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第二部/1組目・淫魔殺しの聖職者
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しおりを挟むーーー9部屋目ーーー
新たな部屋に転移した瞬間、奇襲に備えて拳を構えたフロイド。
しかしその視界には魔物一匹居らず、フロイドは警戒を続けながらも構えを一時的に解いた。
「この部屋で9部屋目……あの情報が正しければ、次で終わりのはずだが」
ダンジョン入口の看板に書かれていた『10の部屋を踏破すれば完全制覇!』との文言を思い出し、軽くため息を吐く。
(このダンジョンが淫魔の支配下にあるのは間違いない。しかし…肝心の淫魔本体がまだ姿を表さない)
『ということは』と小声で呟き、フロイドは数メートル先にある転移の魔法陣を睨み詰めた。
ーーおそらく、次の部屋にこのダンジョンを支配する強大な淫魔がいるに違いない。
そう確信したフロイドは深く呼吸をすると改めて拳を構える。
「……『不惑の構え』、『破邪の構え』、『退魔の構え』……」
次々と異なる構えの体勢を取り、念入りにバフを重ねていくフロイド。
まだ見ぬ相手にも決して油断はせず全力で相対するために全てのスキル・補助魔法の類を注ぎ込むと、消耗した体力や魔力を補うべく懐から特別製の回復薬を取り出した。
「ん…ぷはっ…」
フロイドが一気に飲み干したそれは、小瓶1本で金貨10枚はくだらない最高級の回復薬。
それを何の躊躇いもなく使い切り、いよいよ最後の部屋へと向かって足を踏み出した。
ーー9部屋目 ハズレの空部屋 突破ーー
----------------------------
フロイド 人間・ウォーリアモンク
Lv.72 性別:男 年齢:36
HP:690/690
MP:240/240
状態:肉体・精神デバフ無効、HPMP自然回復、
悪魔超特攻、淫魔超特攻、
パラメータ全上昇、詠唱速度短縮etc
----------------------------
…………
………………
ーーー10部屋目ーーー
意を決して挑んだ10部屋目。
しかしフロイドを出迎えたのは凶悪な淫魔の姿ではなく、拍子抜けする程何も無い空っぽの部屋だった。
「む…?」
キョロキョロと辺りを見回しながら魔力を探知するなどしてみるが、何かしらの敵意・害意のようなものは一切感知できずフロイドは思わず眉間に皺を寄せた。
(どういう事だ?…やはり、10部屋目が最後というのは嘘だったのだろうか?)
と、警戒しながら1歩足を踏み出したその時だった。
「…ぐすっ…ひっく」
「っー!」
僅かに聞こえたのは『子供の泣き声』。
ダンジョンの最奥には到底相応しくないそれにフロイドは咄嗟に駆け出す。
すると薄暗い部屋の隅に、両膝を抱えるようにして『1人の少年』が蹲っていた。
「子供…?」
「ひっく…おじさん、だれぇ…?」
泣き腫らした顔でフロイドを見上げる少年。
歳は12歳ぐらいだろうか?
焦げ茶色のクリっとした瞳に涙を溜め、不安そうに声を震わせている。
「私は…このダンジョンの調査に来た聖職者だ。それで、お前はどうしてここに?」
「と、ともだちが…度胸試し、してこいって…このダンジョンに……」
「……友達、か」
フロイドは少しばかり思案すると、泣き腫らす少年にそっと手を差しのべ………
ーーヒュンッ
瞬間、その手の平は拳に変わり…少年の頭部向けて弾丸のような速度で放たれる。
しかし懇親の力で振り抜かれたフロイドの拳は空を切り、その視界から先程の少年は消え失せていた。
「なっ…!?」
拳は確実に頭を捉えていた。速度も申し分ない。
仮に幻術の類だとしても、今の万全なフロイドであれば感知出来たはずだ。
それでも攻撃が当たったという感触がないということは………
(まさか、回避された…?いや、有り得ない。あの速度の攻撃を魔力も使わずに……)
「あっぶないなぁ。『無防備な子供』に対してあんな仕打ちをするのが人間の常識ってやつなの?」
「っ、貴様…!」
鈴の鳴るような声が聞こえて即座に振り向けば、そこには先程まで泣いていた筈の少年が意地の悪い笑顔でフロイドを見つめていた。
「魔力もフェロモンも完全に消してたのに、なんで僕が『淫魔』だって分かったの?」
「知れたこと。こんなダンジョンの奥地に人間の子供がいる訳が無いだろう」
