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第14話・クーリーン・後半
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羽根のように軽いはずのミスリルのショートソードが重い。
いつもなら、誰よりも軽やかに地面から離れる足がまるで蜘蛛の糸に絡め取られているかのように離れない。
それでも、なんとか自分にまっすぐ向かってくる棒を避け。
水平に振り抜かれる短剣を下がって躱し。
振り下ろされる棍棒の狙いを左右に外す。
半分、朦朧とした意識の中で最小限の動きでクーリーンは小鬼の単調な攻撃を躱しながらその動きの中で愛刀を振り、力むことなくその小さな首を撥ねていた。
どれくらいの時間が経ったのか、いつの間にかクーリーンの足元には累々とゴブリンの屍が横たわり、魔力を霧散させて乾いた残骸をのこして消えていった。
クーリーンは疲れきった頭で、それでも舞うように動きながらゴブリンの首を落としていく感覚に自分でも驚いていた。
ゴブリンの数が半分よりも少なくなった時、クーリーンはやっと気付いた。
ゴブリンの動きがどいつもこいつも決められたように繰り返し繰り返し同じ動作で攻撃を繰り出して来ることに。
棒を持っている者はまっすぐに突くしか攻撃せず。
棍棒を持っている者は上からまっすぐ振り下ろし、短剣を持っている者は横に払うしかしない。
普段の自分ならそんな相手の動きなど見ることも無く快足で置き去りにして首を撥ねていた。
この空間では重力のせいですぐに体力を消耗して足を地面にベッタリとつけたまま戦うしかない。
クーリーンはゴブリンの動きを読んでその攻撃にカウンターを合わせて首を撥ねていく。
最後の一匹の首を撥ねた時、クーリーンは自分の両手を見下ろして信じられないという顔をしていた。
「まさか、ビリーのヤツ・・・ アタイにこれをさせる為に?」
最初のビリーの挑発を受けてまんまといつも以上に足を飛ばしてゴブリンを斬り続けた。
結果として、いつもより重い重力にあっという間にクーリーンはへばり、足を止めた最小限の動きで戦う事になった。
そして、ゴブリンの異常と言ってもいい単調な動きのお陰でなんとか今もクーリーンは生きてその場に立っている。
クーリーンは面白く無さそうな表情を浮かべた、完全にビリーの手のひらの上で踊っていた自分に気付いたのだ。
その上、その状況に楽しんでいる自分までいた。
相手の動きを読んでそこへカウンターを入れる。
それは今までクーリーンが感じた事の無い浮遊感だった、盤上で相手を完膚無きまでに叩き潰したような心地。
広間を後にして通路を進みながらクーリーンは何度もその感覚を頭の中で反芻していた。
薄暗く、狭い通路の奥、扉の手前に魔力球が浮かんでいる。
近づくと、案の定ビリーの声が響いてきた。
〈やぁ、クーリーン。 そこにいるということはゴブリンの動きを見切れたみたいだね。 どうだい? いつもと違った戦いは? きっと君はそれなりに楽しんでるんじゃないかな〉
クーリーンはまた舌打ちを一つした。
〈ふふ、さて、せっかくだからこの先にも相手を用意しておいた。 今の君なら楽勝かもしれないけど、ま、ゆっくり遊んでいってくれ〉
ビリーの声が止み、魔力球が消えると扉がゆっくりと押し開かれた。
その先には、ギラりと光る鋭い槍。
鈍い切れ味では無く、触れた瞬間に血を吹きそうな刃を付けた短剣。
一撃で相手を両断しそうな重厚な厚みのある斧。
先程までの幾らかくらっても致命傷になり得ない武器では無く、一撃で命を奪い取る武器を手に持ったゴブリンがそこにいた。
妖しい光を放つ瞳でいっせいにクーリーンを舐めるように見つめてくる。
