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3章 宝珠を運ぶ村人たちを護衛せよ
4 巫女の言い分
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◆◆◆◆◆
「あんたは眠らなくていいのかよ?」
カレルはまだ焚火の前に座って寝る様子のないテレザに問いかける。
「野宿は慣れてないから、なかなか寝付けないの」
「巫女さんも大変だねぇ。毎年男たちに混じって行かないといけないんだろ?」
ゼラは相変わらず、二人の会話も我関せずで上の空だ。
「それは構わないのよ。仕事だから」
「なあ……こっちも仕事なんだから、ボリスにちょっかい出すのは遠慮してもらえないか?」
カレルも、ボリスの恋人アネタとは顔見知りだ。それにアネタはレネの姉でもある。
テレザは蠱惑的な笑みを浮かべてカレルを見つめる。
「別にいいじゃない。まさかあの綺麗な子と本当にデキてるの? あの子、ぜんぜんそんな感じじゃないわ」
ボリスは女に纏わり付かれて困った時は、レネを近くに呼んで親し気にベタベタ触る。
日ごろからあの男、レネに対してだけはスキンシップが多い。
とうぜんレネは自分がダシに使われているなんて気付いておらず、大抵の女たちは自分より綺麗な男が近くに来ると尻尾を巻いて退散する。
しかしこの巫女は、レネの素っ気ない態度に疑問を抱いている。
今回はボリスが少々強引だったので、レネは完全に腰が引けていた。
毎回見ているカレルは『そこはもっとニッコリ笑え』『ここはもっと近付いて』と演技指導してやりたくなる。
「さあな……女っていちいち面倒だな……」
どうしてなんでも知りたがるのだろうか……。
たった数日間の旅の相手なのに。カレルにはその気持ちが理解できなかった。
「あら、女を一括りにしないでよ。普通に好きな人と一緒になれる女は幸せよ。あたしなんてこの額の刺青のせいで、一生結婚できない身なのに」
「…………」
カレルは、はっとして、テレザの顔を見る。
黒く彫られた額の文様は、彼女の人生を決定づけてしまっていた。
抗おうにも抗えない。
巫女の印がある女を娶ろうとする男などいない。
一夜限りの相手ならまだしも、神の器を手に入れようをする者は、神の怒りをかい神罰が下るとされている。
「子供のころはね、力が認められてチヤホヤされて良い気になってたわ。綺麗な衣装を着て周りの女の子からも羨望の目を向けられて、自分は選ばれた特別な人間だって思ってたの……」
テレザの目に暗い影が落ちる。
「だけどね……周りの女の子たちが恋をして、その相手と結ばれて、子供が生まれるのを見ていたら、あたしだけ置いて行かれた気がして。結婚はできなくても、せめて子供は生みたい。母も巫女だったけど、私を生んだの」
(ただの我儘な女なのかと思っていたが、心の寂しさが原因なのか……)
同情心が湧いてくるが、カレルはその気持ちを振り払って、口を開く。
「俺たちだって、結婚している奴なんてほとんどいない。いつ死ぬかわかんない男と家庭を持ちたい女なんていねーよ」
だからこそカレルは、ボリスとアネタにはなんとかうまく結ばれてほしいと思っていた。
「あーそうね。傭兵業も大変よね。一緒に来てるヨナターンの父親も傭兵だったの。東国の大戦に行ってたみたいだけど戦死の便りが来て、まだあの子が小さいころだったから残された母親と二人で大変そうだったわ。ダヴィドの家が色々世話を焼いていたから、ダヴィドとは兄弟みたいに仲が良いの。でも母親も数年後に亡くなってね。可哀想だったわ。なんかね……父親がいないこととか自分と重ねちゃうの。だからあたし……あの子だけは気にしてる」
「聞きたくねー話だな。俺たちもやっぱり家庭を持つのは向いてねーんだよ。だから俺たちもあんたの仲間みたいなもんだ」
「じゃあ、やっぱりボリスさんに気兼ねなく迫れるわね」
どうしてテレザはボリスにこだわるのだろうか?
