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56話〜おつかい3

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「バン、いつまであの村にいるつもりなんだ?」

 ロゼの背に乗りラスレンダールへ向かう途中、セルカはバーンダーバに聞いた。

「私がいなくても問題なく暮らしていけるようになるまでは見守るつもりだ、カルバンは皆に自分を買い戻させるべきだと言っているが、私は彼らから対価を貰うつもりはない」

『最初の収穫まではいたらいいんじゃないかい? 後はどうにかするだろ、アタイも人間が村を作っていくのは見てて面白いからもうちょい見てたいね』

「では、最初の収穫まではいるとしよう。 それまでに村の守備体勢が整えばいいのだがな」

 カルバン曰く、現界の四大大陸の内のこの南大陸は温暖な土地で年中収穫が見込めるらしい。

 現在、畑に植えているのは比較的収穫の早い芋類や栄養豊富な野菜類。

 畑がかなり早く広範囲に作れたお陰で来月には早い物は収穫出来そうだと言っていた。

 パンを作る麦は収穫に半年近くかかるので植えていない。

「守備体勢か」

 セルカが呟く。

 普通、小さな村は盗賊の襲撃や魔物の脅威などから身を護るために国の統治下に入る。

 そして、高い年貢を納める事で国から派遣される下級騎士が村の有志を募って防衛にあたる。

 それを聞いたバーンダーバは「では、そうしよう」言ったところ「まだまだ収穫の見込めないこんな村とも言えない状況じゃ無理だ」との事である。

 他には冒険者パーティを雇うという方法。

 Cランクのパーティなら1ヶ月辺りで金貨15枚ほどで、Bランクのパーティに頼むなら金貨40枚から。

 それも、1組では不安があるので2~3パーティは雇わなければならない。

 さらに、それとは別に常駐してもらう為の拠点と食料の提供。

 BランクのパーティをリーダーにCランクのパーティを2組雇ったとして、それだけでも1ヶ月に金貨100枚近い金額になる。

 村はほぼ自給自足、200人程度の村では全体でもそれだけの金額を毎月捻出するというのは現実的では無い。

「うむ、皆が安心して暮らしていけるというのが最低条件だ」

『自分の身も自分で護れないなんてね、人間は随分と弱っちいんだね』

「グルマは仕方ないさ、搾取されるために産まれてきたようなもんだからな」

 セルカが自虐的に言う。

「馬鹿な、あれほど力強く生きている彼らが弱いはずがない。 きっと、彼らのような者の中から勇者が産まれるのだろう。 魔界の者は奪うしかしないような連中ばかりだが、彼らは生み出し、育み、護る。 強さという概念には様々な意味がある事を感じる」

 セルカにしてもそうだ、自分に戦う力が無いことに絶望せずに力を得るためにいつ死んでもおかしくない迷宮に足を踏み入れている。

 力の強い者が挑めるのは当たり前の話だ。

 力の無い者が挑むからこそ、そこには測りしれない勇気がある。

 アビーはたった1人で家族を助けるために城壁を飛び出した。

 そんな少女のどこが弱いのか。

 バーンダーバはそう考えていた。

『おや、随分と行列が見えるね』

 ロゼの言葉に思考を中断させて地上を見下ろす。

 そこには長い人の列が見える。

 バーンダーバはその人の行列を見て眉を顰めた。

 見覚えのある行列だ、両手を縛られて列の前後の人間と繋がれている。

「ロゼ、下ろしてくれ」

 その声を聞いてセルカは不安を覚える、明らかにその行列は奴隷を運んでいる。

 バーンダーバの性格を考えればセルカは結果が目に見えている。

 その上、眼下に見える行列の数は現在作っている村の人数の数倍はいそうだ、また厄介な事になりそうだと思った。
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