クーリーンはニヤリと不敵に笑うとミスリルのショートソードを引き抜いて広間に躍り出た。
いつもなら、誰よりも軽やかに地面から離れる足がまるで蜘蛛の糸に絡め取られているかのように離れない。
それでも、なんとか自分にまっすぐ向かってくる棒を避け。
水平に振り抜かれる短剣を下がって躱し。
振り下ろされる棍棒の狙いを左右に外す。
半分、朦朧とした意識の中で最小限の動きでクーリーンは小鬼の単調な攻撃を躱しながらその動きの中で愛刀を振り、力むことなくその小さな首を撥ねていた。
どれくらいの時間が経ったのか、いつの間にかクーリーンの足元には累々とゴブリンの屍が横たわり、魔力を霧散させて乾いた残骸をのこして消えていった。
クーリーンは疲れきった頭で、それでも舞うように動きながらゴブリンの首を落としていく感覚に自分でも驚いていた。
ゴブリンの数が半分よりも少なくなった時、クーリーンはやっと気付いた。
ゴブリンの動きがどいつもこいつも決められたように繰り返し繰り返し同じ動作で攻撃を繰り出して来ることに。
棒を持っている者はまっすぐに突くしか攻撃せず。
棍棒を持っている者は上からまっすぐ振り下ろし、短剣を持っている者は横に払うしかしない。
普段の自分ならそんな相手の動きなど見ることも無く快足で置き去りにして首を撥ねていた。
この空間では重力のせいですぐに体力を消耗して足を地面にベッタリとつけたまま戦うしかない。
クーリーンはゴブリンの動きを読んでその攻撃にカウンターを合わせて首を撥ねていく。
最後の一匹の首を撥ねた時、クーリーンは自分の両手を見下ろして信じられないという顔をしていた。
「まさか、ビリーのヤツ・・・ アタイにこれをさせる為に?」
最初のビリーの挑発を受けてまんまといつも以上に足を飛ばしてゴブリンを斬り続けた。
結果として、いつもより重い重力にあっという間にクーリーンはへばり、足を止めた最小限の動きで戦う事になった。
そして、ゴブリンの異常と言ってもいい単調な動きのお陰でなんとか今もクーリーンは生きてその場に立っている。
クーリーンは面白く無さそうな表情を浮かべた、完全にビリーの手のひらの上で踊っていた自分に気付いたのだ。
その上、その状況に楽しんでいる自分までいた。
相手の動きを読んでそこへカウンターを入れる。
それは今までクーリーンが感じた事の無い浮遊感だった、盤上で相手を完膚無きまでに叩き潰したような心地。
広間を後にして通路を進みながらクーリーンは何度もその感覚を頭の中で反芻していた。
薄暗く、狭い通路の奥、扉の手前に魔力球が浮かんでいる。
近づくと、案の定ビリーの声が響いてきた。
〈やぁ、クーリーン。 そこにいるということはゴブリンの動きを見切れたみたいだね。 どうだい? いつもと違った戦いは? きっと君はそれなりに楽しんでるんじゃないかな〉
クーリーンはまた舌打ちを一つした。
〈ふふ、さて、せっかくだからこの先にも相手を用意しておいた。 今の君なら楽勝かもしれないけど、ま、ゆっくり遊んでいってくれ〉
ビリーの声が止み、魔力球が消えると扉がゆっくりと押し開かれた。
その先には、ギラりと光る鋭い槍。
鈍い切れ味では無く、触れた瞬間に血を吹きそうな刃を付けた短剣。
一撃で相手を両断しそうな重厚な厚みのある斧。
先程までの幾らかくらっても致命傷になり得ない武器では無く、一撃で命を奪い取る武器を手に持ったゴブリンがそこにいた。
妖しい光を放つ瞳でいっせいにクーリーンを舐めるように見つめてくる。
クーリーンはニヤリと不敵に笑うとミスリルのショートソードを引き抜いて広間に躍り出た。
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