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第1章 眠れるあいつの隠し事(基本壱輝目線)
32.Polar bears and two people
しおりを挟む地下鉄に揺られながらぼーっとしてると、目的地へまもなく到着のアナウンスが響いた。
隣の彩兎を揺すって起こす。
「彩兎、もうそろそろ着くぞ」
「…んー」
大きく伸びをした彩兎を横目に、ゆっくりと立ち上がる。
それに続いて彩兎も立ち上がろうとした時、地下鉄が大きく揺れた。
「うわっ」
よろけた彩兎を咄嗟に抱きとめる。
「気をつけろよ」
「う、うん…。ありがとう」
地下鉄を降り、改札を抜けたところで利人からLINEがきた。
「利人達はミスドにいるってよ」
「おぉ~ドーナツ食べたーい!」
鼻歌を歌いながら少し早く歩く彩兎に、
俺もLINEを返しながら並んで歩く。
店内に入ると、利人が奥の席から手を振っていた。
彩兎とドーナツを買って席に向かう。
「動物園どうだった~?」
「楽しかったよ!屈狸先輩と稲荷先輩も一緒だったし」
「そっかそっか~それはよかった」
「あ、利人と実隆にお土産あるぞ」
リュックからお土産の入った袋を出して利人に渡す。
「おぉ~サンキュー」
利人が、袋からお土産を取り出す。
「あ、可愛い!ホッキョクグマのキーホルダーか~」
「…え、それまさかペア?」
「そのまさかだよみっちゃん♪」
「…おれ、別にいらないかな…」
「えぇ?!ひどいよみっちゃんっ」
屈狸先輩と予想したのと同じ反応に、思わず苦笑する。
すると隣の彩兎が自分の携帯と、いつの間にか取られていた俺の携帯を掲げて言った。
「まあまあ二人とも!俺も壱輝とペアだから!」
「…え……えぇ?!うっそぉーー!!」
「…壱輝がペアを…?」
「そうなのですよ~」
ふふんっ、とドヤった彩兎に、テーブルの下で蹴りを入れる。
「違う、彩兎が勝手に買って勝手に俺の携帯に付けただけだ」
「…まぁ、そうだよね」
「なーんだ、つまんないの~」
利人のブーイングをスルーして、コーヒーを啜る。
「とりあえず、結局はペアで付けてるから、利人と実隆も気にせずどうぞ!」
「…一体何をどう気にせず、このストラップを付けろってゆーんだか…」
深いため息をついた実隆の横で、利人が実隆の携帯にキーホルダーを付けていた。
「…ちょっ、利人。まだ、付けるなんて一言も言ってないけど」
「せっかく買ってきてくれたんだし、付けなきゃ勿体無いでしょ?」
利人が、ホッキョクグマのキーホルダーのついた携帯を実隆に渡す。
実隆が、諦めたようにため息をつきながらそれを受け取った。
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