確かに女にはモテるが、レネを使って牽制までしているのに、テレザがここまで執着する理由がわからない。女心とはそういうものなのかもしれないが、カレルには理解不能だった。
「——あの人にはなんだか特別な力を感じる。こんな感覚は初めて……あの人から離れてはいけない気がするの」
(巫女だってのもまんざらじゃないな……ボリスの癒し手の力をどこかで感じ取ってやがる……)
「あんたは神事を成功させることだけに集中しろよ」
カレルはこれ以上こじれると、ボリスというよりも、レネに負担がかかって来るのが心配だった。
レネはそうなると護衛以外にもハードな役割をこなさなければいけない。
「あなたって意外と真面目なのね」
テレザの言葉に横で黙って聞いていたゼラがクスリと笑う。
「おいゼラっ、今笑いやがっただろ。そこは笑う所じゃないからなっ」
◆◆◆◆◆
昨夜一晩考えたのだが、レネはやっぱりヨナターンのことは団員で情報を共有していた方がいいと思うようになっていた。
いちばん距離が近いボリスに話そうと思ったが、今日もやはりテレザがずっと一緒にいて、機会がなかなか掴めない。
レネが一番後ろを歩いているので、ボリス以外のメンバーは村人を挟んで前方にいる。
(昨日ボリスに話しとけばよかった……どうしようか……)
前を行く村人二人の会話が、レネの耳に入って来る。
「お前……どうした? なんか元気ないな……」
「そんなことないさ。ちょっと疲れてるだけだろ」
ヨナターンはずっと神経質そうな顔をしていると思っていたが、疲れているからなのだろうか?
そう言えば昨日も夜中にこっそり吐いていた。
「本当は遺跡になんか行きたくないんだろ? 護衛を頼むのもずっと反対してたし。私が行くのも反対していた。いったいなにがあったんだ?」
ダヴィドは心からヨナターンを心配している。
「あそこでルボシュさんが殺されたんだ。俺はお前になにかあったらと心配なだけだ」
「それはお前だって一緒だろ。私の心配をしてどうする。私たちはまず第一に宝珠と巫女を無事に遺跡に運ぶ使命があるだろ」
(——そういえば、ヨナターンは一度下見に行って襲撃に遭っていたんだ……)
昨日目撃したできごととなにか関係があるかもしれない。
「俺は、そんなことよりもお前の方が大事なんだけどな」
ヨナターンが思いつめた顔をする。
「こんな時になに言ってるんだ」
ダヴィドは不謹慎だと言わんばかりにヨナターンを睨みつけた。
するとヨナターンはレネの存在にいま気付いたとばかりに、後ろを振り返る。
「……お前っ!? 人の話をなに盗み聞ぎしてるんだ!」
あまりの眼光の鋭さにレネはたじろぐ。
「そんなこと言っても、オレはずっと一番後ろを歩いてただけなんですけど……」
勝手に二人が他人に聞かれたら困る会話を始めたのだ。こちらに怒りを向けられても困る。
「なに言ってんだよ、コソコソしやがって」
なぜ後ろを歩いていただけなのに、自分がここまで非難されなければいけないのか。理不尽な怒りをぶつけられ、レネも感情的になってしまう。
「——あんただって、昨日誰とコソコソ喋ってたんだよ? みんなが野営の準備をしている時に猟師風の男と会ってただろ?」
レネはよけいなことを言ってしまったと、口に出してから気付く。
相談しようと思っていたボリスにはテレザがべったりだし、思い通りに行かなくて鬱憤《うっぷん》が溜まっていたのだ。
(やっちゃった……)
一度口に出したらもう遅い。
「どういうことだ? ヨナターン」
ダヴィドが真剣な顔で幼馴染を見つめる。
「嘘に決まってるだろ? そんな男なんかとは会っていない。こいつの出鱈目だ! 俺よりこいつのことを信じるのか?」
縋りつくような必死な目をしたヨナターンにダヴィドは押し黙る。
「ヨナターン……」
「どうしたんだいったい?」
騒ぎを聞きつけてボリスがテレザと後ろを振り返る。
「——あんたが浮気ばかりしてるからだよ……」
一度開いた口は次々と勝手にものをしゃべりだす。
