見合い相手は殺し屋でした⁉ 幸せを掴むスリリングなメソッド。

八波琴音

文字の大きさ
上 下
17 / 40

16

しおりを挟む
「ゆっくり話すっつっても、俺から語れることは何もねえよ。つか、千蔵せんぞうくんの意志も聞かずにべらべら喋るわけにはいかねえだろ」
 マチルダの店でジョセフが憮然として言った。
 このお嬢様が突然愛想をつかし、レオンと距離を取ったら――その原因が自分にあると悟られたら、殺されてしまうかも知れない。
「では、今からお聞きすることはわたしの胸に留めます。決して口外は致しません。そうしたらどうでしょう?」
「――口外しないっつっても、あんたが千蔵くんから離れていきゃあ、ヤツにもどういう状況かは想像つくだろ。俺が喋ったってのはモロバレだからな、そんなリスクがあるのに――」
「離れなければよろしいのでしょう?」
「――あ?」
 自信満々の笑みに、ジョセフは眉間に皺を寄せた。
「わたし、何を聞いても千蔵さまとのご縁を断つつもりはありません。いずれは伴侶に――そう思っておりますわ」
 茶色がかった濁りのない瞳に見据えられ、ジョセフはたじろいだ。
「――わたし、本気ですから」
――半端な想いじゃないってことか。レオンといい、このお嬢といい……。
 出会ってからさほど時間が経っていないというのに、どういうわけか強く惹かれ合っている様子だ。
――ビビビっときた、ってヤツなのか?
 それを不思議に感じながら、口を開く。
「んじゃあ、その条件として――」
「……条件、ですか?」
鹿島柴三郎かしましばさぶろうって医者に接触して、ヤツの様子を探るのに協力してくれ。欲しい情報を得ることが出来たら、あんたの心意気を認めてヤツのことを喋ってやるよ」
「鹿島先生……?」
 医師の鹿島といえば、千蔵が立ち寄ったクリニックの医院長だ。
「あの、鹿島先生が何か……?」
「あんたがバシッとリサーチすることが出来れば、おのずと見えてくるんじゃねえのか? 千蔵くんが何を成そうとしているのか」
「鹿島先生を探る……」
 何かを探る対象に思えない、善良な町医者だと思っていたが、そうではないのだろうか。
「どうだ? それが出来ないのなら千蔵を探るのは諦めて、フツーの付き合いに留めてくれ。もちろん、尾行するのもナシ、この話も聞かなかったことにすること」
「……でも……」
「断るっていうんなら、もうここまでだ。ここまで尾行けてきたことも、ヤツを探ってることも千蔵に話す。そういうことになれば――」
「脅してらっしゃるの?」
「脅し? 人聞き悪いな。取引だよ。ここまで来たんだ。簡単に退いてもらっちゃ困る」
「……分かりましたわ。応じます。鹿島先生の調査に協力致します」
「あんたが今から成すことは他言無用だ。もちろん、千蔵にも」
「……分かっていますわ」
「とにかく、客はあんたらしかいないし、こっちはこっちで調査する必要があるわけだ。店は閉めるよ」
 マチルダは店じまいをすると、カウンターの内側に入り、彼らに手招きをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

ひきこもり瑞祥妃は黒龍帝の寵愛を受ける

緋村燐
キャラ文芸
天に御座す黄龍帝が創りし中つ国には、白、黒、赤、青の四龍が治める国がある。 中でも特に広く豊かな大地を持つ龍湖国は、白黒対の龍が治める国だ。 龍帝と婚姻し地上に恵みをもたらす瑞祥の娘として生まれた李紅玉は、その力を抑えるためまじないを掛けた状態で入宮する。 だが事情を知らぬ白龍帝は呪われていると言い紅玉を下級妃とした。 それから二年が経ちまじないが消えたが、すっかり白龍帝の皇后になる気を無くしてしまった紅玉は他の方法で使命を果たそうと行動を起こす。 そう、この国には白龍帝の対となる黒龍帝もいるのだ。 黒龍帝の皇后となるため、位を上げるよう奮闘する中で紅玉は自身にまじないを掛けた道士の名を聞く。 道士と龍帝、瑞祥の娘の因果が絡み合う!

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...