菩提樹の猫

無一物

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4章 癒し手を救出せよ

25 上書き

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 膨らみかけのパン生地みたいに、滑らかな筋肉の乗っているバルトロメイの身体は、若い男特有の美しい張りに満ちていた。

 逞しい大胸筋の上にある肉色のソレは、自分の作りもののようなピンク色よりも生々しく卑猥に感じる。
 レネよりも広い胸板だからなのか、乳輪の面積も広い気がした。
 それに吸い寄せられるように、レネはぺろっとそれを舐め上げた。

「……おぁっ……おいっ!」
 
 上ずった声を上げ、バルトロメイが慌てている。

(あれ……? ここだけ味が違う……)

「くっぅ……」
 
 確かめるようにもう一度、舌先に力を入れペロリと舐め上げると、再びバルトロメイから、声が漏れる。

 ちょっと塩味を含んだ肌色から、濃い色へと移ると……透明な薄い皮の下にすぐに肉があることを感じさせる……そんな味がする。
 まるで粘膜みたいだ。

「やっぱ、バートも気持ちいいのか?」
 
「……さっき言っただろ、男だって気持ちいいって」

 バルトロメイの言葉に嘘はなさそうだ。
 自分だけが女みたいに感じるのではないのだと安堵する。
 
 気をよくしたレネは、バルトロメイの発達した大胸筋を、まるで女の乳房を揉むようにし触ってみた。

「うわっ凄ぇ……揉めるじゃん」

 レネが思わず感嘆の声を上げると、バルトロメイはお返しだといわんばかりに、膝の上に乗り上げているレネを、腰が密着するほど抱き寄せて、目の前に来たレネの乳首に吸い付いてきた。

「……ひゃっ!? あっ……ヤメロっ……やっ……」
 
 それと同時に腰が密着することで、触れ合っているお互いの性器を刺激するように腰を前後に揺らしてくる。

 ウエストの部分を両サイドからガッチリ掴まれると逃げようにも逃げられない。
 左右の胸をじゅるじゅると音を立て交互に吸われ、竿同士を擦られると、あっという間に性器が質量を増し、勃ち上がってきた。

 それはレネだけではない、バルトロメイもガチガチに勃起している。

「あっ……なんだよこれ……」
 
「気持ちいいだろ?」
 
 バルトロメイが得意そうに笑うが、男として最上級の部類に入るその顔が、同じ同性であるレネに向けられていいのだろうかという、妙な罪悪感が生まれる。

「うあっ……あっ……」
 
 布越しにお互いの性器を擦り合わせていたが、途中からもどかしくなったのか、バルトロメイが自分のズボンから自分の雄を取り出す。
 そして当然のようにレネのバスローブの裾を乱して、勃ち上がった雄の顔を出させる。

(……こうやって見ると、色も大きさもぜんぜん違う……)

 レネは白いバスローブからぴょこりと顔を出す自分の薄いピンク色の性器を見て、自分のものなのに、まるで純情な女の子でも見ているような気持ちになり、顔を真っ赤にする。

(——これが今から、あれと……)

 体格差くらいに差のある、バルトロメイの雄が、ズッとレネのモノへと迫って来た。
 自分の身体の一部なのに、なんだか人形劇でも見てるみたいに客観的に覗き込んでしまい、余計に恥ずかしい。

 お互いの熱い雄同士が絡み合い、バルトロメイがその上から手を添え、包み込むように動かしていった。

「あっ……はっ……」
 
「……うっ……気持ちいいな」

 レネは無意識のうちにバルトロメイの首に手を回し、もっと快感を得ようと自らも腰を揺らした。

「あっ…いいっ……」
 
「こうか?」
 
「くっ……」
 
 二つまとめて亀頭を手の平で擦り、レネが反応を示した場所を重点的に責めていった。

 どちらともつかない先走りの液が絡みつき、バルトロメイが手を動かす度にクチクチといやらし気な音を立てる。

 自分一人でなくバルトロメイも感じていることで、あの時感じた屈辱感や嫌悪感を今は全く感じない。
  
(みんな同じなんだ……) 
 

「あっ…待って……もぅ…でる……」
 
 ビクビクと内股が痙攣し、終わりが近いことをバルトロメイに知らせる。

「……一緒にイクぞ……」
 
 目の前にある雄っぽい端正な顔を覗き込むと、バルトロメイも眉間に皺を寄せ必死に射精を我慢している。

「ちょっと……待って…あっなにっ……うっああああっっ……」
 
 グリグリとバルトロメイが先端で、レネの先端に擦り付けてくるるので、たまらなくなってレネは欲望を吐きだした。

「……クッ……ううっ……ぐっうううう……」 
 
 遅れてバルトロメイも吐精する。

 
 胸を喘がせながら、お互いを見つめ合い、レネは思わず笑った。

「なんか……手合わせした後みてー……」
 
 あれだけ鬱々としていた気持ちがどこかへ吹っ飛んで、今は爽快感しか残っていない。

「野郎同士の扱き合いなんてそんなもんだろ?」
 
「……そんなもんなのか?」

 一度ヴィートとやったことがあるが、ヴィートに上手いことのせられて、最後はイラついて殴った思い出しかない。

「一人でするより気持ちいいだろ?」
 
「……まあな……」
 
 それは否定できない。

 バルトロメイの言うように、『そんなもの』なのかもしれない。
 なんだかさっきまで一人で悩んでいたのが嘘みたいだ。
 
 そんな自分が馬鹿らしくなり、レネはまた笑った。
 すると、バルトロメイがギュッと強く身体を抱きしめてきた。

「……なんだよ……」
 
 じゃれついて来る暑苦しい大型犬みたいで、レネは無下に撥ね退けることもできず困った顔をする。

「ん?……なんでもねえよ。ただこうしたかっただけ」
 
 バルトロメイの声が、妙に嬉しそうだったので、レネは暫く好きなようにさせた。


 自分たちは正しい主従関係から、けっこうかけ離れている気がする。
 だからといって、最初の入り口が既におかしかったので、今さら軌道修正して正しくなるものではないと思う。
 しかしレネにとって、正しい主従関係こそ息が詰まってしまい、続けることが困難だっただろう。
 

(なんか……大型犬を飼ってるみたいだけど……まいっか……)
 
 自分だけの騎士といったら、なんだかこそばゆいが、その存在はいつの間にかレネの大きな心の支えになっていた。



 バルトロメイが部屋から出て行く頃には頭の中がスッキリして、レネは自分のやるべきことが見えてきた。

 自分らしさとはなにか?

 ここを見失ったら、今までの努力が全て水の泡になってしまう。
 今までなんのために剣の腕を磨いてきたのかと、自分に問いかけていくと、自ずとやるべきことが見えてくる。


(——やっぱりこのままでは駄目だ……)



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