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お嬢様の二人言

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「じゃあ遥、また明日」
「おう、またな」
学校も終わり辰彦と学校近くの公園に来ていた。
帰宅部エースの俺。
サッカー部リアルエースの親友(仮)の部活が今日は休みだった為、特にする事も無いが買い食いと無駄話をしていた。
夕日が沈み始めた為、今日は解散する事にした。


今日はアイツがいないから、静かで助かるよ。
いつもは今朝のように意味の分からない会話をし、俺がそれを聞き流しながら歩いて自宅まで帰るが、今日奴はアルバイト!
あぁ、毎日シフト入っててくれ・・・

しかしまぁ小、中、高校まで登校と下校を共にするとは思わなかったな。
自宅が隣で親同士の仲がいいからなんとなくいつも一緒にいたが・・・

「アイツ彼氏とか作んないのかな?」

何度か「告白された!」と香織が言っていたが、付き合ったと言う話は聞いたことがない。
意外とモテるんだよな、アイツ。
告白された事のない俺に告白される度に報告と自慢をしてくる・・・全く何がしたいのやら・・・

まぁ今いない香織のことなんてどうでもいい。
俺はこの貴重な一人きりの帰宅時間にするべき事がある。
最近聴き始めた海外アーティストの曲を雰囲気だけでも覚える事!!

《赤城君は普段、どんな音楽聴いてるの?》
なんて質問が来た時に「アニソン・・・・」って答えるよりも「最近は”マイケル”かな、一周回って”beat it”にハマってるんだ」って答えた方がカッコイイに決まってる。

カバンからワイヤレスイヤホンを取り出し、耳に装着。

ミュージックスタート!

と共に【RAIN】の通知音が鳴った。
俺はひな壇芸人のようにその場で転びそうになったが何とか耐え、スマホの画面を確認する。
画面上部には香織からRAINのメッセージ内容が表示されていた。

『はる!!大変だよ!』
!?
香織に何かあったのか!?
とにかくRAINで状況を・・・

『なんかあったのか!?』
『宿題のノート、教室に忘れちゃった!!!!』
『勝手に困れ』
心配して損した・・・
こんな理由で俺のマイケルを邪魔しやがって。

『はる!はるぅぅぅぅ!!!』
止まらない香織からの通知音を止める方法・・・

『あーもうわかったよ、取りに行けばいいんだろ?』
『流石はる!ありがとう!!』
『大好きだよ~』
『へいへい』
その返信もいつものように流し・・・・文面でも心臓に悪いからやめろ。

俺は音楽を再生し、わかる箇所だけ口ずさみながら学校に戻った。
「ビレー・ビレー・ビレー・ビレー・ノウワウォンツフンフフンフフ~♪」
後々考えたらかなり不審者的行動だったな・・・

* * * *

六月くらいが一番日が沈むのを遅く感じる気がするなぁ
グランドでは野球部が「一、二!」の掛け声でランニングをしている。
校内には吹奏楽部と軽音楽部の楽器音が響き渡っていた。

俺は運動靴から上履きに履き替え、香織の教室である【1-D】に向かった。
香織の席って確か、窓際の二列目だっけか?

俺は自身の教室である【1-B】の前を通り【1-D】に向かおうとした時、自分の教室から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「はぁ、またみんなに怖がられちゃったよぉ」
「仕方ないさ、あんな生徒がいる前で怒鳴ったんだから」
「うー、だってあぁ言わないと飯田”さん”もみんなも言う事聞いてくれないんだもん・・・」

なんだこの声?一つは聞き覚えのある綺麗な声・・・青崎だ。
授業で返事をしたり、挨拶の時くらいしか声を聴いた事はなかったけど・・・・普段の青崎からは考えられない砕けた話し方だ。
普段はクールに話す青崎・・・・まぁ今朝の事は別枠としてカウントしよう・・・
もう一聞こえてつくる声は少し低い声音だが、どことなく青崎の声に似ている気がする。

「あの声は喉も疲れるし、汚い言葉使いだから言いたくなかったのに」
「なんでみんな言う事聞いてくれないのかな?」
「それは、楓は青龍会会長の娘だし、みんな楓の事が実の娘くらい心配なんだよ」
「それは・・・わかってるけど・・・もう、ぶつかった男の子にも謝りたかったのに」

何故か教室の扉に背を当て隠れてしまった俺は会話を盗み聞いた。
これが青崎?今朝の印象は影も形もない。
声だけ聴けば少し内気な女の子だ・・・

「はぁ・・・ついに赤城君にも変な目で見られちゃったし・・・」
「いつも挨拶してくれるのに、今日は・・・・何も言ってくれなかった・・・」
お、俺!?確かに普段目が合ったら挨拶してたけど、今日は今朝のインパクトが衝撃的過ぎて、なんて声かければいいか迷ってただけなんだが・・・

「赤城君ねぇ・・・彼も男の子だから楓の体に欲情しちゃったんでしょ」
「嘘っ!!最低ー!赤城君は他の人と違うって信じてたのに!」
「いや、ちょっと待て!ーーーーーーーーえ?」
言われもない事に何も考えず教室に突入してしまったが、目の前には驚くべき光景が広がっていた。

『睨むだけで不良を退かせ、百人規模の暴走族を一人で壊滅させた』と噂の青崎が・・・・

教室でひとり、ぬいぐるみと会話をしていた・・・

「あ・・・ペンタゴン・・・」
青崎の両手にはスマホと同じくらいの大きさのぬいぐるみ、ペンギンとドラゴンのハイブリット、胸元に五角形のマークが付いた【ペンタゴン】がいた。
ほとんど無意識にそう呟いた俺だったが、目の前の青崎は首を九十度回転させこちらを見るや否や顔を赤面させた。

「な、な、な、な、な!?」
「あ、あか、赤城君!?」
「どうして・・・・・ここに・・・」
「忘れ物を取りに来たんだけど・・・・」
気まずい・・・目の前に普段のイメージぶち壊しプラス炎のように赤く赤面した女の子がいるのだから、当然とわかって欲しい・・・

「き、聞こえました・・・?」
「えっと・・・その・・・・ごめん?」
何故かは分からないが謝らないといけない気がした。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」
その返事と共に青崎は、俺が女の子ならスカートがめくれそうなスピードで走り去っていった・・・
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