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12話〜初任給

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「あら、お帰りなさい。 早かったですねー」

バーンダーバとフェイが冒険者ギルドに入ってきたのを見て受付嬢のジュリーが声をかけた。

「随分と大荷物ですね」

ジュリーがバーンダーバの背負う荷物を見た、フェイが即席で作った背負子である。

木の棒を組んでベルランの蔦で固定した物だ。

そこには狼人間ライカンスロープの毛皮が積まれている、ベルランの詰まった麻袋と大空の騎士ナイトイーグルの羽根の詰まった麻袋はフェイが抱えていた。

「あぁ、この毛皮はここで引き取って貰えるのか?」

背中の毛皮をバーンダーバが指し示す。

「それはなんの毛皮ですかー?」

「ライカンスロープだそうだ、6体分ある」

「ライカンスロープを6体もっ!」

「それで頼みがあるんだが、コレを解体する時に灰色剣グレイソードという冒険者パーティに助けて貰ったんだ。 諸事情で礼をする前に別れてしまってな。 3枚分の毛皮の代金を彼等に渡して欲しいんだが、頼めないか?」

「グレイソードですか、分かりました」

「ありがとう、あと、コッチは採集依頼のベルランと大空の騎士ナイトイーグルの羽根だ」

フェイがカウンターに麻袋を置いた。

「ナイトイーグルですか、そちらも中々の高級素材ですねー。 あっ、すみません、素材やアイテムの買取は奥のカウンターでお願いします」

ジュリーが思い出したように中央奥の扉を手で示した。

「あぁ、そうだったのか、すまない」

「いえいえー、私の方こそボケっとしてました、すみません。 お疲れ様でした」

奥の扉を開けて入るとカウンターがあり、カウンターの奥にはそこら中に木箱が置いてあってその中に鉱石や毛皮。

羽根や骨、恐ろしくデカい甲殻類の甲羅などが所狭しに木箱に詰められて置いてあった。

「すごいな」

呆気にとられた顔でバーンダーバが部屋を眺める。

「おや、初めまして。 素材の買取かな?」

眼鏡をかけた細身の男がコチラに気づいた。

「あぁ、コレの買取をお願いしたい」

バーンダーバが背負子を下ろしてカウンターに載せた、フェイも麻袋を3つカウンターに載せる。

ベルランの麻袋が2つにナイトイーグルの羽根が1袋。

「おぉ、コレはライカンスロープですね。 素晴らしい、殆ど傷がありませんね。 剥ぎ方が少し気になりますが、切り口は実に綺麗だ」

まじまじと置かれた品を定めていく。

「コッチはなにかな?」

男は麻袋を開いた。

「ベルランか、丁寧に摘み取っているなぁ。 愛を感じるよ、毟るように取るヤツが多くてね。 乾燥させて砕くから品質に違いはないと思われがちなんだけど、摘んだ時に傷が無い方が香りが良くなるんだ。 君達はいい冒険者になるよ」

ニコニコしながら検分していく、その男に言葉にバーンダーバも嬉しそうな顔をした。

「そんな風に褒められると嬉しいな、毛皮の取り方が良くないのか? それなら後で教えてもらえないか?」

「おぉ勿論、大歓迎だよ。 私はワイナーだ、よろしくね。 おー、素晴らしい。 この羽根は・・・ ナイトイーグルかな?」

ワイナーは羽根をつぶさに見て言い当てた。

「凄いな、羽根を見ただけで分かるのか!」

「ありがとう、褒めてもらえて嬉しいよ。 どれも良い品だ、買取金額は色を付けさせて貰うよ」

「本当か、ライカンスロープの毛皮の代金はさっき受付のジュリーにも頼んだんだが、グレイソードという冒険者パーティに半分渡して欲しいんだ。 解体を殆ど手伝って貰った」

「グレイソード、ポールのところか。 彼等にライカンスロープの毛皮3枚分とは、気前がいいね」

「ポールを知っているのか?」

「あぁ、彼等はここを拠点にしている冒険者だからね。 顔はよく見るよ」

「そうか、ではよろしく頼む」

「ライカンスロープの毛皮は普段は金貨8枚で取引しているが、今回は金貨10枚で引き取るよ。 それからベルランの花は麻袋1つで金貨1枚だが、これには10イマ銀貨を3枚付ける。 ナイトイーグルの羽根は金貨7枚かな、それで良いかい?」

「勿論だ、ありがとう」

「それじゃあ、全部で金貨39枚と10イマ銀貨が6枚。 確かめてくれ」

トレーに置かれた金貨と銀貨を見てバーンダーバは嬉しそうに笑った。

「ありがとう、今度、依頼に行く前に毛皮の取り方を聞きに来る。 それから、ポール達が来たらよろしく言っておいてくれ」

「あぁ、任せてくれ。 金貨30枚間違いなく渡しておく、待ってるよ」

礼を言って部屋を出た。

「フェイ、私はよく分からないから金の管理を頼めないだろうか」

バーンダーバはそう言って金貨の入った袋をフェイに渡す。

「えぇ、私が、こんな大金持つの怖いな」

「そうか、コレは多いのか?」

「それだけあれば2ヶ月は働かないで暮らせますよ」

「ほう、凄い、のか?」

「あはは、まぁ、慣れるしかないですね。 それよりも服を買いに行きましょう、今ならまだお店も開いていますし」

「おぉ、そうだったな」

バーンダーバの手を引いてフェイが冒険者ギルドから外へ出る、その仲睦ましい様子を微笑みながら受付のジュリーは眺めていた。
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