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第一部/4組目・魔族領からの刺客
閑話:危機!?エロトラップダンジョン!
しおりを挟む…ダリルのダンジョン攻略失敗から2週間。
ダンテのエロトラップダンジョンは『死人も攻略者も0の謎ダンジョン』として冒険者達の注目の的となっていた。
「なぁ聞いたか?あのベテランパーティが例のダンジョン攻略に失敗したんだと!」
「マジかよ…例のダンジョンってあれだろ?誰しも生きて出られるけど、中で起こったことを決して口にはしないって噂の…」
冒険者ギルド兼酒場では今日もそのダンジョンの噂でもちきりだ。
一体誰が最初にあのダンジョンを攻略するのか。
そしてどんなお宝を持ち帰ってくるのか。
その話題はブラスレッタの街だけでなく、人族の領域である大陸中に広がりを見せつつあった。
…そして、その噂に惹き付けられるかのようにブラスレッタの街を訪れる者がまた1人……
ーーギィ…
「…ん?」
先程までダンジョンの噂話に花を咲かせていた冒険者達。
冒険者ギルドの賑やかさを鎮めるような、いつもよりやけに重厚な扉の音に思わず視線を向ける。
そこに居たのは金色の髪を短く刈り上げて、聖職者と思われるシンプルな衣類に身を包んだ1人の男。
しかしその表情はまるで鋼鉄のように硬く無骨で、服の袖から垣間見得る腕や首筋なども筋骨逞しく、一般的な聖職者のイメージとは圧倒的にかけ離れていた。
「……ここがこの街の冒険者ギルドか。酒場としての施設も兼ね備えているようだが…やはり都と比べると小規模だな」
無骨な聖職者は小声でそう呟くと迷うことなく受付カウンターへと歩を進める。
近くを通り過ぎたその姿を呆然と見つめていた冒険者達は、聖職者の身につけていた装飾品に気付いて眉をひそめた。
「お、おい…あれ…」
「あぁ…あのロザリオ、王都聖騎士団のものだ」
『王都聖騎士団』
それはこの人族の国を治める王都に本拠地を構える、最強の聖職者集団。
その中でも彼は回復や補助を得意とするクレリックではなく、拳で戦う修道士…『ウォーリアモンク』であった。
そして聖職者はカウンターに着くや、受付嬢の目の前でその白金のロザリオを掲げる。
「失敬。私の名はフロイド・ドラモンド。昨今この辺りを賑わせている新たなダンジョンについて情報が欲しい」
要件を簡潔に伝えた聖職者…フロイドの顔とその白金のロザリオを一目見て相手の身分を察した受付嬢は顔を青くしながら即座に頭を下げる。
王都聖騎士団に所属する聖職者は皆エリート。
その身分は王都に住まう貴族に匹敵する。
「……!こ、これはフロイドさま!まさかあの名高い『悪魔祓い』さまにお越し頂けるとは……」
「世辞はいい。それより情報は」
「は、はい、ただいま!」
フロイドに急かされ、受付嬢は慌てて重たい冊子をカウンターの下から引っ張り出す。
ページを開いて比較的新しく書き込まれたそれを見つけると、フロイドの方へと向けて該当の箇所を指さした。
「こ、こちらです。街から徒歩で半日程度の位置にあり、ランクはC+です」
「ふむ。その割に未だ攻略者が居ないと聞いたが?それから、ダンジョン内部の情報もほとんど上がってこないと…」
「はい…皆さん詳しいお話をしてくれませんし、現状大怪我をしたり死者が出たりと言った話は無いので静観するしかない状況で…」
「……調査員の怠慢だな」
フロイドは低い声でそう呟きため息を吐くと対価として受付嬢に銀貨を支払う。
(まぁ…私の予想が正しければ、誰も詳しい話をしない理由は分かるがな)
そしてまた改めて大きなため息をつくと、フロイドは冒険者ギルドを後にした。
…………
……………………
数時間後・エロトラップダンジョン。
いつも通りダンジョンの管理人室で挑戦者たちの痴態を録画した動画を複製していたダンテ。
あらかた作業を終えて大量に生成された魔石(スケベ映像入り)を箱に詰めていると、外からドタドタという騒がしい足音が聞こえ手を止めた。
ーーバンッ!
「た、大変です!大ピンチですダンテさま!!!!」
ダンジョン内部へ通じる扉から飛び込むように戻ってきたのは使い魔のキール。
何か末恐ろしいモノを見たのか、いつものチャラそうな顔は一変して恐怖に青くなっている。
「騒がしい…そんなに声を張り上げずとも聞こえるだろう」
「そ、そうですけどぉ…と、とにかくピンチなんです!このダンジョン始まって以来の!」
両手に拳を握りながらブンブンと上下させる姿は何処かふざけているようにも見えたが、キールの主人として一応聞く気はあるのかダンテはため息をつきながら椅子に腰掛けた。
そしていつも通り静かに、冷静にキールを見つめると、ゆっくりとその口を開く。
「…では、話してみろ。そのピンチとやらについての詳細を」
「は、はい!…今このダンジョンに1人の挑戦者が向かってきてるんですが…そいつが、かなりの危険人物なんです…」
「危険人物?」
キールは上位の淫魔・インキュバスロードだ。
相手が人間であれば普通レベルはもちろん、レベル60を越えた熟練の冒険者すらも簡単に無力化出来るほどの実力を持っている。
そのキールが『危険人物』と判断したということは…
「レベル90越え…英雄クラスの人間か?」
「いえ。実力としてはレベル70台。普通なら俺一人でも何とかなる相手です。……でも……」
「でも?」
それなら問題ないのでは?と一瞬だけ思ったダンテだが、当のキールの表情は晴れないどころか更に暗くなってしまう。
「……相性が、最悪なんです」
「相性?」
しばしの沈黙の後、それだけ呟いたキールは恐怖するように頭を抱えた。
「お、俺も直接対峙したことはまだ無いんですけど…噂で聞いただけでもかなりヤバくて…!」
「ふむ…それで、その人間の名は?」
滅多に見ないキールの怯えた姿に興味を覚えたダンテ。
その『危険人物』の名を問えば、キールはピクリと反応して顔を上げる。
そして……
「奴の名は王都聖騎士団のフロイド・ドラモンド。俺たち淫魔の世界でも有名な悪魔祓い……そして、世界有数の『淫魔殺し』なんです!!」
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