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城へ向かう日

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目を覚まし、ベッドから起き上がりカーテンと窓を開ける。
すると、朝の新鮮な空気が部屋の中へと流れ込んできた。
その空気を胸一杯に吸い込むと、まだ眠かった頭が冴えて来て私は大きく伸びをした。
お父様があの人と会って、何を話すのかは私には分からないけれど
それでも、何かきっかけになるのなら良いのだろう。
「でも……あの人がお父様に何かしようとするなら……」
私はあの人を許すことが出来ない。
もし、お父様に何かしようものなら私はあの人の事を許すことは出来ないかもしれない。
そんなことを考えていると、いつの間にか時間が過ぎていて私は慌てて支度をし始めたのだった。
*******
「すみません、遅くなりました」
食堂に向かうと、私以外の家族は全員揃っていた。
家族に謝りながら席に着くと、皆優しそうな笑みを浮かべながら私の方を見て口を開いた。
お兄様はいつものように爽やかな笑顔を浮かべているし、お母様もいつも通り優しい笑みを浮かべている。
お父様だっていつもと変わらず穏やかに微笑んでいる……でも、少しだけ疲れているような気もした。
「昨日はよく眠れたかい?」
「はい、疲れていたみたいであの後すぐ寝てました」
私がそう答えると、お父様は安心したように息を吐いた。
そんな会話をしていると、朝食が運ばれて来た。
今日の朝食は焼き立てのパンに野菜たっぷりのスープとオムレツだ。
それらを口に入れると、優しい味が口の中に広がって幸せな気分になる。
今日は、ルークと城へ行きあの人に会いに行く。
昨日は少し荒れていたけれど、今日は少し落ち着いて話が出来るかもしれない
とルークに言われ、私はそうですねと返事を返し会いに行く事になった。
けれど、気になる事が一つだけある。
城と言う事は、あの人達もいるかもしれないと言う事だ……
あの人達……マリー、カイト、そして……アルマ様。
会う事は無いと思うけれど、もしかしたら……という考えが頭を過る。
そんな考えを頭の隅に追いやり、私は朝食を食べ進めたのだった。
そして朝食を食べ終え、自室へ戻ると出掛ける為の身支度身支度を始める。
身支度を整えていると、部屋の扉がノックされお兄様が顔を覗かせた。
「ルカ、お迎えが来たみたいだよ」
「分かりました、すぐ向かいます」
お兄様にそう返事を返し、私は急いで玄関へと向かった。
そして、玄関の扉を開けるとそこにはルークの姿があった。
彼は私を見ると、小さく微笑み口を開いた。
彼の表情からは疲れが滲み出ているように見えた。
きっと昨日の出来事で心労が溜まっているのだろう……そう思うと胸が痛くなった。
「お待たせしました、行きましょうか」
私はそう言ってルークに笑いかける。
すると彼も、優しい微笑みを浮かべてくれたので少しホッとした。
それから二人で馬車に乗り込むと、城へと向かったのだった。
「ルーク、本当に大丈夫ですか?」
「ん?何が?」
「顔……疲れてますよ」
私がそう言うと、ルークは困ったように笑いながら口を開いた。
「やっぱりルカには分かっちゃうんだね……でも、大丈夫だよ。少し疲れただけだから」
「無理はダメですからね……?」
「それはお互い様だよ、ルカ」
そう言ってルークは微笑むと私の頭を優しく撫でてくれた。
そんなルークに私は、そうね。と笑って返事を返す。
それから暫く馬車に揺られ、城に到着した私達は門番に軽く挨拶をして城内へと入った。
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