彼女と喧嘩したら乙女ゲーの悪役令嬢に転生しちゃいました!?

桜乃

文字の大きさ
上 下
9 / 56

図書室の本と魔法と

しおりを挟む
「お父様、お母様、お兄様、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「百ちゃんおはよう、昨日はよく眠れた?」
「えっ、はい…いきなりどうしたのですか?」
「なんだか、昨日の百ちゃん元気がなさそうに見えたから…でも私の勘違いだったみたいね」
「お母様……」
心配してくれたお母様の言葉に胸がじんわりと暖かくなる。
お父様の方を見れば、お母さまの言葉に賛同するかのように首を縦に振っていて
あぁ、この二人にも随分と迷惑と心配をかけてしまったんだなと言う申し訳なさと同時にこんなに心配してもらえるなんて嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「いいえ、確かに昨日はちょっと考え事をしていたので…でも!お兄様にお話しして解決したので大丈夫です!」
「ふふ、百ちゃんたら、本当に由紀くんの事が大好きねぇ~」
「はいっ!大好きです!…はっ!」
しまった、つい勢い余ってお兄様が大好きだなんて言ってしまった。
お父様とお母様を見ればニコニコしながらこっちを見てるし……当の本人のお兄様は
今までに見たことがないような笑顔を浮かべてこっちを見つめていた
「ほら!朝食冷めちゃいますから早くいただきましょう!」
「うふふ…はいはい」
そんな感じで穏やかな朝の時間は過ぎていった…
っと、そうだお兄様に話すことがあるんだった、朝食が終わったら声を掛けてみよう。

******

「お兄様、ちょっといいですか?」
「ん?どうしたの?」
朝食が終わり部屋に帰るお兄様に声を掛けた、なんだか昨日と立場が逆転してるな、なんて思いながら
話をつづけた。
「えっと、ちょっと相談したいことがありまして…私の部屋に来ていただけますか…?」
「うん、大丈夫だよ、いつ行けばいいかな?」
「では、夜でも大丈夫ですか?」
「分かった、夜に百の部屋に行けばいいんだね」
「よろしくお願いします、では」
「うん、また後でね」
これでよし、夜になったらお兄様に相談できるし…
ちょっと自分でも調べてみようかな、そういう事が分かりそうなのは…やっぱり図書室とか?
夜までは時間があるし、行ってみよう。

******
「ここが図書室……」
目の前には重厚な扉があっていかにもそれらしい雰囲気が漂っている。
よし、と意気込んで中に入ってみればそこは本棚が沢山あって本が沢山並んでいて まるで本の国に来たかのような錯覚に陥る。
さてと、まずは何を調べようか……
やっぱり歴史?それとも魔法?
「う~ん…これだけ本あると何から読めばいいか分からないな……」
何を読もうか迷った私は、とりあえず目に入った本を手に取りパラパラとページをめくる。
その本はどうやら魔法を扱った本らしく、私はその本を食い入るように読み始めた。
「ゲームをちゃんとやってた訳じゃないから詳しくなかったけど…魔法にもいろいろ種類があるんだ…」
その本は魔法の使い方や種類について詳しく書いてある本だった、文章の感じから魔法入門書みたいな本だろう。
なるほど、魔法ってこういう風に使えばいいんだ……
そこでふと、一つの疑問が浮かぶ。
「私ってどんな魔法が使えるんだろ?」
確かヒロインは、治癒魔法とか水魔法とか使えたはずだけど…悪役令嬢の私は?
自分の事なのに何も分からないこの状況がすごく気持ち悪い…
もし、人を傷つけたり悲しませるような魔法だったら…?ヒロインみたいな魔法は使えなくても
人の役に立てるような魔法が使えたらいいな……
「あっ、これなんてどうかな……」
そう言って手に取ったのは『植物図鑑』と書かれた本。
そこには、薬草やポーションの材料になる植物まで網羅されていた。
何故か私はその本の内容に惹かれ、その本を夢中で読み進めた。
あれからどのくらい時間が経っただろうか、窓から外を見ればもう夕暮れ時になっていて 随分長いことここに居たんだなって思った。
でもおかげでいろんなことが知れた気がする。
例えば、この世界にある植物は私が元の世界にあったものと同じ名前のものもあるということ。
それにしても、私に植物の知識があったのは意外だった。
そういえば、あかりが花が好きでよく植物園にデートに出かけていたしその影響とか?
あと植物図鑑の他に気になった本と言えば……治癒魔法が載っているこの本…
この魔法を覚えられれば私もこの魔法を使えたりとか…
「しないだろうなぁ…でも、何か役に立つかもだし覚えておいて無駄はないかも」
「百?」
「ひゃぁっ!?」
突然後ろから声をかけられて変な声が出てしまった。
「あはは、ごめん、驚かせちゃったね」
「お、お兄様!びっくりしました……どうしてこんなところに?」
「それは僕のセリフでもあるんだけど……僕はちょっと調べものをしにね、百こそなんでこんなところにいるの?」
「えっと、実は私も調べ物をしていて……それで今ちょうど終わったんです」
「へぇ、そうなんだ、ちなみになんて調べていたの?」
「えっと……」
「魔法…か」
お兄様は私の手の中にある本を見て納得したように呟いた。
「僕が言うのはお門違いかもしれないけれど、あまり無理はしない方がいいよ」
「……?どういう意味ですか……?」
「そのままの意味だよ、そうだ俺に用があったんだよね?今じゃダメかな?」
「いいえ!あの…おかしな事を言ってると思ったら笑ってくださいね?」
そう忠告してから私は夢の事、そして私の魔法の事を話し始めた…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

処理中です...