていて、烏の鳴き声やヒグラシの声が夏の夕暮れ時を際立てていた。
 学校から出た三人は、それぞれ予定を話し合いながら、青について各自で調べることにした。
「ありがとう瀬奈、颯人の連絡先くれて」
「別にいいわよそれくらい。なんか返信あったら連絡くれれば」
「一応、颯人くんにも青くんのこと聞いてみるね」
 三人はいつでも連絡出来るようにメッセージのやり取りが出来るアプリ内の機能、グループ機能を使うことにした。勿論、そのグループには颯人も招待されている。
「じゃあ、またな」
「うん、またね!」
「じゃあね」
 家路に着く帰り道、グループに表示されているメンバーを見て、三人は小学生の頃、四人で過ごしたあの日々を思い出していた。
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