テレザに付きっきりの方が護衛しやすいのも理解している。
しかしレネは、ボリスに一言いってやりたい気分だったのだ。
「浮気って、なによっ! 人を泥棒猫みたいに」
テレザがレネをギロリと睨む。
どうやらこっちも怒らせてしまったようだ。
(オレ……なにやってんだろ……)
口からこぼれ出た言葉を、後悔してももう遅い。
「あんたは眠らなくていいのかよ?」
カレルはまだ焚火の前に座って寝る様子のないテレザに問いかける。
「野宿は慣れてないから、なかなか寝付けないの」
「巫女さんも大変だねぇ。毎年男たちに混じって行かないといけないんだろ?」
ゼラは相変わらず、二人の会話も我関せずで上の空だ。
「それは構わないのよ。仕事だから」
「なあ……こっちも仕事なんだから、ボリスにちょっかい出すのは遠慮してもらえないか?」
カレルも、ボリスの恋人アネタとは顔見知りだ。それにアネタはレネの姉でもある。
テレザは蠱惑的な笑みを浮かべてカレルを見つめる。
「別にいいじゃない。まさかあの綺麗な子と本当にデキてるの? あの子、ぜんぜんそんな感じじゃないわ」
ボリスは女に纏わり付かれて困った時は、レネを近くに呼んで親し気にベタベタ触る。
日ごろからあの男、レネに対してだけはスキンシップが多い。
とうぜんレネは自分がダシに使われているなんて気付いておらず、大抵の女たちは自分より綺麗な男が近くに来ると尻尾を巻いて退散する。
しかしこの巫女は、レネの素っ気ない態度に疑問を抱いている。
今回はボリスが少々強引だったので、レネは完全に腰が引けていた。
毎回見ているカレルは『そこはもっとニッコリ笑え』『ここはもっと近付いて』と演技指導してやりたくなる。
「さあな……女っていちいち面倒だな……」
どうしてなんでも知りたがるのだろうか……。
たった数日間の旅の相手なのに。カレルにはその気持ちが理解できなかった。
「あら、女を一括りにしないでよ。普通に好きな人と一緒になれる女は幸せよ。あたしなんてこの額の刺青のせいで、一生結婚できない身なのに」
「…………」
カレルは、はっとして、テレザの顔を見る。
黒く彫られた額の文様は、彼女の人生を決定づけてしまっていた。
抗おうにも抗えない。
巫女の印がある女を娶ろうとする男などいない。
一夜限りの相手ならまだしも、神の器を手に入れようをする者は、神の怒りをかい神罰が下るとされている。
「子供のころはね、力が認められてチヤホヤされて良い気になってたわ。綺麗な衣装を着て周りの女の子からも羨望の目を向けられて、自分は選ばれた特別な人間だって思ってたの……」
テレザの目に暗い影が落ちる。
「だけどね……周りの女の子たちが恋をして、その相手と結ばれて、子供が生まれるのを見ていたら、あたしだけ置いて行かれた気がして。結婚はできなくても、せめて子供は生みたい。母も巫女だったけど、私を生んだの」
(ただの我儘な女なのかと思っていたが、心の寂しさが原因なのか……)
同情心が湧いてくるが、カレルはその気持ちを振り払って、口を開く。
「俺たちだって、結婚している奴なんてほとんどいない。いつ死ぬかわかんない男と家庭を持ちたい女なんていねーよ」
だからこそカレルは、ボリスとアネタにはなんとかうまく結ばれてほしいと思っていた。
「あーそうね。傭兵業も大変よね。一緒に来てるヨナターンの父親も傭兵だったの。東国の大戦に行ってたみたいだけど戦死の便りが来て、まだあの子が小さいころだったから残された母親と二人で大変そうだったわ。ダヴィドの家が色々世話を焼いていたから、ダヴィドとは兄弟みたいに仲が良いの。でも母親も数年後に亡くなってね。可哀想だったわ。なんかね……父親がいないこととか自分と重ねちゃうの。だからあたし……あの子だけは気にしてる」
「聞きたくねー話だな。俺たちもやっぱり家庭を持つのは向いてねーんだよ。だから俺たちもあんたの仲間みたいなもんだ」
「じゃあ、やっぱりボリスさんに気兼ねなく迫れるわね」
どうしてテレザはボリスにこだわるのだろうか?
