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副団長の秘密のお仕事
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バルナバーシュは階段を駆け上がり、急いでドプラヴセの隠れ家の中へと入った。
「くっ……ああぁッッッ……だれ…が……おまえ…なんか……」
奥から聞こえてくる声を聞いて、思わず硬直する。
(クソっ!!先を越されたか……)
バルナバーシュは顔を顰めて舌打ちする。
よく見れば、風呂場に続く扉は蹴破られたのかおかしな角度を向いているし、その下にはルカの剣が、鞘から出されることもなくそのまま転がっていた。
『運び屋』ごときにルカが剣を抜くこともできないとは、通常ではとても考えられない異常事態だ。
開いたまま扉の向こうの床には、脱ぎ棄てられた服や、あの得体のしれない濃墨の貢物が散らばっている。
食われる前にむしり取られた鳥の羽みたいだ。
「う"あ"あ"あ"ああぁぁぁっっっっ…………」
バルナバーシュとて、初めての時は非道いことをした覚えはあるが、こんな濁音の付くような悲鳴は上げさせたことはない。
(クズ野郎め……)
「……だか…れて……た…まるかっ……」
どうやらまだ一線は越えていないようだ。
ルカは最後まで抵抗している。
バルナバーシュが別れ際にあんなことを言わなかったら、もしかしたらルカもここまで苦しまなかったのかもしれない。
奥の部屋へと入るが、気付かれた様子はない。
サイドテーブルの夜光石に照らし出され、『運び屋』の背中越しにルカの上半身が少し見えた。
手首をベッドのフレームに拘束され、長い髪が顔に掛かって表情はよくわからないが、片方だけ高く持ち上げられた足がビクビクと痙攣しているのが見える。
あれから何度もルカを抱いたバルナバーシュには、今どんな状態にあるのか容易く想像がついた。
「よく言ったな。てめぇの往生際の悪さにはつくづく呆れちまうぜ。覚悟はいいな?」
「……ひっ……」
先程から耳に入って来ていたが、クズ男のあんまりな言葉に、バルナバーシュは吠えた。
「——往生際が悪いのはどっちだよ? ここまで拒否られてんのに、まだ気付かねえのか? ルカはお前なんかに死んでも抱かれたくねえんだよっ!」
そう叫ぶと、『運び屋』の首根っこを掴んで片手でベッドの外に放り投げる。
「——いってぇな!? なにしやがるっ!!」
いきなりの乱入者に『運び屋』は怒鳴り返すが、その人物の正体がわかると、驚愕して呟いた。
「……どうしてあんたがここに……?」
だがそんな呟きなど、ルカの身体に施されている、許しがたい所業を目にしたバルナバーシュには聞こえない。
「この身体は俺専用だ。斬られたくなかったなら、今すぐこの部屋から出ていけ……」
一瞬で剣を抜くと、『運び屋』の鼻先に突きつけた。
人は本気で怒ると、掠れて声が低くなる。
「言っとくけど、ヘマをしたのはそいつだか——」
「——黙れ、クズ野郎。言い訳は後で聞いてやる」
「…………」
バルナバーシュの鬼のような形相に『運び屋』は押し黙ると、渋々と部屋から退散した。
「ルカ、大丈夫か?」
改めて、ルカの身体を見下ろす。
「……バ…っ…ル……」
ゆっくりと青に茶の滲んだ瞳がバルナバーシュへと向けられる。
浅い息を繰り返す汗に濡れた身体は、熱病に浮かされた患者のようだ。
真っ赤に腫れ上がった性器には、射精できないよう黒い革紐が幾重にも巻き付けられており、尻の穴には乗馬用の短鞭が刺さっている。
「すぐに取ってやるからな」
あんなに悲痛な叫び声を上げていたのはこれが原因だったのかと、バルナバーシュはギリギリを歯を噛み締めた。
媚薬が効いたうえに、こんなことになってさぞ辛いだろうと、まずは股間の革紐を外しにかかる。
「酷いな……痕が付いてる。可哀想に……」
くっきりと革紐の痕を付けたまま涙を流すルカの分身を、癒すように優しく舐めた。
「……駄目だッ……ジンジンする……ああっ……」
幼い子がイヤイヤするように左右に首を振りながらルカが必死に訴える。
急に血流が戻って、今までの反動が一気にきているのだろう。
「一回出しとかないと、お前も辛いだろ」
髪を搔き上げ、優しく頬を撫でて言い聞かせる。
一度射精しないとこの腫れは治まらない。
