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学園編

大切な事

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「……私、元の世界に帰ることにしました」
私がそう発した瞬間、周りの空気がしん……っと静まり返った。
私の言葉が理解できなかったのか、呆然としている人がほとんどで、ただ一人を除いては……
「そ……れは、冗談とかじゃなくて?」
「……はい、本気です」
「はっ、やっぱり俺らといるより元の世界の方が良かったって事か」
「ちが………っ!」
「そんな訳ないでしょ………!!百の顔を見て奏は何も気づかない?」
あかりが声を荒げながら言ったその言葉に、私は目を見開きながら彼女を見た。
その表情は、怒りに満ちていた。
私は、そんな彼女に何も言えずにいたら、あかりは私の方へと歩いてきて、私の両頬に手を当ててじっと見つめてきた。
「大丈夫……百ならちゃんと伝わるから……」
「うん……ありがとう」
あかりに励まされ、もう一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、今度は彼らの顔をしっかりと見て、ゆっくりと口を開く。
「魔法が見つかったんです……元の世界に帰る魔法が……」
「うん………」
「それが分かった瞬間私はすごく悩みました、だってこの世界に転生してから
楽しい事ばかりで、私の周りには優しい人達が沢山で楽しくて……だから、こんな日常を壊したくない、帰りたくないって」
「それなら帰らなくても……」
「私もそう思いました。けれど、異世界に行き来できる魔法がある可能性があることが分かりました、そして昨日その魔法が見つかったんです」
私がそう告げると、彼らは唖然として固まってしまった。
それはそうだろう、突然こんなこと言われたんだもの。
それでも、これが真実なのだと分かって欲しくて私は言葉を続けた。
この世界はとても大切で、それと同じくらい元の世界も大切なのだ。
「そんな魔法があるのなら私は試してみたい……そう思った私は今朝あかりにその話をして一緒に来てくれると言ってくれました」
「瀬名さんそれは本当かい?」
「はい……今日の朝百に相談されました」
「それであかりは行くって答えたのか?」
「うん、私は百が選んだ世界に行くって言ったからね。それに、百となら絶対大丈夫だって思うから」
「…………あかりはそう言う奴だったな」
あかりがそう答えると、奏は諦めたようにそう言って笑った。
そんな彼につられて、他のみんなも笑っていた。
「玲央様……いきなりこんな事言っても困っちゃいますよね………でも、私の事を信じてください……」
「別に、俺は最初から百の事を疑ってなんかないよ?でも何か力になれそうな事があれば言って欲しいな」
「玲央様……ありがとう…ございます」
「百は俺の大切な人だからね、それぐらいやらせて欲しいんだ」
玲央様は優しく微笑みながら、私の頭を撫でてくれた。
その手は暖かくて優しくて、また泣きそうになってしまった。
「みなさん本当にありがとうございます……私幸せです……」
「まだ泣くのは早いんじゃない?まだやることは沢山あるでしょ?」
「ふふっ、そうですね……それともう一つお願いが……」
「ん?なぁに?」
「その……お兄様にもこの事を伝えたいのですけど……一人じゃ勇気が出なくて」
「付いてきて欲しいって事かな?」
「はい……」
そう、お兄様にも沢山お世話になったのだから伝えなければならない。
そして、沢山のお礼を言いたい。
そう思って、私は勇気を出して伝えたのだが、やはり怖くて俯いてしまう。
すると、皆がそっと私の手を握ってくれた。
顔を上げると、皆は私に向かって笑いかけてくれた。
大丈夫だよと言わんばかりに。
その優しさに私は勇気づけられ、笑顔で皆に伝えた。
その瞬間チャイムが鳴り響いた。
もうそろそろ午後の授業が始まってしまう時間だ。
私達は急いで教室へと戻った。
午後の授業を受け終わり、放課後となった。
私は、皆と一緒にお兄様の元へと向かっていた。
お兄様にはあらかじめ、お話があるとメッセージを送っていたけれど
、いざとなると緊張してしまうもので、足取りは重かった。
けれど、ここで逃げてはいけないと自分に言い聞かせながら歩みを進めた。
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