確かに女にはモテるが、レネを使って牽制までしているのに、テレザがここまで執着する理由がわからない。女心とはそういうものなのかもしれないが、カレルには理解不能だった。
「——あの人にはなんだか特別な力を感じる。こんな感覚は初めて……あの人から離れてはいけない気がするの」
(巫女だってのもまんざらじゃないな……ボリスの癒し手の力をどこかで感じ取ってやがる……)
「あんたは神事を成功させることだけに集中しろよ」
カレルはこれ以上こじれると、ボリスというよりも、レネに負担がかかって来るのが心配だった。
レネはそうなると護衛以外にもハードな役割をこなさなければいけない。
「あなたって意外と真面目なのね」
テレザの言葉に横で黙って聞いていたゼラがクスリと笑う。
「おいゼラっ、今笑いやがっただろ。そこは笑う所じゃないからなっ」
◆◆◆◆◆
昨夜一晩考えたのだが、レネはやっぱりヨナターンのことは団員で情報を共有していた方がいいと思うようになっていた。
いちばん距離が近いボリスに話そうと思ったが、今日もやはりテレザがずっと一緒にいて、機会がなかなか掴めない。
レネが一番後ろを歩いているので、ボリス以外のメンバーは村人を挟んで前方にいる。
(昨日ボリスに話しとけばよかった……どうしようか……)
前を行く村人二人の会話が、レネの耳に入って来る。
「お前……どうした? なんか元気ないな……」
「そんなことないさ。ちょっと疲れてるだけだろ」
ヨナターンはずっと神経質そうな顔をしていると思っていたが、疲れているからなのだろうか?
そう言えば昨日も夜中にこっそり吐いていた。
「本当は遺跡になんか行きたくないんだろ? 護衛を頼むのもずっと反対してたし。私が行くのも反対していた。いったいなにがあったんだ?」
ダヴィドは心からヨナターンを心配している。
「あそこでルボシュさんが殺されたんだ。俺はお前になにかあったらと心配なだけだ」
「それはお前だって一緒だろ。私の心配をしてどうする。私たちはまず第一に宝珠と巫女を無事に遺跡に運ぶ使命があるだろ」
(——そういえば、ヨナターンは一度下見に行って襲撃に遭っていたんだ……)
昨日目撃したできごととなにか関係があるかもしれない。
「俺は、そんなことよりもお前の方が大事なんだけどな」
ヨナターンが思いつめた顔をする。
「こんな時になに言ってるんだ」
ダヴィドは不謹慎だと言わんばかりにヨナターンを睨みつけた。
するとヨナターンはレネの存在にいま気付いたとばかりに、後ろを振り返る。
「……お前っ!? 人の話をなに盗み聞ぎしてるんだ!」
あまりの眼光の鋭さにレネはたじろぐ。
「そんなこと言っても、オレはずっと一番後ろを歩いてただけなんですけど……」
勝手に二人が他人に聞かれたら困る会話を始めたのだ。こちらに怒りを向けられても困る。
「なに言ってんだよ、コソコソしやがって」
なぜ後ろを歩いていただけなのに、自分がここまで非難されなければいけないのか。理不尽な怒りをぶつけられ、レネも感情的になってしまう。
「——あんただって、昨日誰とコソコソ喋ってたんだよ? みんなが野営の準備をしている時に猟師風の男と会ってただろ?」
レネはよけいなことを言ってしまったと、口に出してから気付く。
相談しようと思っていたボリスにはテレザがべったりだし、思い通りに行かなくて鬱憤《うっぷん》が溜まっていたのだ。
(やっちゃった……)
一度口に出したらもう遅い。
「どういうことだ? ヨナターン」
ダヴィドが真剣な顔で幼馴染を見つめる。
「嘘に決まってるだろ? そんな男なんかとは会っていない。こいつの出鱈目だ! 俺よりこいつのことを信じるのか?」
縋りつくような必死な目をしたヨナターンにダヴィドは押し黙る。
「ヨナターン……」
「どうしたんだいったい?」
騒ぎを聞きつけてボリスがテレザと後ろを振り返る。
「——あんたが浮気ばかりしてるからだよ……」
一度開いた口は次々と勝手にものをしゃべりだす。
テレザに付きっきりの方が護衛しやすいのも理解している。
しかしレネは、ボリスに一言いってやりたい気分だったのだ。
「浮気って、なによっ! 人を泥棒猫みたいに」
テレザがレネをギロリと睨む。
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