バルナバーシュは決心して、今度はルカの分身を手のひらに包み優しく擦ってやる。
「……ムリッ…そんなことしたらっ……もげるっ……」
せっかく綺麗に搔き上げた髪の毛が、振り乱されまた濡れた頬に貼り付く。
「大丈夫だから」
制止の声がかかっても手を止めることなく、優しく声をかけながら頬にキスをする。
『……クル……きちゃう……ダメっ……』
本人は必死で気付いていないようだが、母国語のツィホニー語に替わっている。
手は縛られたままだが、ブリッジをするように身体を突っ張らせ、ギリギリの所でルカはなにかを保っていた。
まるで崖っぷちにでも立たされているかのように必死だ。
それでもバルナバーシュは先走りでベトベトになった手を止めずに、グチュグチュと濡れた音を響かせる。
『うーーーっ……死ぬっ…しぬからっ……』
本人が死の恐怖を訴えている時に不謹慎かもしれないが、ルカのツィホニー語は舌っ足らずに聞こえて、めたくそ可愛い。
『大丈夫。俺がついてる』
何年ぶりに使ったかわからないツィホニー語でバルナバーシュも答える。
『あっ…あっ…くるっ……バルっ……助けてっ……うあああああぁぁぁぁっっっ!』
後ろに刺さったままだった短鞭を一気に引き抜くと、ルカは大きく身体を反らして痙攣しながら射精した。
弛緩した身体がバサッと音を立ててベッドに沈む。
『ルカ……? 大丈夫か?』
心配になって顔を覗き込むが、見開かれた瞳はなにも映していない。
目の前で手をヒラヒラとさせるが反応がない。
ルカは目を開いたまま失神していた。
しかし腫れ上がったままの性器はまだ痙攣に合わせ精液を吐き出していた。
改めて、強烈な媚薬を飲まされながらも射精を止められるという残酷な行為を施されていたルカの姿に、胸が切なく痛む。
それでもこの痴態を見て、ひどく興奮しているもう一人の自分がいる。
なんだか後ろめたい気持ちになり、バルナバーシュはまだ解いていなかった腕の拘束を外してやった。
◆◆◆◆◆
(うあぁっっっ!)
奈落の底に堕とされて、身体がバラバラなりそうなほどの衝撃を受ける。
全ての力が地の底に吸い取られていくような虚脱感に襲われ、ルカは暫く指一本も動かすことができなかった。
ぬちゃぬちゃとなんとも形容しがたい音がする。
視線をそちらに向けると、暗闇の中で蠢くナニかが、こちらに近付いて来るのが見えた。
牛くらいの大きさのソレは、足を持たずナメクジのように身体を這わせながら進む。
ルカは腰が抜けたままの身体で後退るが、なかなか思うように動かない。
(……あっ!?)
近付いて来る物体に目を凝らすと、肉色をした皮膚に人の顔がいくつも付いている。
その中には、初めてルカを犯した男の顔も、その後に交代でルカを輪姦した男たちの顔もあった。
聞き取ることはできないが、しゃがれ声でそれぞれが叫んでいる。
(ひっ……)
あまりの恐怖に悲鳴を上げると、その声が一斉に止み、幾つもの腐った目がルカの方を見た。
(喰われるっ……)
そう思った瞬間に、頭の中がグルグル回り視界が渦巻いた。
「——っ!?」
キーンという耳鳴りと共に、目の前に光が現れる。
「起きたか? 目ぇ開いたまま失神してたからびっくりしたぞ……」
低い心地よい声の振動が、直接身体を通して伝わって来る。
ルカは、温かい大きな身体に包まれていた。
「……はっ…………」
光の世界に戻って来たことで、先ほどの闇と絶望の深さを思い出す。
自然と身体が震え、目からはボロボロと涙が零れ落ちる。
「……もっ……いきたくない……」
だが身体はまだ熱く火照ったままだ。
失神したらまたあそこへ堕ちる。
そして今度こそ死んでしまうだろう。
ルカは本能的な恐怖に怯え、ふるふると首を横に振った。
「大丈夫だ。俺がいるから」
様子がおかしいことに気付いたバルナバーシュが、涙を拭いながら優しくキスをする。
もうあんな世界に堕ちたくはないのに、薬の効力に侵された浅ましい身体は、バルナバーシュの太腿に欲望を擦りつけていた。
「——助けて……」
自分を救い上げてくれるのは、この男しかいない。
全てを委ねるしかない。
「ぉうっ……」
圧迫感に自然と息が漏れる。
「ほら、怖くない」
バルナバーシュはみっちりと内臓に剛直を収めると、ルカの顎を片手で掴んでついばむように何度も角度を変えてキスをする。
「ふっ……んっ……」
