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寝る前のティータイム

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「ムル、ただいま……って、また眠ってしまったのね」
『う~~ん……むにゃ、ムルまだ食べられるよぉ……』
「あら、ムルったら夢の中でも何かを食べているのかしら?」
そう言って私は、クスリと笑いながら眠っているムルの頭を優しく撫でた。
ムルは撫でられるのが嬉しいのか、えへへと可愛らしい寝言を零し、ゴロンっと寝返りを打った。
「全く、お腹を出しながら寝ていたら風邪を引きますよ」
ムルの布団を直し、ポンポンと優しくお腹を叩きながら私がそう呟くと
ムルは寝言でむにゃむにゃと何かを呟きながら、モゾモゾと体を動かした。
そんな可愛らしい様子を見て、私は再びくすくすと笑った後 おやすみなさい。と小さく呟き、頭を優しく撫でた。
*******
寝間着に着替え、ベッドに倒れ込むように横になり目を瞑る。
今日も色々あったけれど、ムルのおかげでとても楽しく過ごす事ができた。
けれど、そんな楽しい事ばかりじゃない事だってある。
マリーの事、アイクの事……そして、この国の事。
考えるだけで、頭が痛くなるような事が沢山あり、その事を私は何も知らないで過ごしていた。
「……こう言うのを、平和ボケって言うのよね」
私はそう呟いて、もう一度目を瞑り眠りにつこうとするが中々寝付くことが出来なかった。
私が動かなければ、この国はずっとあのままになっていたのだろうか、それとも
私以外の誰かが動いてくれた……?いいや、そんな事この国じゃありえない。
それに、誰かがやってくれるから、なんて思考は私にはない。
もし、そんな思考を持っていれば私はきっと私ではなくなる。
「こんな事考えていたらいつまでたっても眠れないわ……」
私はベッドから体を起こし、自室からキッチンへと向かった。
このままでは、どうやっても寝れる気がしないので
ハーブティーでも淹れようと思ったからだ。
静かな廊下は少し肌寒い、けれどこのくらいが丁度いい。
*******
キッチンへ着き、ケトルに水を入れ火にかける。
お湯が沸くのを待つ間、ティーポットと茶葉を用意する。
「カモミールは……あ、あったわ、ティーポットはこれで……」
そんな事をしていると、ケトルからお湯が沸いた事を知らせるようにピーッと甲高い音が鳴り響く。
慌てて、火を消しティーポットとカップをお湯で温める。
温め終わったティーポットに、茶葉とお湯を入れトレイに乗せ、そのまま部屋まで持っていった。
部屋に帰り、ムルを起こさない様にトレイをベッドの横のサイドテーブルに置き、ベッドの上にゆっくりと腰を下ろす。
私は、ふぅ……と小さくため息を吐き ティーポットを手に取り、カップにハーブティーを注ぐ。
ふわりと香るカモミールの香りに、ほっと心が落ち着くのを感じた。
そのまま、カップに口をつけコクっと口に含む。
カモミールの優しい香りが鼻を抜け、温かいハーブティーが喉を通ると
体の中からじんわりと暖まり、固まっていた体が自然とほぐれていく。
私はもう一度、ハーブティーを口に含みふぅ……と息を吐いた。
「そろそろ、私も寝ないとね」
ハーブティーを飲み終わり、カップをトレイの上に戻す。
私はそのままベッドに入り、おやすみなさいと呟き目を瞑るのだった。
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