「ふふっ、それもそっか♡」
少年…いや、淫魔はクスクスとわざとらしく笑うと、隠す必要の無くなった羽根と尻尾を大きく拡げた。
ーーバサッ
「僕の正体を見抜けたご褒美に名乗ってあげる。…僕はインキュバスロードのキーラン。聖職者殺しの淫魔、なんて呼ばれてるよ」
「ならば私も名乗ろう。…我が名は王都聖騎士団のフロイド・ドラモンド!貴様のような淫猥なる悪魔討ち滅ぼす、淫魔殺しの聖職者だ!」
その名乗りと同時に駆け出したのはフロイドだった。
拳に聖なる魔力を込め、幼い子供の姿をした淫魔…キーラン目掛けて全力で振り被る。
しかし……
ーーヒュンッ
「っ!?」
最初の時と同じく、フロイドの拳はあえなく空を切る。
そして肝心のキーランは…真っ直ぐ打ち出されたフロイドの拳に手を乗せ、そのまま腕を滑るように撫でていた。
「おっそーい!枯れかけの年寄りちんぽ並!…ねぇ、それで本気なの?」
「な…に…!?」
キーランの動きが全く見えなかったフロイドは咄嗟にバックステップで距離を取り、鋭い眼光で睨み付ける。
(馬鹿な…こちらは全ての技を使って能力の底上げをしているんだぞ?それを、こうも容易く…)
「……ひとつ、いい事を教えてあげようか」
困惑するフロイドを見つめながらキーランはそっと人差し指を自身の唇へと触れさせる。
「人間にも魔法が得意なタイプと肉弾戦が得意なタイプがいるでしょ?…それってね、僕ら魔族も同じなんだよ」
「……何が、言いたい」
キーランが1歩歩み寄れば、フロイドは1歩後ずさる。
実力の底が見えないキーラン相手ではどのような手を打てばいいのか分からずフロイドは次の手を決めあぐねていたが…
「魅了、催眠、洗脳…一般的に言われる『淫魔は搦手が得意』って言うのは確かに当たってるけど……僕に限って言えば、それは大きな間違い」
ーーシュンッ
「っ!消え…!」
一瞬にして視界からキーランの姿が消え、フロイドは咄嗟に防御の構えをとる。
しかし何かの気配にゾクリと背筋が粟立ち背後を振り向いた瞬間、その眼前にキーランの顔があって……
「どうやら一般的な淫魔対策はしてきたみたいだけど……ごめんね。僕、搦手は苦手な肉体派淫魔なんだ」
ーーちゅっ♡
「んんっ!?」
顎を掴まれてからの突然のキス。
咄嗟に振りほどこうとしたが、顎を掴むキーランの手の力は異常なほど強く、フロイドは抵抗も出来ずに口内を弄ばれてしまう。
「ん、じゅっ…んむぅ…!」
(ふふ♡やっぱり戸惑ってる♡…セックスやオナニーどころか、キスすらした事無かったみたいだね♡)
通常、聖職者が神からの加護を受ける際、その加護の強さは信仰心の強さに比例する。
しかしプラスアルファで更なる力を得るには、『神に全てを捧げた証』として純潔を守る必要があった。
そしてフロイドはその強力な加護を得るため…これまでの人生においてあらゆる娯楽、性愛に関するもの全てを捨ててきたのだ。
(大方強い加護を得るためにストイックに生きてきたんだろうけど、それなのに『淫魔とべろちゅー』なんてしちゃったらどうなるか…♡)
「んんっ…ふ、じゅぷっ…や、やぇ…!」
『唇の純潔』を奪われた事で加護が弱まったのか次第にフロイドの抵抗は弱々しくなっていく。
更に深く長いキスによる酸欠状態も相まって、その顔は赤く染まり鋭い瞳にも涙が溜まっていった。
ーーガクンッ
「な、ぁ…っ!」
「あらら、腰砕けちゃった?」
やがて自身の身体すら支えきれなくなり床に倒れ込んでしまったフロイド。
息を整えながら即座に立ち上がろうとするが…その眼前に、まるで丸太のような『太く硬い棒状の物』が迫り思わず動きを止めてしまう。
(!?な、なんだ…これ、は…)
フロイドには一瞬それが何なのか理解出来なかった。
しかしよくよく見れば、その棒状の物体は目の前に立つ淫魔・キーランの股座から伸びていて……
「ふふっ♡釘付けになっちゃって可愛い♡…心配しなくても、淫魔のおちんぽ♡たっぷり堪能させてあげるからね」
ぺちぺち
「や、やめ…っ、穢らわ、しい…」
頬に触れる淫魔の熱く生臭い性器に思わず声を震わせてしまうフロイド。
生まれて初めて淫魔相手に怯える『淫魔殺し』の姿に、キーランは思わずぺろりと舌なめずりをする。
そして………
「さぁて、ここからは……楽しい楽しいわからせレイプの時間だよ♡」
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