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噂のあの子
しおりを挟むレッドドラゴンを倒した私達は宿に到着した。
宿に到着してから、先輩を降ろした。
紅茶を淹れ、少し休憩することにした。
「先輩は王城の方に帰りますか?」
「僕は魔物研究者に戻るつもりはないから、後輩君とエーカ君と一緒に住むつもりだが?」
先輩は当然なような表情を浮べていた。
「せ、先輩。それは色々と問題が起きる可能性が」
「後輩君。君は危機的な僕を助けたのだ。なら、最後まで責任取るのは必然のことだ」
先輩は右手の人差し指の頬に置いた。
「それに、後輩君なら何も問題起きないのだろ?」
「そ、それは確かにそうですが」
私はエーカの方を向いた。
「エ、エーカは大丈夫か?」
「ん。ライバルだから、勝負は平等に」
「ライバル?勝負?どういうこと?」
「主には後で分かることだから。大丈夫」
「そうだぞ、後輩君。それに、乙女の秘密を探るのは駄目だぞ」
「た、確かにそうですね」
こ、これは諦めるしか無いのか。
「分かりました、先輩。明日、新しい宿を、いや、家を借りましょう。宿よりも借り家の方が何かと都合がいいでしょう」
「それはいい考えだ。流石、後輩君だ。今日はここで休むことにしよう」
先輩の服はエーカが貸した。
先輩とエーカの体格が同じくらいだったので、特に問題は無かった。
夕食を食べ、風呂に入り、夜まで過ごした。
先輩はエーカと一緒のベッドで寝てもらった。
流石に、一緒のベッドは不味いからな。
朝になったら、朝食を食べてから、私は街に出た。
直ぐに不動産屋に向かい、良さそうな借り家を探した。
少し高めだったが、風呂もついていて、庭もついている物件を見つけた。
ここに決めた。
契約金を払い、鍵を受け取ってから、宿に帰った。
そして、宿に鍵を返し、エーカと先輩と一緒に借りた家に向かった。
その家に荷物を置いてから、先輩に必要な物や生活に必要な物を購入するために街に出た。
買い出しの途中で1つのことが気になった。
「そう言えば、先輩は実家に報告は入れなくてもいいのですか?」
「入れなくても大丈夫の筈。サーワリ侯爵家から荷物が無くなって清々していることだろうし」
「そうですか」
「後輩君。そんな悲しそうな表情を浮かべないでくれ。僕は王立学園で君に出会えてから、良かったと思っているよ。毎日が楽しくなったから」
先輩は微笑んだ。
私はその微笑みに少し見惚れてしまった。
少しの間だけ、先輩の顔をまともに見れなかった。
全ての買い出しが終わったら、家に帰った。
荷物に片付けたら、夕食作りを始めた。
驚いたことに先輩は料理が出来るのだ。
「僕だって、研究ばかりではないだよ。料理ぐらい出来る」
エーカはそんな先輩に負けたという表情を浮べていた。
エーカは魔物だから、出来なくて普通だから気にする必要が無いのに、負けたなんて表情を浮べているんだ?
その後は私と先輩から協力して作った夕食を食べ、順番に風呂に入り、時間になったら自室に戻り眠りについた。
この日から私達の新たな生活が始まった。
私は魔物の倒し、その素材を売却し、エーカは歌姫として歌い、金を稼いでいる。
先輩は家で研究をしている。
研究に必要な魔物の素材は私が集め、研究に必要な本はエーカが購入することになっている。
家事は交代制だ。
私、いや、私達は楽しい日常を過ごしている。
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