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 呼び鈴を鳴らす音が、診察室に設けられた伝声管から聞こえてくる。
「ドクターコール……」
「あ、先生をお呼びなんですね……? にゅ、入院の患者さんかしら?」
 さりげなく、鹿島から距離を取りながら百合亜が安堵の表情を浮かべた。
「家畜同然の奴らが貴重な診療を妨害してくるなんてね。でも、この荒れようは放ってはおけないな」
 激しく鳴らされるベルの音と、叫び声と鳴き声……気が狂ったような笑い声が耳に入り、百合亜は思わず身震いした。
「――何人か、心を病んでいる患者が居てね。何かあったかな。少し待って。すぐに戻るよ」
 善良そうな笑顔を浮かべたままそう言い残すと、鹿島は診察室を出て行った。
――な、何かしら、ジョセフさんの仕業よね……?
 ここに居ろと言われても、長居する気など毛頭なかった。
 何をされるか分かったものではない。
 百合亜は震える身体を抱き、鹿島の足音が聞こえなくなったところで診察室を飛び出した。
 受付では何かしらの特殊なガスが蔓延していて、クリニックのスタッフたちが倒れていた。
――すごい、なんか本格的っていうか……。
 ハンカチで口元を押さえ、百合亜は診療所から外へ通じる扉を開けた。
 どういうわけか、胸が高鳴るのを感じた。
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