35 / 58
35話〜脱出
しおりを挟む
セルカから瓶を受け取ったバーンダーバはすぐに親指で瓶の口を割り折ってフェイの体にかけた。
「大霊薬は体に魂さえ残っていればどんな傷も病気も癒すと言われてる、フェイの体に魂さえ残ってれば・・・」
バーンダーバに抱かれるフェイを見ながら祈るようにセルカが呟く。
「フェイ、頼む、戻ってきてくれ」
3人で動かないフェイを見つめる。
「・・・ フェイ」
呟いたバーンダーバが頭を俯かせた時、フェイの瞳がゆっくり開いた。
「バン?」
フェイが不思議そうにバーンダーバを見つめる。
一瞬だが、意識を失っていたせいで状況が分からないという顔だ。
「フェイっ!」
目を覚ましたフェイを見てバーンダーバが抱き締めた。
「ちょちょ、バンっ! どうしたんですか!」
「よかった・・・ 本当に、よかった」
バーンダーバに抱き締められたフェイは顔を真っ赤にしながらバーンダーバの肩越しにキョロキョロとロゼとセルカの顔を見る。
「全く、無事で良かったよ」
ロゼがほっと呟く。
「あぁ、本当に良かった。 それと、すまなかった。 あまりに皆が強いんで油断しちまった。 フェイがトラップを踏んだのはきっちりトラップの有無を確かめずにフェイに前衛を任せた斥候の俺の責任だ、本当にすまない」
セルカが頭を下げた。
「いや、アタイが余計な事を言ったせいだ。 フェイが強さにコンプレックスを持ってることを知ってたのにね、悪かったよ、フェイ」
ロゼが申し訳なさそうにフェイを見る。
「いえ!そんなっ! 元はと言えば私が戦うと言い出したんですから、悪いのは私です、ご迷惑をかけてすみませんでした」
『いや、我がついていながらざまぁ無かった。 迷宮の支配者といえども、自分の敵ではないだろうとタカをくくっていた。 すまない』
フェムノもいつになく声に元気が無い。
ゴゴゴゴゴゴゴっ!!
全員が項垂れて反省会をしていると迷宮中から地鳴りが響いてきた。
「なんだ!?」
地面や天井のあちこちに亀裂が走る!
「まさか、迷宮が崩壊しようとしてんのか!?」
セルカが不安そうに天井を見上げる。
パラパラと落ちてくる破片に顔を顰めた。
「バンが床を撃ち抜いて大穴を開けたのが不味かったんじゃないかい?」
ロゼがこのフロアへ来るのにバーンダーバが開けた大穴を見上げて言った。
『そういえば来るのが異常に速いと思ったら穴を開けて来たのか! 我でも壁の向こうを感知出来なかった程のぶ厚い壁に!?』
「今はそんなのどうでもいいだろっ! どうすんだ? このままじゃ生き埋めだぞ! 」
セルカが騒ぐ。
「大丈夫だ、私が傍にいるかぎり、もう誰も傷つけさせん」
フェイを離して立ち上がり、バーンダーバが弓を具現化して天井に向ける。
「無茶だろ! 地中の何十メートル下にいるかも分からない上にここは次元の大神が造った迷宮だ! 言っちまえば次元に穴を開けるようなもんだぞ!」
セルカの言葉を聞いてもバーンダーバは構えを変えない。
集中力を高め、深呼吸する毎にバーンダーバの纏う魔力が高まりバチバチと爆ぜる。
「もう、大切な者を失うのは、嫌だ!」
その言葉と共に天井に向かって矢を放った!
どおおおおおおおおぉっ!!!
それは矢と言うよりも魔力の奔流だった。
バーンダーバから放たれる継ぎ目の無い強大な矢が迷宮の天井を凄まじい勢いで削っていく!
落ちてくる岩が地面に付く前に消しさられる程の矢の魔力の奔流は砂煙さえも起こすことが無い。
「お"お"お"お"ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
バーンダーバの咆哮と迷宮を穿つ轟音。
3人は驚愕しながらそれを見ていた。
天井には半径10メートル程の穴がどんどんと地上に向かって開こうとしている!
『馬鹿な、なんという魔力だ・・・』
フェムノが呟いた時、バーンダーバの矢が止まり力を使い果たしたのか地面に膝をついて倒れた。
ロゼがすぐに龍に姿を変えて、倒れたバンを口に咥えた。
「フェイ、セルカ、乗んな! 早くっ!」
フェイとセルカが飛び乗ったと同時にロゼが力強く羽ばたいて飛んだ。
バーンダーバの開けた大穴はしっかりと地上まで抜けていた。
見あげれば満月が見えていた。
どんどんと亀裂の走っていく迷宮の大穴を天に向かって風を切るように飛ぶ!
