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 デパートの外では、パトカーと救急車がけたたましくサイレンを鳴らす音が響いていた。
「何か……あったのかしら?」
「なんだか騒がしいね」
 映画館の通りとは反対側の通りの方で、人だかりができているようだが、一瞥くれただけレオンはそれに興味を示した様子を見せず、まっすぐに映画館へと向かって歩いていた。
 普通は何事かと様子を伺う仕草くらいはしそうなものだが――
――『お仕事』関連なのかしら?
 そうは思ったが、深く追求すると余計なことを喋ってしまいそうな気がしたため、百合亜は口を噤んだ。


 二人が訪れた場所はキネマ阿修羅という、鮮やかな看板に彩られた規模の大きな映画館だった。
 恋愛映画、ミステリー、子ども向けのアニメ映画、アクションと……いくつかの種類がある中、目玉は恋愛映画となっていて、その列に並んでいるのはカップルが多かった。
――やはり、女性が好むものということは、定番の恋愛映画なのだろうか?
 時間だけしか意識していなかったため、何の映画なのかをしっかり確認していなかったことを思い出し、レオンはジョセフに渡されたチケットを取り出した。
「……⁉」
 ぎょっとして固まるレオンに、百合亜は首を傾げた。
「あ、いや、部下に手配してもらったんだが、どうも間違えたようだ。ええっと、別のに――」
 と、言いかけたところで「まあ!」と、百合亜は感嘆の声を上げた。
「わたし、こちらを観てみたかったんですの! 話題でしたものね」
「……え?」
 明かにエラーなチョイスに思えるにもかかわらず、目を輝かせている様子を見ると、どうもレオンに気を遣っているようではない。
「こういった映画がお好みで?」
「ええ……」
 百合亜ははにかんだような笑みを浮かべていた。
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