バルナバーシュが安心させるようにしばらくそれを続けると、ルカの腰も自然とうねって来た。
それに合わせて、バルナバーシュは抜き差しの動きをゆっくりと加えていった。
「こんなに腫らして……ここも虐められたのか?」
鞭で打たれて真っ赤に腫れ上がった胸の飾りを、傷でも癒すかのように舌で舐め上げる。
「はっ……あっ…あっ…そこっ……」
とろけるような感覚に、ルカは性器から先走りの液を滲ませる。
「そんなに気持ちいのか?」
「あっ……いいっ……」
尖らせた舌先で上下に動かされると、熱を持った赤い実も上へ下へと逃げ惑うように翻弄される。
自然と身体を仰け反って、バルナバーシュの雄を締め上げていた。
「おいおい、そんなにケツを締めんなよ、こっちだって我慢してんだぞ……」
「——うぁぁぁぁぁぁっっ……」
ボタボタとシーツの上に精液が垂れる。
もう何回射精したのかわからない。
自分でもこんなに射精できるものなのかと恐ろしくなってくる。
それでも媚薬によって狂わされた身体は、また快感を追い求める。
「凄えな……また勃ってるぞ、どんだけ強いの盛られたんだよ」
そう言うと後ろから交わる体勢のまま、バルナバーシュはルカの股間に手を伸ばす。
『ヤダっ……触るなっ……あっ…あっ……またクルからっ……まって……』
イッたばかりの身体には、その刺激は過ぎた快感だった。
「もうココが空になるまで出しちまえよ」
バルナバーシュは片手で弄ぶように双球を転がすと、また力強く腹の中に腰を打ち付けた。
『ひっぃぃっ……』
ガクガクと内股を震わせ、ルカはまたしても白い液を飛ばしてしまう。
弛緩して上半身を支えきれなり、ズルズルとシーツに身体を沈める。
腰だけを抱えられ、バルナバーシュと繋がったままの無残な体勢だ。
『——するなって……いったのにぃ……うっ…ぐっ……』
制御できなくなった自分の身体が怖くなって、思わず泣きが入る。
それなのにバルナバーシュは止めてはくれない。
「お前、ツィホニー語で喋るの止めろっ! 可愛すぎんだろがっ!」
「っ!?」
ルカは指摘され初めて母国語で喋っていたことに気付いた。
「あんまり俺を煽るなよ……知らねえからな」
ギリギリの所で獣性を押しとどめた声で囁かれる。
「……!?」
凄い力で、両手を後ろから引っ張られ無理矢理半身を引き起こされると、身体の最奥に杭を打ち付けられた。
「……くはっッッ…………」
精液だけが届いていた奥の部屋に、ぐぷっと音がしそうなほど勢いよく肉棒の先端が入って来た。
まるで粗相でもするかのように、ルカの性器はダラダラと薄くなった精液を垂れ流している。
もうそこは、完全に壊れてしまった。
「ああっ……お前の中は最高だな。わかるか? ここ」
手から肩へとルカの身体を持ち替え、バルナバーシュは臍のすぐ下の皮膚を突き上げるでっぱりをなぞった。
「うーーーーっ……」
バルナバーシュが腰を細かく揺らすと、そこもペコペコと動く。
激しい違和感に、ルカは低く呻くことしかできない。
だが、そこを犯されたらどうなるか、ルカの貪欲な身体は既に知っていた。
「さっきは地獄を見たみたいだからな。今後は俺が本物の天国に連れて行ってやるよ」
「くっ……」
まるで獣の交尾の様にうなじに噛みつかれると、ルカの身体にゾクゾクと妖しい震えが走る。
『ルカ』と、バルナバーシュの姓の『ヴルク』は、偶然にも同じ獣に由来する名だ。
「ルカ……愛してる……もう絶対離さない……お前は俺のものだからっ」
強い力で抱きしめられ、愛しい恋人から切羽詰まった声で愛を囁かれる。
「……バ…ルっ…っ……」
凄まじい多幸感に包まれながらも、息が上がりそれに応える余裕がないのが悔しい。
自分も、負けないくらいバルナバーシュのことを愛しているのに上手く伝えられない。
「わかってるって。ちゃんと伝わってる」
耳の後ろに口付けされながら、低い声でそう囁かれるだけでたまらない。
「……はぅっ……」
ぐちゅんとイヤラシイ水音を立て杭が抜かれる。
そして再び閉じきれない入り口にピタリと先端を当てると、獣のような交わりが始まった。
「ぐっ……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッッ」
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