荒野の上空まで飛んだところでバーンダーバを除く全員が地上の迷宮を見下ろした。
内部が崩壊したのか、大穴から土煙を吐き出したかと思うとズズンと地面を揺らして辺り一帯が陥没した。
その範囲は数十キロに及びそうだ。
飛び出した大穴も崩れ落ちた。
フェイとセルカ、ロゼはもうもうと立ち込める砂埃を見下ろして言葉を失っていた。
「荒野に降りたら危ないかもしれない、少し離れた所に降りよう」
ボソリと呟いたセルカの言葉にロゼが南に向けて進路をとった。
「大霊薬は体に魂さえ残っていればどんな傷も病気も癒すと言われてる、フェイの体に魂さえ残ってれば・・・」
バーンダーバに抱かれるフェイを見ながら祈るようにセルカが呟く。
「フェイ、頼む、戻ってきてくれ」
3人で動かないフェイを見つめる。
「・・・ フェイ」
呟いたバーンダーバが頭を俯かせた時、フェイの瞳がゆっくり開いた。
「バン?」
フェイが不思議そうにバーンダーバを見つめる。
一瞬だが、意識を失っていたせいで状況が分からないという顔だ。
「フェイっ!」
目を覚ましたフェイを見てバーンダーバが抱き締めた。
「ちょちょ、バンっ! どうしたんですか!」
「よかった・・・ 本当に、よかった」
バーンダーバに抱き締められたフェイは顔を真っ赤にしながらバーンダーバの肩越しにキョロキョロとロゼとセルカの顔を見る。
「全く、無事で良かったよ」
ロゼがほっと呟く。
「あぁ、本当に良かった。 それと、すまなかった。 あまりに皆が強いんで油断しちまった。 フェイがトラップを踏んだのはきっちりトラップの有無を確かめずにフェイに前衛を任せた斥候の俺の責任だ、本当にすまない」
セルカが頭を下げた。
「いや、アタイが余計な事を言ったせいだ。 フェイが強さにコンプレックスを持ってることを知ってたのにね、悪かったよ、フェイ」
ロゼが申し訳なさそうにフェイを見る。
「いえ!そんなっ! 元はと言えば私が戦うと言い出したんですから、悪いのは私です、ご迷惑をかけてすみませんでした」
『いや、我がついていながらざまぁ無かった。 迷宮の支配者といえども、自分の敵ではないだろうとタカをくくっていた。 すまない』
フェムノもいつになく声に元気が無い。
ゴゴゴゴゴゴゴっ!!
全員が項垂れて反省会をしていると迷宮中から地鳴りが響いてきた。
「なんだ!?」
地面や天井のあちこちに亀裂が走る!
「まさか、迷宮が崩壊しようとしてんのか!?」
セルカが不安そうに天井を見上げる。
パラパラと落ちてくる破片に顔を顰めた。
「バンが床を撃ち抜いて大穴を開けたのが不味かったんじゃないかい?」
ロゼがこのフロアへ来るのにバーンダーバが開けた大穴を見上げて言った。
『そういえば来るのが異常に速いと思ったら穴を開けて来たのか! 我でも壁の向こうを感知出来なかった程のぶ厚い壁に!?』
「今はそんなのどうでもいいだろっ! どうすんだ? このままじゃ生き埋めだぞ! 」
セルカが騒ぐ。
「大丈夫だ、私が傍にいるかぎり、もう誰も傷つけさせん」
フェイを離して立ち上がり、バーンダーバが弓を具現化して天井に向ける。
「無茶だろ! 地中の何十メートル下にいるかも分からない上にここは次元の大神が造った迷宮だ! 言っちまえば次元に穴を開けるようなもんだぞ!」
セルカの言葉を聞いてもバーンダーバは構えを変えない。
集中力を高め、深呼吸する毎にバーンダーバの纏う魔力が高まりバチバチと爆ぜる。
「もう、大切な者を失うのは、嫌だ!」
その言葉と共に天井に向かって矢を放った!
どおおおおおおおおぉっ!!!
それは矢と言うよりも魔力の奔流だった。
バーンダーバから放たれる継ぎ目の無い強大な矢が迷宮の天井を凄まじい勢いで削っていく!
落ちてくる岩が地面に付く前に消しさられる程の矢の魔力の奔流は砂煙さえも起こすことが無い。
「お"お"お"お"ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
バーンダーバの咆哮と迷宮を穿つ轟音。
3人は驚愕しながらそれを見ていた。
天井には半径10メートル程の穴がどんどんと地上に向かって開こうとしている!
『馬鹿な、なんという魔力だ・・・』
フェムノが呟いた時、バーンダーバの矢が止まり力を使い果たしたのか地面に膝をついて倒れた。
ロゼがすぐに龍に姿を変えて、倒れたバンを口に咥えた。
「フェイ、セルカ、乗んな! 早くっ!」
フェイとセルカが飛び乗ったと同時にロゼが力強く羽ばたいて飛んだ。
バーンダーバの開けた大穴はしっかりと地上まで抜けていた。
見あげれば満月が見えていた。
どんどんと亀裂の走っていく迷宮の大穴を天に向かって風を切るように飛ぶ!
荒野の上空まで飛んだところでバーンダーバを除く全員が地上の迷宮を見下ろした。
内部が崩壊したのか、大穴から土煙を吐き出したかと思うとズズンと地面を揺らして辺り一帯が陥没した。
その範囲は数十キロに及びそうだ。
飛び出した大穴も崩れ落ちた。
フェイとセルカ、ロゼはもうもうと立ち込める砂埃を見下ろして言葉を失っていた。
「荒野に降りたら危ないかもしれない、少し離れた所に降りよう」
ボソリと呟いたセルカの言葉にロゼが南に向けて進路をとった。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる