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11 交錯する想い
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◆◆
「——おいっ、やめろッ!」
急に乱入してきたレーリオによって、ロメオはシリルの上から立ち退かされる。
「テメェ……人の部屋に勝手に入ってきてなにしやがるっ!」
ロメオはレーリオを殴ろうと拳を握るが、すぐに手首を掴まれ阻止された。
(なんでこいつがっ!?)
いきなりの乱入者にロメオは驚きを隠せないでいた。
「お前は誤解してる」
真剣な顔で言われロメオは瞠目する。
「誤解ってなんだよ。こいつは昨日あんたに抱かれあんあん言ってヨガってたじゃないかよっ。だったら俺がやったってかまわないだろっ!」
レーリオはずっと自分の邪魔ばかりする。行為を中断され、ロメオの中に鬱屈とした怒りが溜まっていく。
怒りをあらわにしてもこちらには目もくれず、見ろとばかりにレーリオがあ顎をしゃくった。
ベッドの上のシリルを見ると、歯がカタカタと鳴るほど震えていた。顔は背けているが、涙に濡れた睫毛まで揺れているのが確認できる。
こんなときなのに、ロメオはシリルの美しさに目がはなせなくなる。
「昨日も最初はこんな状態だった」
「——どういうことだよ」
レーリオの言っている言葉の意味を理解できず、ロメオは聞き返した。
「シリルは二年以上前からずっと伯爵の前で抱かれるのを嫌がってたんだ」
ますます、言っている意味がわからない。
「俺はあの燭台が欲しくて、前にも同じことをするよう頼んだんだ。だがシリルは拒否してそれが原因で別れた」
「……は?」
初めて聞く話だ。
(そんなに嫌がってたのに、じゃあどうしてシリルは今回、あの爺さんの前で抱かれたんだ?)
素朴な疑問が湧いてくる。
「俺はまだシリルに未練があって、新しい相方のお前のことを憎んでいた。若い恋人に違いないと嫉妬してたんだ」
「……俺たちは……そんなんじゃない……」
ロメオはずっとシリルと恋人同士になりたいと思っていたが、シリルとの関係を崩したくなくて、その想いを隠していた。
「お前が仕事に失敗した後に、俺はシリルを呼び出して、相方の落とし前をつけろと言った。そうしないと上部にロメオの失敗を報告すると。伯爵の前で抱かれたら今回のことは黙っているとシリルに告げた。前回それが嫌で俺と別れたんだ、とうぜん今回も拒否するだろうと思っていた。ところが、シリルはお前の尻拭いのためにその役を引き受けた」
「えっ……そんな話……聞いてない……」
(この男はなにを言っている?)
自分の知らない事実を告げられた衝撃に、ロメオは目の前の視界が歪む。
「俺の時は断って、シリルはお前のためになら嫌々ながらでも伯爵の前で抱かれた。最初はずっと震えて身体も反応しなかったから、媚薬を使って無理矢理からだを昂らせて抱いた。そこにお前をわざと呼んで二人の関係をグチャグチャにしてやろうと思ったんだ」
(信じられない……)
「……俺のためにシリルは……」
頭が真っ白になると同時に、身体がよろめいた。
(俺は……そんなシリルになにをした……?)
「——シリル……」
ロメオは急いでシリルのいるベッドまで駆け寄るが、いつの間にかシーツに包まり姿を隠していた。
「……暫く一人にさせてくれ……」
震える声でシーツ越しに告げられ、ロメオとレーリオの二人は部屋を出て居間へと戻った。
部屋を移り椅子に座ると、レーリオがぼそりと呟いた。
「でもまさか……お前たちに肉体関係がないなんて思ってもなかった……」
よく見るとその顔には殴られた跡がある。もしかしたらシリルが作ったものかもしれない。
「どうしてあんな嘘をついたんだっ!」
ありったけの憎しみを込めて、ロメオはレーリオを睨んだ。
「だから言っただろ、お前たちの関係が壊れたら……あいつがまた戻ってきてくれると思ったんだよ……」
シリルに酷いことをしておいて、よくもまあそんな言葉が言えたものだ。
「お前のせいで……シリルが……」
ロメオは怒りでワナワナと身を震わす。
「お前だって、さっき無理矢理犯そうとしてたじゃねぇか」
それを言われるとぐうの音も出ない。
沈黙が部屋に流れた。
しばらく経ってレーリオが重い口をひらく。
「——でも今回は、俺がやりすぎた。まさかあそこまでシリルが傷つくとは予想外だった……あいつはお前のためなら自分の身をも差し出す。覚えておけ、お前はあいつの一番の弱点だ。……それとその燭台はお前たちに譲る」
言いたいことだけを言いレーリオが部屋を出ていくと、ロメオだけが部屋に一人、呆然としたまま取り残された。
犯してしまった自分の過ちの重大さが、今ごろになってジワジワと身に染みる。
あの男は最低だが、そもそも今回のきっかけを作ったのはロメオの仕事での失敗が原因だ。
自分のせいで、一番大切なシリルをずたずたに傷つけてしまった。
これからどうしたら、二人の関係を修復していけるのだろうか……?
