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第一部/3組目・親子の冒険者
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しおりを挟むーーー1部屋目ーーー
アレクとブレアがダンジョン入口の魔法陣に乗ると、転移魔法によりダンジョン内部の小部屋へと転送された。
「なるほど、地図が不要なわけだ。…それに、入口のとち狂った看板も嘘ではないらしい」
いつの間にか手に握られた親子枝を見て訝しげに目を細める。
「(ここの主は何を考えてるんだか…)さて、ブレア。いつも通り、俺が前に出る。いいな?」
「了解!」
アレクは直ぐに大剣を握り、周囲を警戒する。
部屋には僅かに松明が掲げられていたが、部屋全体を照らすにはあまりにも少なく、全容を見渡すことは出来ない。
「……少し前に出るぞ。何か見つけたら直ぐに報告しろ」
「うん…」
そしてアレクを先頭に、2人は警戒しながらゆっくりと部屋の奥へ進む。
やがて数メートル移動すると、不意にアレクは足を止めた。
「お父さん?」
「…魔物の気配がする。ブレア、魔法の準備を」
「わかった」
じっと暗闇を見据えるアレクの後ろで詠唱を始めるブレア。
そして……
「っー!ブレア!今だ!」
「うん!魔法の矢!」
アレクが駆け出したと同時にブレアが杖を掲げる。
『ぷぎゅ!?』
部屋の奥にいた魔物…そのうちの一匹、緑のスライムは驚いたように体を震わせたが、次の瞬間にはブレアの魔法がその体を貫く。
「おりゃあ!!」
ーーザシュッ!
『ギシャァアァア!』
そして緑スライムの亡骸を飛び越え、アレクが大きく振りかぶった大剣は奥にいた植物型の魔物を綺麗に切り裂いた。
「お父さん!まだいる!」
「あぁ!ブレア、援護を…」
と、アレクが更なる魔物に向けて足を踏み出したその時だった。
ーーカチッ
ボワッ!
「な…!ぅ、ぷっ…!」
罠のスイッチを踏んでしまい、何かしらのガスを全身に浴びてしまったアレク。
思わず怯んでしまったが、その隙を逃さないように魔物…大型の植物が口を大きく開けて丸呑みにしようとアレクを……
「っ、やられる、かぁ!」
ザンッ!
『ギャァアァア!!!!』
しかし咄嗟に大剣を振り上げたアレク。
その一撃で植物型の魔物はバランスを崩してしまい、数歩後ずさる。
「お父さん!避けて!…魔法の矢!」
『グ、ギィィ!!』
そして後ろからブレアの魔法による追撃が飛び、植物型の魔物は今度こそ絶命した。
…それを見届けたアレクは安堵したようにその場に崩れ落ちる。
「お父さん!さっきの罠、大丈夫?毒…だったの?」
「い、いや…大丈夫だ。この感覚は…毒ではない、と思う」
しかしそう話すアレクの顔には若干の戸惑いが見られる。
(…なんだ、これは…全身の感覚が、やけに敏感になって…?)
「でも顔が少し赤いよ?…解毒」
『念の為に』とブレアは解毒の魔法を使うが、アレクの状態は変わらない。
「ダメか…お父さん。やっぱり、引き返す?」
「まさか。まだ1部屋目だぞ?」
不安そうな娘の顔に、アレクは強がるように立ち上がる。
しかし…
ーーズリッ
「っ、ん……♡(く…下着が、やけに擦れて…)」
重厚な鎧の下に布の下着を着ているアレク。
しかし何故か皮膚が敏感になっており、いつもは気にならない摩擦もやけに肌で感じてしまっていた。
……アレクが踏んだ罠。
それは、『敏感ガストラップ』。
その名の通り浴びた者の体を敏感にしてしまうガスで、触覚だけではなく嗅覚、味覚、痛覚などにも作用を及ぼすものだ。
それ以外にも敵の気配を察しやすくなるというプラスの面もあるが…やはりマイナスの面が大きい罠だろう。
「本当に大丈夫?…お父さん、無理しないでね。ここダンジョンなんだし…万一の時、大変だから」
「あ、あぁ。もちろん。これでもベテラン冒険者だぞ」
そしてアレクはわざとらしく胸を叩くと、魔物の亡骸を跨ぎながら次の部屋に繋がる魔法陣へと向かった。
「…お父さん、見栄っ張りだからなぁ…少し心配かも」
その大きな背中を見つめ、ため息をつくブレア。
だが短く息を吐くと、気を取り直して父の背中を追うのであった。
ーー1部屋目 魔物と罠の部屋 突破ーー
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アレク 人間・重戦士
Lv.58 性別:男 年齢:40
HP:540/570
MP:50/50
状態:敏感
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ブレア 人間・聖職者
Lv.28 性別:女 年齢:17
HP:145/145
MP:75/87
状態:良好
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