ロメオは頭を抱えて悲嘆に暮れた。
「——おいっ、やめろッ!」
急に乱入してきたレーリオによって、ロメオはシリルの上から立ち退かされる。
「テメェ……人の部屋に勝手に入ってきてなにしやがるっ!」
ロメオはレーリオを殴ろうと拳を握るが、すぐに手首を掴まれ阻止された。
(なんでこいつがっ!?)
いきなりの乱入者にロメオは驚きを隠せないでいた。
「お前は誤解してる」
真剣な顔で言われロメオは瞠目する。
「誤解ってなんだよ。こいつは昨日あんたに抱かれあんあん言ってヨガってたじゃないかよっ。だったら俺がやったってかまわないだろっ!」
レーリオはずっと自分の邪魔ばかりする。行為を中断され、ロメオの中に鬱屈とした怒りが溜まっていく。
怒りをあらわにしてもこちらには目もくれず、見ろとばかりにレーリオがあ顎をしゃくった。
ベッドの上のシリルを見ると、歯がカタカタと鳴るほど震えていた。顔は背けているが、涙に濡れた睫毛まで揺れているのが確認できる。
こんなときなのに、ロメオはシリルの美しさに目がはなせなくなる。
「昨日も最初はこんな状態だった」
「——どういうことだよ」
レーリオの言っている言葉の意味を理解できず、ロメオは聞き返した。
「シリルは二年以上前からずっと伯爵の前で抱かれるのを嫌がってたんだ」
ますます、言っている意味がわからない。
「俺はあの燭台が欲しくて、前にも同じことをするよう頼んだんだ。だがシリルは拒否してそれが原因で別れた」
「……は?」
初めて聞く話だ。
(そんなに嫌がってたのに、じゃあどうしてシリルは今回、あの爺さんの前で抱かれたんだ?)
素朴な疑問が湧いてくる。
「俺はまだシリルに未練があって、新しい相方のお前のことを憎んでいた。若い恋人に違いないと嫉妬してたんだ」
「……俺たちは……そんなんじゃない……」
ロメオはずっとシリルと恋人同士になりたいと思っていたが、シリルとの関係を崩したくなくて、その想いを隠していた。
「お前が仕事に失敗した後に、俺はシリルを呼び出して、相方の落とし前をつけろと言った。そうしないと上部にロメオの失敗を報告すると。伯爵の前で抱かれたら今回のことは黙っているとシリルに告げた。前回それが嫌で俺と別れたんだ、とうぜん今回も拒否するだろうと思っていた。ところが、シリルはお前の尻拭いのためにその役を引き受けた」
「えっ……そんな話……聞いてない……」
(この男はなにを言っている?)
自分の知らない事実を告げられた衝撃に、ロメオは目の前の視界が歪む。
「俺の時は断って、シリルはお前のためになら嫌々ながらでも伯爵の前で抱かれた。最初はずっと震えて身体も反応しなかったから、媚薬を使って無理矢理からだを昂らせて抱いた。そこにお前をわざと呼んで二人の関係をグチャグチャにしてやろうと思ったんだ」
(信じられない……)
「……俺のためにシリルは……」
頭が真っ白になると同時に、身体がよろめいた。
(俺は……そんなシリルになにをした……?)
「——シリル……」
ロメオは急いでシリルのいるベッドまで駆け寄るが、いつの間にかシーツに包まり姿を隠していた。
「……暫く一人にさせてくれ……」
震える声でシーツ越しに告げられ、ロメオとレーリオの二人は部屋を出て居間へと戻った。
部屋を移り椅子に座ると、レーリオがぼそりと呟いた。
「でもまさか……お前たちに肉体関係がないなんて思ってもなかった……」
よく見るとその顔には殴られた跡がある。もしかしたらシリルが作ったものかもしれない。
「どうしてあんな嘘をついたんだっ!」
ありったけの憎しみを込めて、ロメオはレーリオを睨んだ。
「だから言っただろ、お前たちの関係が壊れたら……あいつがまた戻ってきてくれると思ったんだよ……」
シリルに酷いことをしておいて、よくもまあそんな言葉が言えたものだ。
「お前のせいで……シリルが……」
ロメオは怒りでワナワナと身を震わす。
「お前だって、さっき無理矢理犯そうとしてたじゃねぇか」
それを言われるとぐうの音も出ない。
沈黙が部屋に流れた。
しばらく経ってレーリオが重い口をひらく。
「——でも今回は、俺がやりすぎた。まさかあそこまでシリルが傷つくとは予想外だった……あいつはお前のためなら自分の身をも差し出す。覚えておけ、お前はあいつの一番の弱点だ。……それとその燭台はお前たちに譲る」
言いたいことだけを言いレーリオが部屋を出ていくと、ロメオだけが部屋に一人、呆然としたまま取り残された。
犯してしまった自分の過ちの重大さが、今ごろになってジワジワと身に染みる。
あの男は最低だが、そもそも今回のきっかけを作ったのはロメオの仕事での失敗が原因だ。
自分のせいで、一番大切なシリルをずたずたに傷つけてしまった。
これからどうしたら、二人の関係を修復していけるのだろうか……?
ロメオは頭を抱えて悲嘆に暮れた。
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